時代劇レヴュー㊽:影武者徳川家康(2014年)

タイトル:影武者徳川家康

放送時期:2014年1月2日

放送局など:テレビ東京

主演(役名):西田敏行(世良田二郎三郎/徳川家康)

原作:隆慶一郎

脚本:田村恵


テレビ東京が毎年1月2日に放送していた「新春ワイド時代劇」(前身は「12時間超ワイドドラマ」)の第三十作で、テレビ東京開局50周年特別企画番組も兼ねている。

シリーズ末期の作品であるため、時間も五時間に短縮され、従来に比べれば低予算だったのか合戦シーンも序盤の関ヶ原の戦いで少しだけしかないが、全体的には結構しっかり作っている印象で、内容的にも面白かった。

原作は隆慶一郎の同名小説で、家康が関ヶ原の戦いのさなかに戦死し、以降は影武者である世良田二郎三郎が家康として生きることになり、豊臣家との共存を目指す二郎三郎と、彼の存在を疎ましく思う徳川秀忠との暗闘が全体を通しての見どころとなっている。

前半に比して後半は、やや駆け足気味で雑な印象もあったが(副主人公的な役回りで登場した島左近なども、雑に殺してしまった感があった)、五時間と言う放送時間を考えればやむを得ないであろうか。

原作のエピソードをだいぶ端折った部分もあり(私は原作は未読であるが、1998年にテレビ朝日で放送された高橋英樹主演の連続ドラマ版には、本作で扱われなかった大久保長安や松平忠輝のエピソードも登場していたため、だいぶ原作を省略したと思しい。なお、テレビ朝日版で二郎三郎を演じた高橋は、本作では島左近を演じている)、面白かっただけに放送時間の縮小が惜しまれる所である。

前述のように、物語の筋立ては荒唐無稽で無理がある部分もあるのだが、そうとわかっていても、本作を見ていると「あるいはそうかも」と思わせてくれるような面白さがあったように思われ、冒頭からそこまでの違和感なくうまく「騙されて」、物語にすっと移入出来た。

トイレにまで従者が着いてきて、影武者の家康が鬱陶しがるシーンがあったが、このあたりの描写も物語にリアリティを持たせる装置のようで面白かった。

後、本作では登場人物を官職名で呼ばせており、このあたりは2000以降のドラマでは珍しい(これまた民放のドラマでは珍しく時代考証がついているせいであろうか)。

一方で、島清興が「島勝猛」で真田信繁が「真田幸村」のように、旧来の一般に知名度のある名称を採用している所もある(笑)。

キャストは手堅い役者を揃えている印象があって、それぞれの演技は流石で安心して見ていられる感じであった。

特に、悪の総本山である秀忠役の山本耕史は、やはり何をやらせても器用に演じており、後半になるに従って悪辣振りが際立ってくる秀忠を見事に演じていた。

ただ、井伊直政役の勝野洋や榊原康政役の寺田農などは、さしたる見せ場もなく前半で消えてしまい、その点はいささか残念と言うか、キャストの無駄遣いの感もあった(笑)。

繰り返しになるが、内容自体は本作を含む数年の同シリーズ中では図抜けて面白く、シリーズ最後の輝きと言うべき作品である。


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