運び屋

【右脳めし】新聞記事の脚本化を学ぶ|運び屋(映画)

映画『運び屋』は、一度に13億円相当のドラッグを運び、「伝説の運び屋」と呼ばれた90歳の老人を描くヒューマンドラマです。
監督・主演はクリント・イーストウッド。自身の監督作としては『グラン・トリノ』('08)以来、10年ぶりに主演を務めます。
日本では2019年3月8(金)に封切られました。

新聞記事に着想を得る

この映画は、2014年にニューヨークタイムズ紙の別冊「ニューヨークタイムズ・マガジン」に掲載された記事から着想を得ています。

記事の見出しは「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule(シナロア・カルテルの90歳の運び屋)」。記者はニューヨークタイムズのスポーツ部門エディター、サム・ドルニックです。

2011年、メキシコ最大の犯罪組織シナロア・カルテルによるメキシコからデトロイトへの麻薬密輸が、DEA(麻薬取締局)によって摘発されます。
大量のコカインを運んでいたのは87歳の老人、レオ・シャープ。第二次世界大戦の退役軍人で、犯罪歴はなし。退役後は植物を異種交配させるビジネスを手がけ、全米各地で開かれる植物の品評会に車で飛び回る日々を送っていました。

記事では、シャープに祖孫(*1)がいると書かれているものの、詳しい私生活まではわかりません。そこで、イーストウッドが演じる映画の主人公、アール・ストーンの家族については、脚本家のニック・シェンク(*2)とイーストウッドが創作します。

※1:「そそん」と読む。先祖と子孫のこと。
※2:『グラン・トリノ』('08)で原案と脚本を担当した。

製作のクリスティーナ・リベラは、最初に脚本を読んだ時の印象を次のように語っています。

「ニックがクリントを念頭にアール役を書いたことはすぐにわかったし、クリントをあのキャラクターとして容易に思い描くことができた。本作の“悔恨”と“許し”、さらには“償い”というテーマにも強く惹かれた。そういう要素は、さまざまなレベルで人々の心に通じると思う。(以下略)」
【引用:映画パンフレット PRODUCTION NOTEより】

また、『グラン・トリノ』(08)で、監督主演作はこれで最後と言っていたイーストウッドは、10年ぶりの監督・主演をすることになった理由を、こう語ります。

「まず、シナリオを先に読んでね。それから、基になったニューヨークタイムズの記事を読んだ。それで、この役を、ほかの誰かに譲りたくなかった。ほかの誰かの演出で演じたくもなかった。だから両方自分でやったのさ」
【引用:映画パンフレット 町山智浩氏による INTERVIEWより】

記事と映画を見比べると創作部分がわかる

『運び屋』の映画パンフレットには、原案となった「ニューヨークタイムズ・マガジン」の記事が日本語訳で全文掲載されています。

これ読み、かつ映画を見れば、クリント・イーストウッドとニック・シェンクがどのようにして記事を映画の脚本まで落とし込んだのかが見えてきます。

麻薬の運び屋となった老人のキャラクター。
家族と麻薬をめぐる世界観。
“悔恨”、“許し”、“償い”をテーマにしたストーリー。

これらが、実話と創作を混ぜ合わせて、どのように仕上げられたのか。
気になる方は、ぜひご自身の目で映確かめて下さい。

その際は、パンフレットに掲載されているニューヨークタイムズ記事を読んでから、映画を見ることをオススメします!
(ぼくは、パンフレットに原案の記事が載っていることを知らなかったので、この楽しみ方ができませんでした...)


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