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「島から甲子園」~大島の挑戦

奄美は今、歓喜に湧いている


こんにちは。シマのウチ2本目の投稿となりました。野球観戦フリークのたまごやきです。

今、奄美大島は大きく湧いています!
その訳は…大島高校野球部の第94回選抜高校野球大会への出場が近づいているからです!

8年ぶり、2度目となる甲子園。前回は21世紀枠での選出でしたが、今回は九州大会準優勝の堂々たる結果を引っ提げての出場です!

8年前から続く夢


初出場となった2014年、1回戦で優勝校・龍谷大平安相手に11安打しながらも相手の強力打線と好守に苦しめられ、初戦で姿を消しました。

しかし、一塁側アルプススタンドには島民が集結し、奄美の民謡「いねすり節」などを演奏。島を挙げての応援は高く評価され、最優秀賞を受賞しました。

島から甲子園」の悲願達成という記録は、島民の心に素晴らしい記憶を刻んだのです。

逆境を乗り越えた「友情」


高校球児の憧れ、阪神甲子園球場。離島の公立校である大島は船で12時間かけて鹿児島本土に行かなければ試合ができません。体調管理や経済面での
負担は計り知れず、高校で本気で野球に打ち込みたい有力な中学生は県本土の強豪私学に入学します。

大島のエース、最速146キロ左腕・大野稼頭央もその一人。「稼頭央」という名前は埼玉西武などで活躍した松井稼頭央からとられたそう。名門の鹿児島実業に進学予定でした。

それを引き留めたのが、大島の正捕手で4番を打つ西田心太朗
中学校時代に大野と何度か対戦経験のあった彼は、大野のピッチングに惚れこみ、高校でバッテリーを組むことを熱望。「島から再び甲子園を」という志を持つ西田の説得に、大野は奄美に残って地元から甲子園を目指すことを決意します。

2022年1月29日 奄美新聞8面
緋寒桜の前で、センバツ出場決定の歓喜に湧く大島高校野球部(左)と大野・西田のバッテリー(右)

大島というチーム


大島の選手はほとんどが奄美群島の出身。離島の誇りをかけて、聖地を目指し、そして実際に切符を掴んだのです。
塗木哲哉監督は「エンジョイング・ベースボール」を掲げ、自分たち、対戦相手、見ている人のすべてが「楽しい」と感じる野球を目指しているそうです。

実際、大島のベンチは本当に明るいです。控えの選手さえも楽しむ雰囲気が
こちらにも伝わり、何かを起こしてくれると期待させてくれます。

私のイチオシはなんと言っても円陣。塗木監督自ら、選手達と一緒に空を見上げます。甲子園でも見たい光景の1つなので、ぜひ注目してみてください!

大島高校新聞部発行の「大高ジャーナル」12号2面。
お祝いムードに包まれた1日だった。

粘りの快進撃

「島から甲子園」を実力で掴んだ選手たちの軌跡を振り返ってみましょう。

2021年秋、快進撃が始まります。県大会初戦でサヨナラ勝ちを収めると、一気に勝ち進み、準決勝では、夏を制した樟南を延長13回タイブレークの末に下します。決勝では鹿児島城西と再び延長13回タイブレークの死闘を演じた末にサヨナラ勝ち。マウンドを大野が一人で守り抜き、西田の右前適時打で県初制覇を決めました。

続く九州大会も、快進撃は続きます。初戦の相手は、大分県大会を2位通過した大分舞鶴。降りしきる雨の中、大野は奪三振ショーを見せます。大分大会で2021年のセンバツ準優勝校・明豊相手に9点を挙げた舞鶴打線と大野の勝負は両者一歩も譲らず、試合は延長戦に突入。試合の続行は不可能と判断され、翌日の再試合に決着は持ち越されます。翌日の再試合も1点を争う接戦になりますが、終盤に相手のボークで1点を勝ち越し、勝利を収めました。
ちなみに、大分舞鶴は今回、21世紀枠での選出で開幕戦に登場。浦和学院と対戦します。

九州に割り当てられたセンバツの枠は4校。続く試合の相手、沖縄の強豪・興南に勝てば、4強入りで選出濃厚と見られていました。再試合により、大野の疲労はすでに極限に達しています。長打力のある興南打線の前に、苦戦は必至。もはやこれまでかと多くの島民は思っていました。
しかし、マウンドの大野は1回戦とは別人でした。凡打の山を築き、2奪三振、121球で完封。バットでも先制点をたたき出し、大車輪の活躍で大勝利を挙げたのです。
奄美では、甲子園で沖縄代表の応援をする島民も多く、私は毎年のようにテレビの向こうから応援している興南と地元の高校が試合をするだけでも嬉しくて仕方がなかったのですが、まさか本当に勝つとは…。勝利を信じて実現させた島の球児たちの底力を感じました。

「1週間500球」の球数制限により、準決勝・有田工戦からは大野の登板が回避されました。しかし、途中からマウンドに上がった主将の武田涼雅(普段は遊撃手)が好救援で流れを作ると、打線もビッグイニングを作って大逆転勝利を収めました。

決勝の九国大付との一戦では、2回に満塁弾を浴び、苦しい展開を強いられますが、9回裏に代打攻勢でチャンスを作り、途中出場の美島永宝が内角高めの難しい球を引っ張り、レフトスタンドに叩き込む3ランを放つなど5得点。終盤の追い込まれた場面で真価を発揮する球児の姿に、島の人々は心を打たれました。

大島高校新聞部発行の「大高ジャーナル」11号1面。
九州大会の快進撃は劇的と言うほかない。

気になる対戦相手


大島の初戦の相手は、明秀日立(茨城)に決まりました。強力打線と堅守が強みの関東王者で、奄美大島に住む私が見ても、総合力では格上だと言わざるを得ません。
しかし、私は期待してしまうのです。
大島の高校球児たちは、これまでいくら外野に「無理だ」と言われても、
下馬評を大きく上回る結果を示し、見返してきたのですから。

最後に

本格的な執筆がnoteでは初で、拙い文章となってしまったかもしれませんが、ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。

シマのウチの、たまごやきがここまでお送りしました。

奄美の方言に、「すっとごれ」という言葉があります。「負けてたまるか」という意味があり、度重なる逆境を乗り越えて成長してきた大島の球児たちをよく表しているように思います。
センバツの開幕まであと少し。
大島高校、いや奄美の悲願の初勝利を、この目でしっかり焼き付けたいと思わずにはいられません。


待ってろよ、甲子園。そして巻き起こせ、大島旋風。


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