AdobeStock_168744013_Preview光と闇

光と影が絡み合いながら、互いを昇華させていく美しさに満ちた作品…★劇評★【ミュージカル=エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)(2019)】

 かつてミュージカル「エリザベート」の劇評の中で、「陰影がとても豊か」と書いた。死や裏切り、逃避、愛の渇き、焦燥、はかなさなどマイナスイメージの強い要素で構成された作品であることを理由に挙げ、その要素が織りなす悲しみの陰影が「美しくにび色に輝く」という意味合いを込めた。確かにそれはこのミュージカルのひとつの部分を言い当てているだろう。しかしそれから3年経ってあらためて再演されているミュージカル「エリザベート」を見て、私は、闇の中の光がなんとも美しく輝いていることに気付いてしまった。それは陰と陽の作用のひとつで正反対の性質を持った色合いは互いを引き立て合うからでもあろうし、黄泉の国の帝王トートが司る「死」という宿命の中にあるエリザベートの生の輝きでもあるだろう。ハプスブルク家という長きにわたって世界の富の中心であった一族の光と影のダンスの美しさでもあるだろう。物語だけでなく照明や振付も含めて、この闇の中にある光の輝きをシーンごとに散りばめ、大きな輝きの連環としてこの物語を位置付けたことに深い意味合いを見る。闇の輝きから見ても光の輝きから見ても、まったく違う色合いを提示してくれるこの「エリザベート」という作品の多面体の魅力が私たちの胸を強く打つ。特に、花總まりと井上芳雄が織りなす「エリザベート」の世界は、死に魅入られてもなお美しく輝くエリザベートの光と、死さえも支配する全能の力を持っていてもなお苦悩するトートの影が、絡み合いながら互いを昇華させていく美しさに満ちていて、格別なものがあった。演出は小池修一郎。(写真はミュージカル「エリザベート」とは関係ありません)
 ミュージカル「エリザベート」は6月7日~8月26日に東京・丸の内の帝国劇場で上演される。

 舞台写真はこのサイトではなく、阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でのみ掲載しています。ただし掲載する写真に写っているのは花總まりさんと井上芳雄さん、成河さんの3人だけです。舞台写真をご覧になりたい方は下記のリンクでブログに飛んでください。

★「SEVEN HEARTS」の「エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)」劇評ページ

 なお、本作はほとんどの主要な役柄がダブルキャストかトリプルキャストであるため、さまざまな組み合わせが組まれていますが、取材機会の関係で劇評を掲載するのは、「エリザベート(花總まり・井上芳雄・平方元基・三浦涼介・涼風真世・成河出演回)」と「エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)」の2つの組み合わせに限らせていただきます。ご了承ください。
 「エリザベート(愛希れいか・古川雄大・田代万里生・京本大我・香寿たつき・山崎育三郎出演回)」の劇評は既に当ブログに掲載済みです。一部この劇評と重複する部分もありますが、あわせてお楽しみください。

 上記の無料で読めるブログには劇評の序文のみ掲載しています。劇評の続きを含む劇評の全体像は「note」の阪清和専用ページで有料(300円)公開しています。

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★ミュージカル「エリザベート」公式サイト

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