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リーダーシップと岡本太郎と「間」の問いかけ


先日、大阪中之島美術館にて岡本太郎展を観てきました。

岡本太郎「芸術は爆発だ!」の向こう側


岡本太郎氏といえば、芸術は詳しく知らなくても、「芸術は爆発だ!」は、一度は聞いたことがあるのでは?というくらい、有名なフレーズを残している芸術界のレジェンドです。
この名フレーズや生前の太郎氏の写真などから、「さすが芸術家は変わった人が多いなあ」と思ったかもしれません。

しかし、それらの言葉や振る舞いは、単に気をてらって言っていたのではなく、太郎氏は常に人が選ばない道を歩んできたからこそ、現代にまで伝説として語り継がれているのです。


岡本太郎展@大阪中之島美術館 2022年9月

岡本太郎氏にとっての芸術とは
「芸術は挑みであり、理解、無理解を超えての強烈なコミュニケーション」
                                                                                          By 岡本太郎

太郎氏は、戦前のパリで国際人として、バタイユやピカソから影響を受け、戦後は日本で土着的な文化をフィールドワークして、芸術の概念を探求し続けてきました。

今も残る、大阪万博の太陽の塔は、実は当時の工業社会へのアンチテーゼとして、縄文時代の火炎式土器を彼独自の視点で昇華した作品です。
多くの場合、対立や矛盾は調和させようとするけど、太郎氏はその不協和音の中から新たな創造を生み出す方向を歩みました。

人とはちがう道を選ぶことは、なかなか凡人にはできないことですよね。
だからこそ、多くの人の心をわしづかみにします。

太陽の塔に込められた、時代への問いかけ

岡本太郎作「太陽の塔」

岡本太郎氏は、戦後の日本がどんどん工業化されていく時代に、あえて疑問をぶつけました。

戦争で貧しかった時代からどんどん復興が進み、生活が豊かに便利になっていきました。

そんな中、東京オリンピックは1964年に開催されました。
1945年終戦の焼け野原の状態から、わずか20年足らずです。

これって、奇跡だと思いませんか?

このように敗戦から見事に立ち上がった日本は本当に立派だと思います。
けれども、多くの人々が経済発展を喜んでいた当時、岡本太郎氏は警鐘を鳴らしたのでした。

それが、大阪万博の「太陽の塔」です。

大阪万博のコンセプトは「工業化がもたらす人類の発展」でした。その中で、あえて時代に逆行するかの如く、縄文時代の火炎式土器をモチーフとした「太陽の塔」を製作し、人々へ問いかけたのでした。

「このまま突き進んでいいのか?」
「大事なことを忘れていないか?」

リーダーシップに絶対はずしてはいけないこと


リーダーとして外していけないことがありますね


リーダーとして、大切にしなければいけないことがあります。信頼?心理的安全性の場づくり?責任感?コミュニケーションスキル?

これらは全て大切です。ただ、その前にリーダーとして自覚しておかなければいけないことがあります。

それは、「他者と自分の認知はちがう」という自覚をもつことです。

「間違い」の本質は正誤ではありません。善悪でもありませんね。

ビジネスで、よく相手の間違いを指摘することがあります。

「君、間違ってるじゃないか!」(怒)

そう、この言葉は正しいです。というのも、自分と他者は「間」が違う。その通りです。

間違いとは、正誤ではありません。
間違いとは、差異なのです。

「間」というと、漫才や落語、能楽など古典芸能のリズム感。つまり、時間の「間合い」で大事ですよね。

また、空間の「間」といえば、枯山水のお庭、茶室の空間、また西洋のフラワーアレンジメントと異なる、日本の花道の生けかた等も「間」を大事にする空間芸術です。

ちょっと話がそれてしまいましたが、ビジネスにおいて、上司と部下の「間」の違いとは、視点・視野・視座のちがいです。

視点とは、見ているポイントのこと。着眼点。
視野とは、目線の広さ。
視座とは、目線の高さ。

視座が高まると視野も広くなります。俯瞰、大局観といわれることです。

繰り返しますが、間違いとは、正誤ではあリません。まして、善悪でもありません。

間違いとは、差異です。

よって、リーダーはメンバーを「間違っている!」と怒るのではなく、以下を確認することが大切です。

・相手は、今何を見ているのか?(視点)
・相手は、どこまで想定して判断しているのか?(視野)
・相手は、この先の展開をどこまで見通して行っているのか?(視座)

