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【左脳めし】炎上プロジェクトの「交通整理」が学べるエンタメ小説

「仕様書がある!」という歓喜の声に、俺はやり場のない怒りを覚えた。(本文より)

昨夜、久しぶりに小説を読みました。
KADOKAWAが運営する小説投稿サイト「カクヨム」のWEB 小説です。
読んだのは、

輝井永澄 作『大炎上プロジェクトを立て直した話をする。

面白くて一気読みしました。文量は中編小説くらい。読むのが遅いぼくでも2時間くらいで読み終わりました。

ストーリー

【引用:『大炎上プロジェクトを立て直した話をする。』小説の概要より】

中規模の開発会社が受注したソシャゲの開発プロジェクト、予算は数億円。

言うことがころころ変わるクライアント、仕事をしないディレクター、白紙の仕様書。

スケジュールは超過して大赤字、次々といなくなるスタッフ。

三代目のリーダーに俺が指名されたとき、社内の視線は冷ややかを通り越して憐れみに満ちていた――

若手チームを率いて大炎上プロジェクトを立て直した話をします。
炎上する原因、大きなプロジェクトをスムーズに進める工夫、汗と涙と徹夜、そしてExcel方眼紙。

この物語はフィクションです!

フィクションと謳っているものの、ゲーム開発のあるある話が満載です。良い話ほどフィクションが入っていて、悪い話ほどノンフィクションじゃないかと思うくらいです。

物語は3部構成。1本のゲームを完成させるまでの話なのですが、プロジェクトの途中で2回、ディレクターの交代があります。3人のディレクターを1部毎に配置した物語です。
最初のディレクターで早くも火がつき、2人目で大炎上。その様子を端から見ていた主人公が3人目のディレクターに指名され、火消しに入ります。

ゲーム開発における炎上とは

ゲーム開発における炎上とは、様々なトラブルによって、ゲームの完成に対し、悪い影響が避けられなくなった状態を指します。

その「悪い影響」とは、大抵次の3つに当てはまります
1)完成の目処が立たない(完成時の品質に問題があることも含まれる)
2)完成の目処は立つが、予定の期日に間に合わない
3)予定の期日には間に合うが、予算が超過して赤字になる

ひどい時は3つとも当てはまります。それが「大炎上」です。
『大炎上プロジェクトを立て直した話をする。』も、まさにそれ。

炎上における「様々なトラブル」は、大抵「情報、人、物、金」に関して「不足している」か、不足していないけど「上手く流れていない」かのどちらかです。

物語の主人公の三代目ディレクターは、そんなトラブルの内容を具体的にして、プロジェクトXの如く、鮮やかに問題を解決していきます。その気持ち良さは、実際の小説で楽しんで下さい。

大規模プロジェクトに「交通整理」はつきもの

先日アップしたnote「【左脳めし】勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし。」にもある通り、失敗には必ず原因があります。
その原因を「誰かのせい」にしても問題は解決しません。人を入れ替えても、掘り起こせなかった原因は、そのまま残っているからです。

だから、プロジェクトの責任者は、問題点を整理して、仕事が滞ったり、後戻りすることなく、スムーズに流れるよう様々な手段を講じます。

こうした仕事を、俗に「交通整理」と呼びます。

交通整理は、規模の大小問わず、どんなプロジェクトでも必ずあるものです。
特にプロデューサー、ディレクター、プロジェクトマネージャーといった職種で、交通整理が無縁ということは、まずありません。

だから、これらの職種を目指すゲームクリエイターにとって、この『大炎上プロジェクトを立て直した話をする。』は、交通整理を学ぶ材料としてうってつけです。
何しろ、何の実害もなく、楽しみながら学べるのですから。

ぜひ、「交通整理」という視点で、このエンタメ小説を楽しんで下さい。


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