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吐露

これは初めてお話するんですけど、我が家は村八分にあってたんですよ。仕方ないですよね。僕には目が七つありますから。だって顔に目が七つもある人間がいたら恐ろしいでしょう。

そんな化物、距離を置きたいと思うのが普通ってもんですよ。

三十そこらの世帯が寄り集まる小さな集落でしてね。……隠田集落って知ってます? 合掌造りの屋根が有名な――えぇ、それです。それ。僕、そこに住んでました。

ここと違って豪雪地帯ですから、あそこは。冬はいっとう寒くて、僕の家はすきま風もすごくて。

寝てる時、気づいたら布団が霜でいっぱいになるんですよ。だれがどう見たって修繕が必要な家なんですが、我が家は村八分ですから。手伝いなんか来やしないし、父親はあんなだし。だから布団に霜つけながら寝てたんです。

僕、夏でも長袖着てるでしょう。このクソ暑いのによくそんな格好してられるなって言われるんですが、寒いんです。やっぱり、あのとき凍えて眠ってたのが原因なんですかね。よく知りませんけど。

母親は僕みたいな化物守るのに必死でしたよ。諦めて捨てりゃ良かったのにって今でも思いますけどね。僕なんか養うために夜な夜な隣村の男ども相手に売春してました。

――え? あぁ、だって家で客取ってましたから。そりゃあ、いやでも分かりますって。いえ、小さいころは分かりませんでしたよ。でも成長するにつれて、あぁ、あの光景はそういう事だったのか、って。徐々に納得していった感じですかね。はあ。

それで、何の話でしたっけ。あぁ、そうそう、村八分。といっても、あんまり話す事ないんですけどね。

あの時、集落の人からの嫌がらせがとにかく酷くて。自宅前が死体置き場になったり、日が高いうちに歩いてると汚物を投げられたり、もう散々で。僕がこんな顔だからなんですけどね。

それでーえーと、はい、僕が七つになる直前に夜逃げしました。少ない荷物抱えて。深夜。母親が男と寝て貯めた金で、ここまで来ました。それで今はここに住んでるんです。そこから先は前先生に話した通りです。

時間もきたので帰ります。それじゃあ、また。

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