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絶対に譲れないもの。

お疲れ様です。結城りんねです。


絶対に譲れないものって何かありますかね。
僕もある気がします。

ちょっとすぐには出てきませんが。

僕が小学生の時のお話です。
僕が小学生の時のお話、多いですかね?ちょっと。
気のせいですきっと。

えーとね。あ、そうです。僕の実家マンションなんですけど。
エレベーターがあるんですよね。で、そのエレベーターでは他の住人との間に様々なドラマがあるわけです。

今日はその中の1つをお届けしようかと思います。

僕はいつも通り学校から帰ってきて、マンションのロビーに入りました。

で、エレベーターの前まで行くとちょうど誰かが下りてきて、ドアが開くところでした。

降りてきたのは他の階に住んでる僕と同世代くらいの男の子。

その子のことは知ってはいたのですが、会話をしたことはなかったので軽く会釈をしてすれ違おうとした時です。

その子が「お疲れ様です!」と右手で敬礼をして挨拶をしてきました。
チョリースみたいな軽い感じの敬礼じゃないですよ。どんな厳しい上官でも1発OK出しちゃうくらいの完成度の高い敬礼です。

僕びっくりしちゃって。しぼり出すようにお疲れ様です、と返して、エレベーターに乗って行こうとしました。

すると彼、まだ敬礼したまま僕を見てるんです。
最初はただエレベーターに乗る僕を見送ってくれるのかなと思ってたんですが、そういうわけでもなさそう。

まさか、、、。これって俺の敬礼待ち?

彼の眼差しが訴えてるのはどうやらそういうことのようでした。

そう気付いた時点で大人しく敬礼しておけばいいんですが、当時の僕は学校ではクールキャラで通ってて、少々尖ってたんですね。かつてのKAT-TUNくらいに。

だから彼に屈して敬礼するのをプライドが許さなかったと。

そこから、絶対に敬礼させたい彼と絶対に敬礼したくない僕のほんの数秒の闘いが始まったわけです。

力強い眼差しの圧を感じながら僕はゆっくりとエレベーターに乗り込みます。

そして振り返ると彼はまっすぐと僕を見つめて敬礼をしています。

僕はそれを正面から受け止め、自分の階のボタンを押しました。

エレベーターのドアがゆっくりと閉まり始めます。

すると彼がそのままの姿勢でもう一度、「お疲れ様です。」と静かに言いました。

エレベーターのドアがこのまま閉まってしまえば僕の勝ちなのに、なぜか最後の最後に罪悪感に駆られてしまったんです。

僕は重たい右手を上げて「お疲れ様です、、、」と敬礼をしてしまいました。

エレベーターが閉まる直前に、敬礼する僕を見て満足そうな表情をする彼が見えました。

そして、小学生の男の子2人が向かい合って敬礼をしている中、エレベーターはゆっくりと完全に閉まりました。

小学生同士でなければ、何かの映画のワンシーンに思われたでしょう。

エレベーターに1人残された僕は、敗北感と喪失感に包まれていました。

こうして僕らの譲れないものをかけた闘いは、
彼の勝利で幕を閉じたということになります。

結局彼がなぜそんなに僕に敬礼させたかったのか、そして僕はなぜそんなに敬礼したくなかったのか、今となってはよくわかりませんね。

まあ小学生にして譲れないものをかけて人とぶつかった経験というのは、なかなか貴重で価値のあるものなんじゃないかと思ったり思わなかったりしてます。

というお話でした。


最後まで読んでいただきありがとうございます!
KAT-TUN並みに尖ってた僕ですが、生まれてこの方舌打ちはしたことがありません。

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