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読書感想 - 「寄付をしてみよう、と思ったら読む本」 渋澤健 鵜尾雅隆

感想

私は準認定ファンドレイザー資格を持っているのですが、お恥ずかしいことにこの本を読むまでは(つまり数時間前までは)「ファンドレイジングって必要悪だよね」ぐらいの感覚をもっていました。

寄付は各自の自発的な想いで発生するべきもので、そういう行動を戦略を立てたり、コントロールするような活動ってどうなの?という思いを日々抱いていたのです。「寄付額○○円の寄付者を○○円の高額寄付者に育てよう!」みたいな発想に正直引いていました。えぇ、そりゃ引きまくりでしたとも。

しかし、この本を読んでファンドレイジングの根本は『「共感 x 解決策」を社会に提案することであり、資金調達は結果の一つにすぎない』ということを理解し、ファンドレイジングに関する見方がガラッと変わりました。読んでよかった。

この本は私のように「ファンドレイジングってどうなん?」とか「寄付に頼る組織運営ってどうなん?(自分達で稼いだらどうなん?)」とか、諸々ファンドレイジングとか寄付とかに懐疑的な気持ちや考えをお持ちの方に是非読んでみていただきたい本です。そういう意味では「寄付ってどうなん?と思ったら読む本」とも言える感ありです。

閑話休題。

寄付と投資は親和性が高いという観点が本書では述べられています。寄付も(長期)投資も応援したい人や組織にお金を託すというスキームで、リターンが社会的リターンか金銭的リターンかの違いがあるだけという話。良い活動をしている組織(NPOとか)に投資すればそれは寄付。良いサービスや商品を提供している組織(株式会社とか)に投資すればそれは投資。それだけの違いしかない。

お金は天下の回りものであり、あの世までもっていけるものではありません。であれば、活動であれ、サービスであれ、商品であれ、気に入ったものに投資すればそうしないよりHappyになりやすい。それだけのことなんだなと、私は理解しました。

何度か書いていますが、私は人生の目的は少しでもこの世に善いことを積み増しして次世代に引き渡すことだと思っていますので、お金はいい意味で停滞させずに流していきたいと思いました。


その他、心にとまったセンテンス

寄付とは、投票行動のようなもので、自分が選びたい未来を選択するという行動です。つまり、主体性の有無が重要なポイントです。そういう意味では、寄付と長期投資の本質は同じです。

日本では、寄付の行動が誰かに見られているとするならば、神様ではなく「世間」です。

人間にはAIに負けない絶対優位があると書かれていたのを思い出します。それは、創造性、問題解決、共感、多くの身体的作業です。

社会問題というのは、誰かが顕在化しなければ埋もれていく性質があり、問題を発見するプロセスが非常に重要です。

行政の補助金は、3年間にこの研究に対していくら助成します、というように、期間を決めて出されます。そうすると、研究スタッフを雇うにも期間を限定しなくてはなりません。(中略)研究者が安心して活動できる環境を作るには、自己財源が必要になってきます。

助成金は毎年のお金の「フロー」の感覚で使われており、そこには社会的課題を解決するお金の「ストック」づくりという視点が欠けています。

「我々は微力であるかもしれない。けれども、決して無力ではありません」

寄付の本質は、微力なひとりでは成し遂げられない社会的課題を解決するために、「寄せて」「付ける」ことです。「足し算」だけではなく、乗数効果の「掛け算」も求めています。ならば、寄付とは社会的な課題解決のための「長期投資」に他ならず、寄付金と資産運用の融合は極めて合理的です。

共感には散らばった状態を集める力があるのです。

渋沢栄一は、およそ500の会社設立に関与したことから、「日本の資本主義の父」と言われるようになりました。一方、それほど知られていませんが、教育、病院、社会福祉施設、民間外交など社会的な非営利組織の形成への関与はおよそ600あると言われています。

渋沢栄一は養育院の院長を務めていたので、生涯で一番長いポストは実は銀行ではなく、養育院の院長だったのです。

書店に行けば、「3万円を3億円にする方法」など稼ぎ方についての本はたくさん並んでいますが、3億円をどう使うかについて、書いてある本はほとんど見当たりません。

成果を生み出してもらうためには、人的なコストは欠かせません。このことを忘れてはいけません。

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