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読書感想 - 「しょぼい起業で生きていく」 えらいてんちょう

感想

(あくまで個人の感想として)久々にしくじった〜

帯に敬愛する内田樹先生の名前が載っていたのである程度の品質は担保されているだろうとふんだのだけどあかんかった。。。なお、非常にスムーズに読めた。心にとまるところがなかったので

基本的には、小規模起業でたまたま上手くいった著者の成功者バイアスバリバリのノウハウ(?)が載っている。

著者は今の日本では飢え死にはしないという。
私はそうは思わない。

著者は生活を資本化すれば良いという。
私はそれは健康に働ける人の発想だと思う。

著者は銀行などに借金しなければ潰れにくいし、潰れてもどうにかなるという。
私はそれはここ1〜2年でみればという発想だと思う。

自分だけが、現在(いま)、生き抜いていくだけなら著者の主張する生き方は大いにアリだと思う。

けれど、皆が皆そうではない。仕事をしようにも貧困で住所を無くしバイトにも就けない人、病気で普通には働けない人(私なんかそうだね)、養わなければならない家族がいる人、育児や介護に追われている人、いろんな人がいる。それに、人生は長い、元気な著者もいずれ病気になる。老い。死ぬ。そこまで射程に入れて考えている言説にはどうしても思えない内容だった。

死ぬような思いや実際に自死を考えてしまうような劣悪な労働環境に会社員としてしがみつく必要はない。私もそこは同意している。けれど、自分がたまたま上手くいった方法論で「起業しましょう」とフランクに誘うのはどうなのかな?と思う。もっと堅実な方法が他にたくさんあるでしょって思う(単純に転職とか、配置転換願いとか、副業とか、いったんパートナーに収入のメインを張ってもらってサポートに回るとか)。

私は起業家を胡散臭くは思わないが、ひとに起業を進める起業家は胡散臭いと思っている。この本も一歩引いてみれば、著者の「しょぼい起業コンサル」の一環でもあるわけで。

歴史に学ぶことは大切だし、私の基本的な生き方は歴史に学ぶ生き方だけれど、歴史から成功体験を学んでもあまり意味はないと考えている(しかし、書店には成功体験ばかり述べる成功者による書籍が山と積まれている)。歴史から学ぶべきは失敗体験。過去の過ちを繰り返さないために歴史はある。

敬愛する野村克也氏の

「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

が、まさにそれを言っている。

この著者のケースは「不思議の勝ち」の類なのではないかと感じた。

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