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命の記憶〜私達の宝物〜

2013年12月
(和食:日本人の伝統的な食文化ー正月を例として)和食が
ユネスコ無形文化遺産に登録されました。

これは先人から受け継いだ知恵の結晶であり、日本の宝。途絶えさせてはいけない後世へと紡いでいくべき文化と言えます。春には山菜の天ぷらや筍ご飯夏には夏野菜料理やそうめん秋にはさんまにサツマイモ料理冬には様々な願いが込められたおせち料理や鍋のように、古くから私達は、四季折々に様々な料理を頂いてきました。

日本料理は四季の恵みを通して
自然を食するもの。
食材の全てが自然からの恵みだと考え
常に自然を尊びながら生きてきた
日本人にとって
食と自然は、
切っても切り離せないものなのです。

日本料理と言っても、
和定食やお惣菜などの家庭料理や
郷土料理
千利休が始めたとされる
茶の湯の世界で来客をもてなす
茶懐石など様々ですが、
今回は、酒と焼酎などのお酒を交えながら
人と人があって楽しく食事をすることを目的とした会席料理を紹介します。

取材と人生経験を兼ねて伺った会席料理店で頂いた約10品の献立を元に、日本料理を読み解いていきましょう。

まず、先付けとして出されたアワビは9月から翌年の夏頃までが食べ頃、柿は11月からお正月までが食べ頃なので「走り」を表しています。走りとは初物を頂き、新しい季節の訪れを待ち望む気持ちを表しています。色とりどりに様々な四季の味覚が使われまるで絵画を見ているかの様に美しく、日本人の美意識が詰まった一品でした。

次に焼き物の栗や松茸は旬が9月から10月なので旬の食材として、銀杏は9月から11月に旬な食材として使われていました。「旬」とは野菜やお肉、お魚などの食材を栄養を多く得ながら、一番美味しく頂ける時期です。この料理は五感から秋を感じ、新鮮で風味が豊かな食材に感動しました。

次に鰻とそうめんが夏季の名残として
使われていました。

「名残」とは、去りゆく季節と食材を
惜しみ、来年もまた出会えることを心待ちにする気持ちを表しています。

この料理が出てきたときは、
思わず夏の思い出や記憶を振り返りたくなりました。

「走り・旬・名残」とは、
日本料理を創る上で最も重要な考え方です。

この考え方のもと、
素材の持ち味が最大限に引き出された
料理を食べた人は、
季節の移ろいに思いを馳せる事ができます。

今回、本物の会席料理を
一つ一つ味を噛み締めながら頂いていく中で「味、食感、見た目、雰囲気」など様々な方向から、日本人の美意識が生み出す
五感を刺激し、
私達を包み込んでくれるかの様な
優しさや美しさ、奥床しさを感じました。

肉や魚、野菜などの動植物が得た大地の恵みを頂くことは、
料理と対話して味覚を楽しみながら命を頂くこと。

日本料理には、
世界に誇れる魅力や
自然からの贈り物として季節の食材と出会いを大切にする
日本人独自の価値観や愛おしさが
恐縮されていたのです。


現在の私達は、
日本料理の魅力を知り味わいそして、
それらを感じることが出来ているでしょうか?

こんなにも奥深く素晴らしい
食文化が身近にあるにも関わらず、
我々日本人の多くは、
日本料理や伝統行事と向き合うという事から
離れて生活してしまっているのが
現状ですよね??

今一度、家庭料理の中に
「走り・旬・名残」などの食材を意識的に取り入れてみること。

伝統行事の中で伝えられてきた
日本料理を作って食べてみること。

特別な日には
大切な人と共に会席料理を食べに行く
機会を作り、
全身で味わいながら
その奥に隠された謎や魅力を
読み解いてみること。

この様に
日々の生活の中で意識しながら
食事を見直してみることで、
目まぐるしく進んでいく社会の中でも
温故知新を大切に日本人としての
誇りと伝統を遥かなる未来へと
バトンを繋いでいくことができるでしょう。

私達日本人は、
今一度“日本”を
より知っていく必要性があると
私は確信しています。

日本人が古来より大切にしてきた
自然を尊ぶ精神性や食に対する思いは
絶対に途絶えさせてはいけません。

この素晴らしき日本の宝を50年、100年、1000年先も後世へと紡いでいきましょう。

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