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39/1,000冊目 玉樹 真一郎『「ついやってしまう」体験のつくりかた』

玉樹 真一郎『「ついやってしまう」体験のつくりかた』


感想

この本を読んで以降、ゲームのみならず、漫画も映画も小説も、この本が紹介してくれている「人をのめり込ませる技術」を駆使して作られていることがわかるようになります。

それだけでも面白いのですが、こんな面白い武器、知れば知るほど、使いたくなるものです。

わたしはまだあまり使えていないのですが、身につけていくのが楽しみでいます。教養や知識、というよりは明らかな「武器」となる技術の簡易版マニュアルなんじゃないかと思っています。


玉樹 真一郎『「ついやってしまう」体験のつくりかた』

ついやりたくなる、つい夢中になる、つい誰かに言いたくなる。人間にこのような反応を起こすために使われるデザインとは何かを解き明かしてくれています。

直感のデザイン

ついやりたくなるように使うデザインが「直感のデザイン」。つい押したくなる。つい右に行きたくなる。この行動や動機の背景には人間の「つい仮説を立てちゃう」→「立てた仮説は試してみたくなる」という行動傾向がある。

驚きのデザイン

しかしこれだけでは飽きと疲れが生じて、ひとはそのコンテンツから離れてしまう。それをさけるために使うのが「驚きのデザイン」。驚きのデザインに使われるのは、予測させて裏切るというプロットの他に、日常ではタブーなモチーフがあります。

これは映画に、悲しみ、憎しみ、殺人、金、エゴなどが多用される理由でもあります。

物語のデザイン

物語というのは構造はすでに研究対象になっています。その研究成果を著者はこの本で、簡単に説明してくれています。

物語のデザインとは、コンテンツを体験することで、始めるまえと終えたあとでユーザーの感情体験が物語となるようにするもの。

たとえば、最初はイライラするキャラクターが登場し、やがてそのキャラクターが危機を迎え、それを経て、気がつくと嫌いだったキャラクターに愛着を持っている……そして自分の感情が最初と最後と変化していることを実感する。これが物語のデザインの一例です。

そんなわけで、物語の多くには、「イライラする同伴者」が登場してきます。そういった目線で映画や小説、漫画、ゲームに接してみるとこの「イライラする同伴者」に気づきます。

それに気づいた途端、メタな視界が発生し、物語にはメタ的に構造を読み解こうとして接するようになります。

これがこの本の一時的な効用だと思います。

二次的な効用は、物語を想像したくなる技術を身に着けたくなる動機です。


玉樹 真一郎

画像出典:KANEIRI

わかる事務所代表、元任天堂「Wii」ディレクター/プランナー。
1977年八戸市生まれ。東京工業大学・北陸先端科学技術大学院大学卒。プログラマーとして任天堂に就職後、プランナーに転身。全世界で1億台を売り上げた「Wii®︎」の企画担当として、最も初期のコンセプトワークから、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークサービスの企画・開発すべてに横断的に関わり「Wiiのエバンジェリスト(伝道師)」「Wiiのプレゼンを最も数多くした男」と呼ばれる。2010年任天堂を退社。青森県八戸市にUターンして独立・起業、「わかる事務所」を設立。

感想

元任天堂の著者が「つい」やってしまうゲームの仕組みをものすごくわかりやすく解説している本。読んで面白いがちゃんと応用したくて再読。

要点をまとめてみたので、これからそれを使って物語をいくつか構成してみようと思っています。ゲームを作れたらいいのですが。

読みやすいのに背景にある知識や論文ベースの著書も含んでおり、深い。


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