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読んでいる途中から絶望が襲ってきました


久しぶりに江國香織の小説を読みました。
最近はエッセイだったりを読んでいたので。

江國香織の「神様のボート」 

初めの数ページを読んで見て、何ともチアフルな小説だなと感じました。
大人の恋愛がセクシーに軽やかに描かれていたから。

読み進めると可愛らしい母娘の日常がありました。特別ではない日常が。
でも、また少し読み進めると苦味や酸っぱさや無機質な味がしてくるように。
今までのホワホワした焼き立ての食パンみたいな調子ではなくなってくる。

何とも「 生きにくそう」な母親の葉子。
文面から伝わる葉子の体のか細さや不健康さ、そして隠しきれないやるせない感じ。
現実と過去との間にすっぽり挟まっちゃって抜け出せない。でもしっかりと今を生きなきゃ。守るべき人がいるから。

それは娘の草子。

私は草子より強い女を見たことがありません。彼女は本当に強い。
今を「 生きにくそう」にしながらも何とか自分を現実に繋ぎ止めようと必死な母親と自分自身の現実の間に挟まっちゃった草子。こんな生活嫌だと幼いながらも気がつきながらもどうすることも出来ない。
そしてその事に早いうちから気がついている。

草子が大きくなるに従って彼女は自分の生きる道を選択していくことになり、私は何とも嬉しいような。
だけど葉子の気持ちになると言葉が出ない。

草子が唯一、葉子を現実にくくりつけているから。

受験を皮切に母娘の関係は今まで通りにはいかなくなり、次第にボコボコし始めるこの親子関係はもう読んでいられなくなるほどでした。

草子は自分の世界を確立していくのと同時に、エネルギーを失っていく葉子。

最終的な解釈は人それぞれだと思いますが私はもう葉子は神様のボートに乗ってしまったのではないかな、と思いました。

*

私も葉子と同じで大のロマンチストであり夢の中に生きたいという願望が強くあると思います。
それでも今を生きていかなければならない。
現実主義の人には分からないかも知れませんが、これほど夢想家にとって難しいことはありません。

過去に生きてみたり現実に生きてみたり未来に生きてみたり夢に生きてみたり。

この狭間が一番苦しいのです。

守り抜くモノやヒトがあればその為に今を生きるから。その為に必死に生きるから。

私は葉子とピッタリ当てはまるくせに、
葉子にはなりたくない。

だって、誰も失いたくないから。

だから必死に今を見つめ生きたい。
これが私の生きるリアルだから。

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