対人関係の傾向は知らず知らずに親をまねている
今回は『対人関係の傾向は知らず知らずに親をまねている』という話をさせていただきます。
私たちは誰でも自分の対人関係の傾向があります。
生きていくうえで良い方向に作用している傾向もあればそうでないものもあります。
自分では気がついていなくても、自分の親と似たような傾向を持っていることがあります。
無意識や潜在意識というレベルでそれをしているという話です。
自分の傾向は親からきているのかと気がつくだけでも見え方が変わると思います。
親の行動を見て、自分の中に取り込んでいくことをモデリングとも言います。
意識的に取り込むよりも無意識的に取り込んでいるものが多いのです。
極端な例ですが、親から幼児虐待を受けて育った人が自分の子どもに虐待をすることがあるという話をお聞きになったことがあるかもしれません。
意識的には親と同じように自分の子どもに虐待などしたくないと思っているかもしれません。
でも無意識レベルで親の行動を取り込んでいて、同じように繰り返してしまうのです。
意識と無意識はよく氷山の例えで説明されます。
氷山の大半の部分は海水に沈んでいて、海上に出ているのはその一角でしかないというものです。
無意識が大半を占めていて、意識はそのごく一部でしかないということです。
私たちが生活している中で意識が受け取っている情報はごく一部です。
大半の情報は無意識が受け取っています。
たくさんの情報を意識で受け取ろうとすると脳がパンクするので、無意識で受け取るようになっています。
それによってすべてを意識しなくても済むようになっています。
親とは長い間一緒に生きています。
長い時間の中で無意識レベルによって親から情報を受け取っています。
ふだんは意識に上っていませんが、親と同じ傾向が私たち自身の中にはあります。
こういう例もあります。
職場で周りの人からすごく頼られて、仕事をいろいろ引き受けてしまう人がいるとします。
頼られるのはいいですけど、仕事を引き受けすぎると、どんどん自分が大変になっていきます。
人の仕事をやってあげるというのは、その人の経験を奪っていることにもなります。
双方にとってマイナスな面もあるわけです。
親子関係を振り返ってみると、親がしっかりしすぎている人で、家のことや身のまわりのことをすべてやってくれていたなんていうことがあります。
幼少期に自分の力で何かをするという経験が奪われて育ったため、いまいち自分に自信が持てません。
ただしさすがに長年生きているとたくさんの経験をして自分の力でいろいろできるようになります。
でも人に対しては、親がそうだったようになんでもやってあげるようになってしまうのです。
ふだんは意識していなくても無意識レベルでモデリングしてきた親の傾向が出てきているのです。
このように対人関係のパターンや役割として出てくることがあります。
このようなしくみを知って、自分の対人関係の傾向が親のモデリングからきていると気がつくだけでも見え方が変わると思います。
今回は『対人関係の傾向は知らず知らずに親をまねている』という話をさせていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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小林いさむ|公認心理師
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