【ガイダンス】世界史のまとめかた 〈3〉地域の区切りかた
わたしたちは「世界史」をどのようにまとめることができるのでしょうか。「時間」,「環境」,「地域」の3つの観点から考えていきましょう。
〈3〉地域の区切りかた
さて,人類の活動場所は具体的には陸と海にあります。
これらを地域ごとに切り分ける方法(地域区分)も時期区分と同じく様々ですが,「世界史のまとめ」では漏れなくダブりなく全世界を区分するために,21世紀現在の各国家の国境線にのっとっています。
現在の国家の国境線を下地(したじ)にし,その上で世界史の展開を動かしていくことで,逆に現在の世界とのズレも明らかになるでしょう。
特に,海を舞台にして,無意識のうちにわれわれが当たり前だと思いこんでいる「国境」を縦横無尽に越え出る動きが存在することにも気付かされるかもしれません。
◆陸
陸は,大陸と島に分かれます。
大陸には南北アメリカ大陸,オーストラリア大陸,ユーラシア大陸,アフリカ大陸,南極大陸があります。
北極は氷が浮かんでいるだけなので、陸地はありません。
ユーラシア、アフリカ、北アメリカ、南アメリカの4つの大陸と、オーストラリアを含む海の地域(オセアニア)の5つの名称を覚えておけば、とりあえずなんとかなります。
地球が寒かった時代には、ユーラシア大陸と北アメリカの間には氷河があって、つながっていました。オセアニアとの間も、海面が低かったために陸続きでした。
雨が降るところと降らないところがある
陸地には,大きく分けると乾燥気候エリア(雨が降らない(少ない)ところ)と湿潤気候エリア(雨が降る(多い)ところ)があります。
乾燥エリアでは草原地帯で家畜を連れた遊動生活(遊牧や狩猟・採集)を営んだり,灌漑やオアシスを利用して定住生活を行う集団もあります。
寒いところと暑いところがある
高緯度地域には寒冷エリア(寒いところ)が分布し,赤道周辺には熱帯エリア(暑いところ)が分布します。
寒冷エリアは,氷雪地帯・ツンドラ地帯・森林地帯に分かれ,それぞれにおいて狩猟・採集・漁撈(暖かい地域・時期には農耕・牧畜も)などによる定住または遊動生活が主流です。
ユーラシア大陸東南部一帯は熱帯エリアとも重なる上に,季節風(モンスーン)の影響を受け,多くの降雨がもたらされるエリアです。
場所によっては雨季・乾季のあるサバナ地帯も分布していて,気候に合わせた農耕・牧畜・狩猟・採集が営まれています。
⇒マガジン「同時に学ぶ《世界史》と《地理》」も参照してくださいね。
また,動物や植物,細菌の分布も,地域により異なります。
例えば,ユーラシア大陸やアフリカ大陸では家畜の候補となる「群れをつくる草食の大型動物」が豊富に分布していましたが,南北アメリカ大陸には分布していませんでした(氷期に馬が分布していたのですが絶滅してしまっていたのです)。
また,栽培が可能な植物は,ユーラシア大陸・アフリカ大陸に麦類,南北アメリカ大陸にトウモロコシやジャガイモが分布していましたが,オーストラリアでは候補がわずかでした。
このように人類は,各地の地形や周辺環境に応じて異なる生態を送り,互いに足りないものを交易により補って相互に関係し合うことになります。
◆海
人類は早くから船を発明し,多くの陸上動物の成しえなかった海上移動を可能にしました。
その海は,海流や陸地や島々の分布によって,いくつかの海域に分けることができます。
人類の移動がもっとも活発となるのはユーラシア南岸の諸海域で,インド洋から太平洋にかけていくつもの海域が“数珠つなぎ”になっていることがわかります。
漁撈・採集によって海で生活をするのに長けた海民も,世界各地に分布しています。彼らは農耕・牧畜を合わせておこなったり,沿岸の農耕・牧畜民と物やサービスの交換(交易)を通じて関係を結ぶこともしばしば見られます。
◆陸と海
異なる生態の人間集団どうしが活発化すると,両者の間にはしばしば「競合」関係や「共生」関係が生まれます。
例えば,下の5つのエリアの相互関係について,考えてみましょう。
① 高緯度→寒すぎ=寒冷エリア(寒帯または冷帯)→狩猟が中心
② 中緯度→雨が降らない=乾燥草原エリア(乾燥帯)→遊牧が中心
③ 中緯度→雨が降らない=乾燥沙漠エリア(乾燥帯)→遊牧が中心
④ 中緯度→雨が降る=湿潤エリア(熱帯,温帯または冷帯)→いろいろ
⑤ 海洋エリア →漁業などいろいろ
例えば,高緯度の【①寒冷エリア】の狩猟採集民は,毛皮や海産物を内陸の【②乾燥草原エリア】の遊牧民の畜産物と交換します。
【②乾燥草原エリア】の遊牧民は畜産物を,【③乾燥沙漠エリア】に住む定住民との間に交換します。定住民は家畜の管理を遊牧民に委託(いたく)したり,農産物の輸出のために遊牧民の軍事力を利用したりすることもあります。
一方,【②・③乾燥エリア】の中でも大河などの水場を擁するエリアでは,大規模な都市が発達。この都市も,内陸の【③乾燥砂漠エリア】のオアシス集落に市場を求めてしばしば進出し,【②乾燥草原エリア】の遊牧民との間に利害関係をめぐっての対立が起きます。
【③乾燥砂漠エリア】に隣接する【④湿潤エリア】は,水場が豊富な場所によっては生産性が高く経済力に優れ,沿岸の港市では,【⑤海洋エリア】の海民との間で交易活動も行われます。
◆異なる「高度」間の交易
最後に,高山エリアにおける特色あるやり取りについても触れておきます。
南アメリカのアンデス山脈の太平洋岸は,平地が少なく,後背には高山がそびえ立っている地域です。
ここでは,低地の海岸と,より高度の高い山岳地帯との間で交易が行われ,谷あいの集落が発達していきます。高度によって生産する家畜・植物にバリエーションがあり,いわば異なる高度間の交易がおこなわれていたのです。
「〈3〉地域のまとめかた」は以上です。
「世界史のまとめ」では、各時代において,アメリカ→オセアニア→アジア・中央ユーラシア→アフリカ→ヨーロッパの順に解説しています。
アメリカからヨーロッパに至るまで,「W」の字を描くように,想像上の飛行機で世界を一周するイメージを持ってください。
このたびはお読みくださり、どうもありがとうございます😊