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のっぴきならない落とし穴へ…★劇評★【舞台=奇行遊戯(2018)】

 骨太の野心作を連発している劇団「TRASHMASTERS(トラッシュマスターズ)」の主宰、中津留章仁が2010年に発表し、翌年に決定する第55回岸田國士戯曲賞の最終候補に選出された「Convention hazard ~奇行遊戯~」をもとにした舞台「奇行遊戯」が上演された。日中関係や環境問題、動物愛護問題という流動的で変化が激しく対立点も多い問題が物語の核で扱われていて、書き直しも当然あっただろうし、役者も入れ替わりがあるために、再演というよりも、現代という時代に向き合った新作といった趣がある作品だ。地方都市に戻ってバーを開いた男性のもとに、旧友たちが集まって来るどこかほのぼのとしたシチュエーションで始まる物語は、やがてちらちらと見え隠れしていた不穏な要素にあおられ、のっぴきならない落とし穴へと追い込まれていく。激烈に交わされる人と人との感情のぶつかり合いと、果てしなく展開していく事態の疾走感。TRASHMASTERS、そして中津留の剛腕がうなる一作である。
舞台「奇行遊戯」は6月20~24日に東京・上野の上野ストアハウスで上演された。公演はすべて終了しています。

★舞台「奇行遊戯」公演情報
http://www.lcp.jp/trash/next.html

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