南関東の石造物⑧:自性院宝篋印塔

名称:自性院宝篋印塔

伝承など:なし

所在地:東京都江東区亀戸 自性院


亀戸駅から徒歩十分ほどの所にある自性院の境内墓地内の世代墓地の前に建つ宝篋印塔は、東日本では他に見られない珍しい形をした石塔である。

基礎に永享七年銘があり、東京二十三区内では中世の在銘塔が少ないため、考古資料としては貴重と言える。

基礎が低くて塔身長く、また相輪が異様なほどに大型であることから、一見バランスが悪いようにも思えるが、間違いなく完形の宝篋印塔であり、前述のように同形の宝篋印塔は東日本では他に例がない。

また、石質も緑泥片岩であり、宝篋印塔に使用するには珍しい材質である。

自性院を訪れた後でたまたま知ったのであるが、佐賀県を中心とした地域にこれと形式が酷似し(二枚目で挙げた基礎の銘文の字体まで似ている)、同じように緑泥片岩で造られた宝篋印塔が多く存在しており、しかも管見の限り全てが自性院塔の銘文と同時期の室町時代中期の銘文を持っている。

これは私の憶測であるが、東日本では自性院宝篋印塔が孤立的事例であることから、この宝篋印塔は九州で作成され、何らかの形で関東に持ち込まれたのではないだろうか。

例えば、鎌倉時代に忍性が五輪塔の形式を関東に持ち込んだように、僧侶とともも渡ってきたのかも知れない(このあたり、専門的な研究ではすでに明らかにされているかも知れないが、私は素人なのでそこまでは見つけきれなかった)。


#東京 #江東区 #亀戸 #自性院 #宝篋印塔 #室町時代 #佐賀県 #石塔 #歴史 #日本史

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?