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乳がん術後のリハビリテーションにおける運動療法の効果

こんばんは。

今日は、乳がんの術後におけるリハビリの論文です。
システマティックレビューになりますので、いろんな論文を統合したものになります。

乳がんの術後は運動をすることはいいのは間違いないと思いますが、それを実証してくれる論文です。


抄読論文

Lin Y, Chen Y, et al.
Effect of exercise on rehabilitation of breast cancer surgery patients: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
Nurs Open. 2023 Apr;10(4):2030-2043.
PMID: 36451034; PubMed. DOI: 10.1002/nop2.1518.
乳がん手術患者のリハビリテーションに対する運動の効果:ランダム化比較試験の系統的レビューとメタ分析
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【乳がん術後のリハビリテーション】

乳がんは新たながんのうち11.6%を占めるとされています。
乳がんの5年生存率は年々増加しており、根治術、化学療法、放射線療法と様々な治療法が行われています。

乳がんの手術は広範囲なものから低侵襲のものへの移行してきています。
しかし、痛みやリンパ浮腫、上肢機能障害といった合併症は常に存在します。

1990年代には乳がん術後にリハビリテーションにより運動療法が使用され、運動が回復に有効であることが証明されています。
現在、リハビリテーションは多様化する一方で、その方法としてレジスタンス運動、肩や肘の運動、リンパドレナージ、有酸素運動、マッサージなどが含まれるようになりました。

それらに対して、様々な有効性の方向があります。
特に有酸素運動の効果は、肩の可動域を改善するといった報告もあり、多く行われています。

米国スポーツ医学会(ACSM)は2010年にがん生存者のための運動ガイドラインの初版の策定を主導しました。

しかし、特定のガンに対する特別な運動処方を定義することはできませんでした。
乳がん患者に対して、運動の有効性と安全性についてはさらに検証する必要があります。
そこで、本研究では乳がん患者の術後の様々な合併症に対する効果的な運動方法を見つけるために、メタ分析を実施しました。

【方法】

本研究には、中国語と英語の論文を対象としています。
P;乳がん術後患者
I;運動介入
C;介入なしや通常のケア等
O;痛み、リンパ浮腫、生活の質、機能
として検索しました。

2069件がスクリーニングされ、最終的に17件の論文が含まれました。

【痛みに対して】


17論文のレビューの結果、有酸素運動が痛みの強度を減少させることが示されました。
運動がエンドルフィンの放出を促進し、痛みの間隔を減少させるメカニズムに注目が集まっており、これらの結果はそれを支持するものとなっています。

一方、筋力トレーニングでは疼痛の軽減には作用しませんでした。

【肩関節の可動域の改善】


有酸素運動と、肩・肘の運動が、肩関節の可動域を改善する効果を示しました。
特に有酸素運動では、肩内旋、屈曲に対して改善効果が大きく示されています。

可動域の改善は患者の自律性と生活の質の向上に寄与します。この研究は、運動が肩関節の機能回復において非常に効果的であることを示しています。

【上肢機能不全の軽減】

有酸素運動によって、上肢機能不全の軽減が図られることも示されました。
有酸素運動が上肢機能にまで影響を及ぼすことは、良い結果としてとらえます。

【リンパ浮腫への影響】


肩と肘の運動はリンパ浮腫の発生率を有意に低下させることが示されました。
これは、特定の運動がリンパの流れを改善し、浮腫を予防するのに役立つ可能性があることを示しています。

一方、リンパ浮腫に関しては、有酸素運動は効果を示さず、直接作用すると思われるリンパドレナージも効果を示しませんでした。
ドレナージによる直接的な作用よりも、肩や肘の運動を組み立て行った方がリンパへは有効であることが示されました。

【臨床的意義】

乳がん術後患者に対する運動プログラムの設計と実施において、具体的なエビデンスを示すこととなりました。

運動が痛みの軽減、肩関節の可動性の改善、上肢機能不全の軽減、リンパ浮腫の予防に有効であることを示します。

この知見は、生活の質の向上と機能回復を促進するための運動介入の重要性を強調しています。
今後、さらにカスタマイズした運動が展開されることを望みます。

【どのように活用するか】

乳がん術後のリハビリテーションはゴールドスタンダードになりつつあります。

一方、入院期間の短さや環境等により、十分にリハビリテーションが提供されていないことも見受けられます。

特に若い女性にとっては、リハビリテーションの重要性が医療側、患者側ともに認識されていない可能性があります。

つまり、術後の肩の可動域制限や体力低下、疼痛などは術後すぐの段階ではマスクされ、退院後徐々に生じてくるものであると思われます。

そのため、入院中に十分かかわることができていなければ、知識として伝達することもできず、リハビリテーションの機会を失っているかもしれません。

有酸素運動を行うこと自体でも疼痛改善や肩の可動域改善など乳がん術後の合併症に対する軽減を図る効果が証明されています。
ぜひ、その認識を患者さんに伝えていくことが重要なのではないでしょうか。

本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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