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【気ままな読書日記】悪と全体主義 第3回 カースト逆転現象の謎 

3.隷従しちゃう

子育てをしているとつい忘れがちになってしまうけれど、子供はいつか大人になる。
時の経過とともに、彼らはぐんぐん成長してゆくのだ。当然に。

私が父に反旗を翻したのが20代の半ば頃だったか。
最初は烈火のごとく怒り狂って反乱分子の鎮圧に乗り出した父であったが、コトはそう簡単には収まらなかった。
コッチだって本気である。『もう死んでもコイツの好きにされたくない』という気迫で頑張っていたところ、事態はとんでもない方向へと転がり始めた。

それが、父の奴隷化現象である。

なぜか私に完全服従の姿勢を見せるようになった父は、謀反の発生からわずか数年のうちに、私の忠実なしもべへと成り下がっていた。
気がついたら私は、『よりかかりたいの四六時中ッ』と望まれる側、父の精神的支柱のような存在になっていたのである。

成人した娘の家にいりびたってヒヨコのようにあとをついてまわり、朝から晩まで行動を共にしたがる男親ーーー
ーーーって、どうなん?

悪いけどチョット無理。
そーいうのは妻とやってくれないか。

・・・・しかし。

不思議だとは思いませんか。
父の中の『何か』が右に寄るか左に寄るかで、彼は鬼にも奴隷にもなる。

もちろん、最初は思っきし困惑した。
なんだこれは、いったいどーゆうことなんだ、と。

あんなにごーごー怒り狂ってたのは何だったのか。

虫の居所だか本人のお気持ちだか知らんけども、オマエえー加減にせいよと思わずにはいられない。

で、徐々に気がつき始めるわけです。
あの苦しみの日々にたいした意味なんてなかった。ただ、父のご機嫌に振り回されてただけ。

陳腐だ。
とてつもなく、陳腐。

この状況を『陳腐』と言わずして他になんと言いましょう。
(※『陳腐』の意味については次回第4回で)


【隷属と服従の意味の違い】
隷属と服従の違いを分かりやすく言うと、隷属には従う者の意思がない時に使い、服従は従う者の意思がある時に使うという違いです。

例文買取センターさん

ニュアンス的に、父のアレは『服従』ではなく『隷属』『隷従』だ。
服従ってのは香川照之の土下座(半沢直樹の)みたいなヤツでしょう? 父のはあーゆうんじゃない。もっと自発的土下座。

『隷従』ってたぶん全体主義と大衆心理を学ぶ上での重要ワードで、たとえばこんなタイトルの本もある。

話戻して、次は『市民』と『大衆』との違い。
仲正先生は著書の中でこんなふうに説明されている。

市民 自分たちの利益や、それを守るにはどう行動すればいいかということを明確に意識している人たち。
大衆 何が自分にとっての利益なのかがわからない人たち。
隷従するのは市民ではなく大衆である。

こんなふうに書くと「大衆ってのはつまりバカのことね?」と勘違いしてしまいそうになるけれど、そうじゃない。
その例として挙げられているのがアイヒマンだ。

ーーー次回、『4.悪の正体』へつづく!

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