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#ブルックリン物語
ぴの耳より情報 (3/30) 祝1周年! フリーで読めるコーナー【千里の道もみんなから】を作りました!
こんにちは、ぴーすです。ダックスフント、10歳女子です。
ダディこと大江千里と一緒に渡米して10年目に突入しました。
4月はアメリカツアーが開幕。長いようであっという間の10年でした。
ニューヨークの音楽大学・ニュースクールで留学生活を共に過ごした日々ーーは『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』に書かれてあるので、ぜひ読んでみてくださいね。
【senri garden
ブルックリン物語 #01 良き人生 "The Good Life"
ブルックリンに引っ越してから早いもので5年目に入る。
それまではニュースクール (The New School for Jazz & Contemporary Music in NYC) で同期のドラマー、テップと12丁目のアパートをシェアしていた。
テップが一人暮らしを始めたいと言うのと、僕も自分自身の時間をもっと欲するようになったことで、それじゃあそれぞれの部屋を借りようということになり、
ブルックリン物語 #07 りんごの木の下で ”In The Shade Of The Old Apple Tree”
「え。さっきポケットに縦にちゃんと入れてあったはずなのに」
気づいたときにさっきまでそこにあった確かな重量はすでになく、着慣れたジャケットはジグザグに走るぼくの体の周りを優雅に心もとなくただ揺れていた。
友達が家に来るので何か作ろうと近所のスーパーに買い物に来たのは数時間前のこと。ぼくは普段から財布を右のポケットに縦方向に入れる癖があり、野菜やら肉やらを探すときに右手が当たりその都度財布は浅い
ブルックリン物語 #11 言いだしかねて”Can't Get Started With You”
僕の暮らすアパートは築100年の物件で古い煉瓦造りである。
煙突があるけれど、暖炉はない。それがあったであろうと思われる場所は潰されて、そこには僕が毎日クッキングするキッチンがある。
ウッドデッキに出て我が家を見ると、外見だけ風格のある煙突がにょきっと屋根から突き出て残っているさまは、どこか寂しげに映るけれど嫌いじゃない。
ある日、管理人でありハンデイマン(技術屋)の一人、ホセがデッキの上に
ブルックリン物語 #24 I’m Gonna Sit Right Down and Write Myself a Letter 「手紙でも書こう」
ハワイのフアンドレイジングコンサートの前の晩、八神純子さんと二人でカラカウア通りでご飯したときのこと。
「大村雅朗さんのお墓にご挨拶に行ったのよ」
八神さんが不意におっしゃった。
「本当ですか? 僕も前から行きたいと思っていたのだけれどついつい行きそびれてしまって」
「今度Senri さんにお寺の住所をメールで入れておくわね」
「ありがとうございます。助かります」
大村さんと八神さんは
ブルックリン物語 #33 So What?
「金、金、金、そんな女が失脚したんだぜ? こりゃ大笑いだぜ。アメリカもまだ捨てたもんじゃないってことさ。この国にはまだ ”正義” って奴があるんだよ」
大統領選挙の速報が流れた日、JFK国際空港から乗ったタクシーのドライバーがそう言った。
あれ? 君はアフロアメリカン(黒人)だよね? 思わずそう言いそうになって言葉を飲み込んで、「ははは」と笑った。新しい大統領を支持する人は、この国のメインであ
ブルックリン物語 #35 As Time Goes By「時のすぎゆくままに」
随分時間が流れたような気がする。でもそんなに実際は経ってないような気もする。
クリスマスツリーも年越しそばもお屠蘇もお雑煮も何もない年末年始を無我夢中で乗り越えたような記憶があるが、それさえもぼんやりしている。
毎日歩き走り雪が降り積り相変わらず家の周りの騒音は酷くなるばかりだ。月と星がくっついた日もあったし、離れてしまった空を呆然と見つめたのもつい最近のこと。
気がつくと僕は日本に向かう飛