紫原明子

愛と家族と社会について考える作家、エッセイスト。著書『家族無計画』(朝日出版社)http://amzn.to/2bD3t7t 『りこんのこども』(マガジンハウス)http://amzn.to/2bD42y8 東洋経済、クロワッサン、ブロゴス等で連載中。 #もぐら会

さみしかった昨日まで

とっても楽しい日曜日だった。彼と二人、小さな高速船に乗って、島へ向かったのだ。

 港で買ったきっぷを船長さんに渡して、彼の手をとって船に乗り込む。よく晴れた気持ちの良い日だったので、船室には入らずに、デッキの椅子を陣取った。

 「スプラッシュマウンテンになりますよ」

 出港直前、船長さんがにやりと笑って忠告したとおり、沖へ出るにつれて船はどんどん揺れはじめた。特に大きい波にぶつかると、ぐわん

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【2019年6月】もぐら会のみなさんの作品集

話して、聞いて、書いて自分を掘り出すオフラインサロン、もぐら会の皆さんの6月のエッセイです。

1.ゴミ箱は家の肛門

部屋が散らかったな、というときは大抵、捨てるべきゴミがテーブルの上や台所に放置されているときだ。ではなぜゴミが放置されているかというと、私を含む家族の誰かが横着をして放置しているか、もしくは捨てようと思ってもゴミ箱が満杯になってるからだ。

我が家のゴミ箱はキッチンにしか置いていないので、ゴミを捨てようと持っていってもゴミ箱が満杯だと、捨てられないゴミはとりあえず調理台に置かれる。すると狭い調理台

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息が深く吸えなくなったときのこと

去年のある時期、ちょっとつらいことが起きた。でもまあ何とか乗り越えられそうだ、という光が見えてきた頃。急に、息が深く吸えなくなってしまった。深呼吸しようにも、ちょっと息を吸っただけで、すぐに肺がパンパンに膨らんでしまうような感じなのだ。吸いすぎているのかなと思って、今度はたくさん息を吐いてみる。それからまた吐いた分だけ吸おうとするものの、やっぱりどうも十分に吸い込むことができない。

 よくよく考

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知らない女の香りをつけている

この前、友達の買い物に付き合って伊勢丹のマルタンマルジェラに行った。マルジェラには服や靴のほかに、沢山の種類の香水が売られていて、すべての香水にはシチュエーションの名前が付けられていた。全部嗅いだ中で、一番しっくり来なかったものがLazy Sunday Morningと名付けられた香であった。怠惰な日曜の朝。ボトルには、ベッドでまどろむ裸の女性の写真が貼り付けられている。

香水って基本的には、い

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今出すなよ

朝から何だかんだ集中できなくてテレビを見ながらそわそわ。予定されていた時間を10分ほど過ぎ、ようやく菅官房長官が登場したな、という段になり「国会議員の遅刻、俺は許さない」と言いながら自室から現れた息子が「これ、よろしく!」と書類を私に渡してきた。なんだこれは、とよくみるとそれが結構重要なやつで「ちょっと、なんで今出す? え、これ今出す?!なんでもっと早く出さないの、しかも今日必要なの?! え、無理

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