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神様が書いた神様のこと 志賀直哉「清兵衛と瓢箪・小僧の神様」2012年11月16日

 おはようございます。自称「和んだ女」神垣です。

 読書の秋

 あ、もう冬か・・・

 いつも
 ビジネス系か
 男と女系の本の紹介が多いのですが

 今日は久しぶりに小説の紹介です。
 しかも、超オーソドックスな。

 志賀直哉「清兵衛と瓢箪・小僧の神様」

 文庫本ですが
 新潮でも、岩波でもなく
 集英社文庫というのが渋いでしょ?

 だって、私なら絶対選ばない。
 はい、今回も夫の書棚から見つけたものです。

 今月初めに大阪へ行ったとき
 移動のお供に持参したのがこの文庫でした。

 志賀直哉ゆかりの地
 尾道に3年も滞在していながら
 短大在学中も、社会人になってからも

 “小説の神様”と呼ばれる
 偉大な作家の作品を
 一度たりとも読んだことのなかった
 不埒な人間でした、わたし。

 40歳過ぎて、今さらながら読んでみたくなって
 手に取りました。

 13篇の短編が収められているのですが
 目次を見て、わたしが真っ先に読んだのは
 「十一月三日の午後の事」。

 ちょうどその日が11月3日で
 大切な友人の誕生日でもあったので
 目に留まったのです。

 なんと、この作品が
 私の志賀直哉デビュー作となりました。
 恥ずかしながら……

 志賀作品を読んで、改めて思うのは
 日本語、とりわけ会話文の美しさです。

 「あっちの方に聴こえたね。小金ヶ原あたりかしら」

 この一文、女性ではなく
 男性の台詞です。

 今では、ほとんど口にする人も書く人もない
 穏やかで美しい会話文が
 そこにはあります。

 私は学生時代
 志賀直哉よりも夏目漱石が好きで、
 むさぼり読んだ記憶がありますが

 漱石作品の男性たちも
 やはり同じように穏やかで美しい言葉を発します。

 「時代が違う」と言われれば、それまでですが
 こうした日本文学の古典と言われる作品を読み返し、
 美しい日本語に触れる機会を持つのは
 大人になった今でも大切なことのように思います。

 私自身が
 ビジネス書に毒された読書生活をしているので
 志賀直哉の短編集を読んで
 いつになく気持ちが和みました。

 最初に読んだ「十一月三日の午後の事」は
 少し哀しいお話でしたが……

 この集英社文庫版には最後に
 池内輝雄氏による解説も掲載されています。

 この解説文
 「<私>を見つめる<私>」と題され
 志賀直哉が“小説の神様”と言われに至るまでの経緯が
 ダイジェストで、とても分かりやすく解説されています。

 志賀直哉初心者の私には
 この解説だけでも一読の価値あり! でした。

 大人になってから読む
 志賀直哉
 悪くないです。

 志賀 直哉 著「清兵衛と瓢箪・小僧の神様 (集英社文庫)

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 開襟シャツの似合う男性に出会ったような
 清涼感が味わえる短編集です。

#読書感想文

(VOL.1840 2012年11月16日配信 メールマガジン あとがきより)




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