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笑いの裏に宿る謎めいた闇。瀬戸康史・千葉雄大の熱演が圧巻の実力派俳優らの演技とスパークし、スケールの大きな作品に…★劇評★【舞台=世界は笑う(2022)】

 ディープ大阪で生まれ育ったこともあって、お笑い芸人や喜劇役者の人が身近にいた。学生時代に伝説的な漫才コンビを「研究」する機会に恵まれ、裏も表もたくさん見てきた。記者としてエンターテインメントを取材するようになって、その度合いはさらに増していった。生まれたばかりのM-1の舞台裏にも居たことがある。緊張感でつぶされそうになっている人、その夜のバフォーマンスを最高にするためなのか何かお経のような文言をつぶやき続けている人、笑いについて考えているはずなのに鬼の形相をしている人…。もちろん本番直前なのにパブリックイメージ通りに楽屋にいる芸人やスタッフを笑わせている人もいるが、笑いに関わっている人たちは総じて、壮絶な心理状態の中にいる。それは「裏」ではなくて、もしかしたら「表」かもしれず、笑いを弾けさせるための自分だけのルーチン、あるいは準備運動なのかもしれない。しかしみんな、みんな、必死なのだ。その得体の知れなさは、令和よりも平成、そして平成よりも昭和とさかのぼるごとに間違いなく、壮絶さが増していく。昭和のお笑いや喜劇に関わっていた人々は、その内側に私たちの想像をはるかに超えた謎めいた闇を持つ。ケラリーノ・サンドロヴィッチの新作舞台「世界は笑う」は、そんな昭和のお笑いを追求し続けた喜劇人たちの光と闇の物語。KERAの舞台などで演技力を飛躍的に伸ばしてきた瀬戸康史や千葉雄大を中心に、ラサール石井、山西惇、山内圭哉、温水洋一、マギー、銀粉蝶ら剛腕のテクニックを持つ手練れの役者陣、屈折したボールからストレートの間で投げ分けるようになってきた大倉孝二、KERAの狙いすましたフックを着実に決める信頼あつい犬山イヌコ、緒川たまき、ヒロイン的立場ながら複雑な感情表現を駆使する松雪泰子、変幻自在の伊勢志摩、廣川三憲、神谷圭介に至るまで圧巻の実力派俳優らの演技とスパークし、スケールの大きな作品に仕上がっている。既に主役級作品を何度もものにしている伊藤沙莉、勝地涼はさらに一段上の実力を発揮する段階で見事な成長を見せてくれているのも頼もしい限りだ。(写真は舞台「世界は笑う」とは関係ありません。単なるイメージです)

 舞台「世界は笑う」は、2022年8月11~28日に東京・渋谷のシアターコクーンで、9月3~6日に京都市の京都劇場で上演された。公演はすべて終了している。
 なお、新型コロナウイルスの関係で一定期間稽古を休止したため、当初予定されていた8月7日の初日は11日に延期。8月7日から8月11日の昼の部までの5公演が中止になった。

★序文は阪清和のエンタメ批評&応援ブログ「SEVEN HEARTS」でも無料でお読みいただけます。舞台写真はブログでのみ公開しております。

★無料のブログでの劇評は序文のみ掲載し、それ以降の続きを含む劇評の全体像はクリエイターのための作品発表型SNS「阪 清和note」で有料(300円)公開しています。なお劇評の続きには作品の魅力や前提となる設定の説明。瀬戸康史さんや千葉雄大さん、伊藤沙莉さん、大倉孝二さん、緒川たまきさん、山内圭哉さん、犬山イヌコさん、温水洋一さん、山西惇さん、ラサール石井さん、松雪泰子さんら俳優陣の演技に対する批評、ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演出や舞台表現に対する評価などが掲載されています。

【注】劇評など一部のコンテンツの全体像を無条件に無料でお読みいただけるサービスは原則として2018年4月7日をもって終了いたしました。「有料化お知らせ記事」をお読みいただき、ご理解を賜れば幸いです。

★舞台「世界は笑う」公式ホームページ=公演はすべて終了しています

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