部下メンバーが失敗したとき、「こうなると思ってたんだ」「ほら、言ったこっちゃない」などと言う上司がいます。

けれども、これって後出しジャンケンです。上司のマネジメントの怠慢です。

後で怒るんだったら、先に言って欲しいと部下は思っています。

しかし、失敗して学ぶというやり方も、確かに大切です。実際のところ、私はたくさんの失敗を重ねて、営業トークが磨かれていったと思っています。

部下メンバーには、失敗する権利がある

自分で頭を打ってわかる経験は、単に教えられるよりも血肉になります。

だからこそ、低レベルな失敗ではなく、高レベルの失敗をするほうが上質な学びになります。

ここでいう低レベルな失敗とは、ちょっと頭の中で考えればわかるレベルのことです。

例えば、営業で新規訪問する際に、よくあるお断り文句(お金が無い・時間が無い・決裁権を持って無い等)の切り返し話法を準備しておくとか、です。

では、高レベルの失敗については、十手先まで考えた上での失敗や、(ああしたらこうなるかな?)を何十回ももんだ上で、思いがけない状況になってしまった場合などです。

あれだけ考えたのに、こんな想定は予想できなかった、とあきらめがつく位のレベルです。
人事を尽くした挙句に天命を委ねる感じですね。

メンバーと「間」を合わせるために、問いかけよう


自由闊達を重んじている組織があります。
しかし、本当の自由闊達とは、好き勝手にやらせることではありません。
もちろん、統制することでもありません。

真の自由闊達とは、考えうる策を仲間と意見をもみ、机上で練った上で、「後はやってみないとわからない」と小さくトライ&エラーを試してみることです。

この時に大切なことは「独りよがりにならないこと」です。

複数名で、複数の視点でテーマを見つめることが重要です。

この時に、リーダーはメンバーへ本人が見落としている「間」を提供するのです。

相手に欠けている「間」の提供。すなわち「問いかけ」

例えば

・君の考えを顧客の立場から見るとどう見える?
・決裁権者が心配することは何だと思う?
・お客様が選ばない理由は何だろうか?

部下メンバーへ、頭ごなしにダメ出しをすると、相手の意欲はペシャンコにつぶれてしまいます。

かといって「何でもOK!」と手放しで賞賛するのも、上司として無責任です。

では、どうしたら良いか?

部下育成で重要なことは、部下メンバー本人の気づきを誘発することです。

そのために、部下メンバーが自分の主張から離れることができるように「問いかけ」ましょう。

間=視点・視野・視座

部下メンバーが自分を客観視できるように、上司が「間」を提供するのです。

まとめ:自分の常識は相手の非常識


自分の当たり前と相手の当たり前が同じである根拠は何でしょう?

わたし達は、知らないうちに自分の当たり前が標準だと思い込んでいます。

しかし、自分の当たり前を皆もそう思っているはずだと考えるのは、傲慢です。

自分の常識は相手の非常識

そもそも、自分と相手の認識は同じであるはずがない。こう考えてちょうど良いです。

相手と自分との間には「間」があって当然です。

だからこそ、頭ごなしに「間違っている!」と怒るのはナンセンスなのです。

相手と自分の何が違うのか?
相手の、視点・視野・視座は、どうなっているのか?

それを知るために、問いかけましょう。

リーダーがメンバーの「間」に関心を寄せれば、メンバーは心を開いてくれるはずです。

ぜひ、問いかけをしてみてください。

メンバーの視点・視野・視座に、リーダーがハッとさせられるかもしれませんね。


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