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監視対象:お母さん

お母さん、その男は誰なの。

寝てたけど、お母さんの声で分かったよ。昨日は三軒隣に住んでる尾形のおじさんを連れてきてたね。尾形のおじさんとお母さんが何をしてたか。分かんないけど、多分、尾形のおじさんとしてた事を今日もするんでしょ?

僕が寝たあと、閉め切った障子の向こうで、こっそり男の人をお家に連れてきて。いつもは開いてる障子なのに。なんで今は閉めてるの。そこで何をしてるの。

オレンジ色の豆電球の光と、お母さんと、男が絡まる大きな影。僕にはこれしか見えない。僕には秘密の事なのかな。

障子の向こうから、ペチャペチャいう音が聞こえる。お母さんの高くて短い声も連続して聞こえてくる。知らない男は「そのまま出す」って言ってるけど、どんな意味か分からないや。

すごく不安で、心細い。今すぐ「お母さん!」って叫びたい。そしたら、お母さんが障子の向こうからすぐに来てくれて、僕に絵本を読んでくれるんだ。

けど、今お母さんを呼ぶのはいけない事だって。うん、なんとなくわかった。

最初は布団の中で横になって、お母さんと男の影を眺めてたんだ。でも気になって、いつのまにか微妙に開いた障子の隙間から「それ」を見ていた。

二人とも服を着ていない。床にはいつもお父さんとお母さんが寝てる布団。今は仰向けになったお母さんに男が覆いかぶさって、お尻を振ってる。汗だくで一生懸命。二人共、裸で。

ねえ、お母さん。その男は誰なの。気になって目が離せない。

僕はお母さんと知らない男がしている「事」を最後までしっかりと見た。知らない男は、お母さんに紙のお金を渡して、そして、帰っていった。

パンツを履いて、紙のお金を数えるお母さん。豆電球の光でオレンジ色になった、障子の向こうのお母さんは、いつものお母さんじゃない気がした。

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