タピ子_Queen_of_the_Sweets_03

「バイラル・ライバル #01」 タピ子 Queen of the Sweets

目次】【前回

 たうたうと漂う朝もや。その中に奇岩の峰々がうっすらと浮かんでいる。まるで水墨画のような景色の中、静かに、ゆっくりと朝焼けの朱が差していく。それはまるで、染み入るかのように。

 タピ子はカルスト奇岩の上で独りたたずみ、その光景を眺めていた。タピ子は思い浮かべていた。前日の死闘。かき子がその末期に叫んだ言葉を。

『ふっふっ……調子に乗っていられるのも今のうちだ……お前の首を狙い、スイーティア全土から強豪たちが集ってくる……お前の命運が尽きるのも……ぐっ、時間の問題だ!』

※ なお前回の話の中にこのような科白は存在していません。

 タピ子は己の手のひらにもう片方の拳を打ちつけた。パン! 静けさの中、乾いた音が鳴り響く。

「来るなら来い……すべて、返り討ちにするまでだ」

 その瞳には冷たい炎が宿っていた。タピ子は感じていた。スイーティア全土に蠢動する、恐るべき強豪たちの気配を。そして彼らが自分へと向ける凄まじき殺意の渦を!

🍭🍭🍭

 ブォォオン!

 それはまるで旋風であった。凄まじい勢いをのせた回転蹴りが唸りをあげる。抹茶ジェラートのまちゃ葉は己の顎が強烈に撃ち抜かれていることに気がついた。

(バカな……そんな……やつはまだ5メートルは先にいたはず……)

 朦朧とする意識の中でまちゃ葉は見た。涼しく微笑む笑顔。辺りに漂う香ばしい香り。そして──。華麗なる外回し蹴り! さらに踵落とし!

 その蹴り技は美しかった。その一撃一撃は凄まじい熱を帯び、まちゃ葉の冷気を打ち砕いていく──。繰り出される半月蹴り! そして槍のような後ろ蹴り!

「そんなぁ」情けない声をあげてまちゃ葉は吹き飛び、そして絶命した。それを見下ろす短髪の少女。

「まだまだ足りないっ……あたしの熱は。この程度じゃあ抑えきれない!」

 その蹴り技は香ばしく、そしてそのハートは凄まじく熱い。彼女こそはホットク。ホットクのホユン!

🍡🍡🍡

「はー。やってられへんなぁ。流行力(ブームちから)なんて。下品すぎどす」

 その少女は美しい扇子で優雅に口元を隠しながら、心底呆れたように呟いた。まるで舞妓のような姿。その少女の足元には一人の少年が大地に突っ伏すようにして倒れていた。

「そ、そんな……僕の……このロールアイスのロル太の流行力が……まるで通用しないなんて……」

 はぁっ……

 少女はため息をつき、まるで汚物を見るかのようにロル太を見下ろした。

「どいつもこいつも流行力、流行力。ほんまに下品やわぁ」「ぐぇっ」少女はロル太を、その底の分厚い下駄で踏みにじった。

「ええか。ほんまの力は伝統や。変わることのあらへん定番の力。それが真の力や」

 その少女の力の源、それは流行力ではない。常に愛され食べられ続ける定番力(トラディションちから)。それこそが彼女の、その強大な力を産み出す源であった!

「理解できたか? ほな、去ね」

 彼女こそは生八つ橋。生八つ橋のやつ音。

🍬🍬🍬

「えっへへへ……」
「ぎゃぁあああーー!!」

 くるくると回転しながら飛んでいく棒状の物体。それはクレームブリュレのクレ菜の右腕であった。クレ菜は切断面を必死に押さえながら、迫り来る不気味な少女を見た。

 その手には巨大な鉈(なた)。その体はぷるんぷるんしている。

「ちょ、おい、やめろ……やめてくれ!」

 構わず振り下ろされる鉈!

「えいっ!」 ドカッ!
「やぁっ!」 ダンッ!
「えいっ!」 ドカッ!
「それっ!」 ドンッ!
「やぁっ!」 ダンッ!
「やぁっ!」 ダンッ!

「えいっ! えいっ!」 ドカッ! ドカッ!

 クレ菜は

※ あまりにも凄惨なため描写は控えます。

 少女は鉈に付着した体液を舐めながら、頬を上気させ、喘ぐようにして呟いた。

「もっと……もっと楽しみたいですぅ……」

 彼女こそはナタデココ。ナタデココのナタ美!

02に続く

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