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勝者と敗者、敵と味方などと二元論で捉えられがちな国と国との関係に重要なのは人と人との結びつき…★劇評★【舞台=時を接ぐ(2018)】

 満州映画協会(満映)のことについては、私も共同通信の文化部記者だった時代にいろいろと調べたことがあるのだが、満映の組織や所属していた人が戦後さまざまな展開をしていく中で、特に傑出した存在のひとりである岸富美子さんのことについてはもちろん外形的なことに関しては知っていたが、その心の内面まではなかなか知り得る機会がなかった。ドキュメンタリーや書籍によって、今ではそれらも現代のわれわれ日本人につまびらかにされてはいるのだが、演劇という手法をとることによって、その堪えがたき辛苦と、反発してもおかしくなかったはずの中国共産党への協力に至った背景、映画技術者として惜しみなくその卓越した技術を継承した映画人としてのプライドなどが心の中の深い部分で理解できることとなった。劇団民藝によってステージの上に現れたこの卓越した舞台「時を接ぐ」は、敵と味方、勝者と敗者、白と黒などといった二元論で捉えられがちな国と国との関係が、クリエイティブなフィールドにおいてはまったく無意味なものであり、人と人との結びつきというものが、今の、そして未来の日本と中国の関係において最も重要なものなのであるということを、私たちの胸に何より強く刻み付ける作品となった。演出は劇団民藝の丹野郁弓。
 舞台「時を接ぐ」は9月26日~10月7日に東京・新宿南口の紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演される。

★舞台「時を接ぐ」公演情報
http://www.gekidanmingei.co.jp/performance/2018_tokiwotsugu/

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