中部地方の石造物㊼:篠ノ井層塔


名称:篠ノ井層塔

伝承など:前部秋足造立の記念塔?

所在地:長野県長野市篠ノ井方田


長野市のJR・しなの鉄道篠ノ井駅西方にある二ツ柳神社参道近くの農地の中に、覆屋に納められた古様の層塔がある。

この石塔は伝承によれば、平安時代初期の延暦十八年に、高麗の王族で日本に帰化した前部秋足が朝廷から篠井姓を賜ってこの地に封じられたのを記念して造立されたと言う。

銘文等があるわけではないため、あくまでも伝承の域を出ないが、層塔は確かに朝鮮半島の様式を思わせる姿で、やはり渡来人によって奈良時代に造立されたと言う滋賀県東近江市の石塔寺の三重の層塔(「滋賀県内の石造物㉔」参照)に通じるものがあり、日本の平安期の層塔とは趣を異にする。

現在この層塔は、基礎と初層の塔身、および相輪が欠損しており、基礎のように見える最下部のパーツは、おそらく初層部分であろう(相輪の代わりに五輪塔の空風輪が載せられている)。

当初は石塔寺のように三重であったとも考えられるし、あるいは他にも欠損したパーツがあって元来は五重であったのかも知れない。

伝承のような延暦年間の造立ではないにせよ、平安時代は下らない時期の造立であろう。

他の例との比較が難しいため何とも言えないが、仮に篠井氏と関わりのある石塔であるならば、あるいは伝承とそこまで隔たっていない平安時代前期~中期の作の可能性もある。

いづれにせよ、長野県内の層塔としては最古の例であり、東日本でも数少ない平安時代の層塔として大変貴重と言える。


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