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家族グループLINEを退会した正月(12月26日〜1月1日の日記)

■12月26日
 午後から打ち合わせがあるため緊張して早めに起床。打ち合わせは穏便に終わったが、年末年始中にやるべきことや、年明けに始まる怒涛の仕事の展開などを聞かされクラクラしてしまう。思い返せば社会人になってから9年間、なにもない年末年始なんてなかった。何かしら原稿を書いていたり、本の制作が進行していたり。そういう休みなく働くことが当たり前とされる編集という仕事に私は嫌気がさしているんだった。
  今年で最後だと割り切る。来年からは自分のペースで、人と関わらず、静かに、ゆっくり、性に合った仕事をしたい。

■12月27日
 オット氏の年末年始は飲み会続きなので、せめてお昼ごはんくらいは一緒に食べようと今日はカレーつけ麺。昨日年内最後の打ち合わせを終えた私は清々しい気持ち。
 
■12月28日
誘われていた大学の飲み会に行こうか行かまいか1時間ほどウジウジと悩む。全体ラインでの出欠確認の際もビクビクして発言できず、気を遣った主催者から個別に連絡が来てもすぐにYESと言えず、本当に情けない私。決死の覚悟で参加する意思を主催者に伝え、新宿歌舞伎町へ向かう。
  普段酒を飲まない私が、酒がうまいと感じられる瞬間だ。あんなに参加することを躊躇していたのに顔をあわせると楽しい。2杯飲んで、煙草もしこたま吸った。お気に入りのコートが煙草臭くなったが、別にいい。

■12月29日
 脱毛の予約時間を勘違いして、起き抜けのまま吉祥寺へ向かうはめに。人生ベストの胸糞映画は「ダンサー・イン・ザ・ダーク」というおねいさんに脱毛してもらう。映画で許せないことは?という話題で、私は拷問、おねいさんは犬や猫が死ぬ描写だと言った。
  生きている状態で痛いことや苦しいことをし続ける拷問描写は昔から苦手である。一方的に、という構造も嫌いだ。フェアじゃない。いっそひとつきに殺してくれ。真実を吐かせるために拷問は行われるけれど、やり方が強引すぎだ。殺し合いとかは平気なんだけど、拷問は嫌だなー。
  夕方、本日まで上映の「ザ・メニュー」を観る。拷問とは別の怖さの、よくできた映画だった。アニャテイラージョイがかわいい。

■12月30日
 なかなか二人でいる時間がなく、今日やっとオット氏と出かけることができた。吉祥寺(またかよ)に行き、胡椒餅を食べる。「台湾老劉胡椒餅」という店、おいしすぎて仰天したのでお近くの方はぜひ。
  ベトナム料理を昼食で食べたところまではよかったのに、ニトリに行ったとたん喧嘩をしてしまう。私は自分が悪いときでも謝ることが苦手だ。また情けない話になるが、私は子供の頃から他人と喧嘩をしたことがない。譲れない意見でも譲ってきたし、自分が傷ついてその場が収まるのなら迷わずそれを選んできた。31歳の今思うのは、正しく喧嘩をしてくればよかったということだ。だから、謝り方も知らない。「ごめん」と言葉にせず、なぁなぁに流し、しれっと生活を続ける両親のやり方しか知らなかった。
  今からでも正しく生きたい。まっすぐ目を見て、相手の話を遮らぎらず、ごめんなさいと私は言った。

■12月31日
 ファミレスで勉強を昼ごろまでやる。夜は阿佐ヶ谷まで買い物に行き、安売りのお野菜を大量に購入。今年の正月に二キロ太り、そのまま減らせず大晦日を迎えた身としては体重増加を阻止せねばならない。
 オット氏がすき焼きを準備してくれ、紅白はそこそこに「ファンタスティックビースト」の第一作を観る。気づいたら12時を過ぎていた。待ちわびた新年というより、こういう正月を迎えるほうが心地良い。

■1月1日
 昨日の夜中思い立ち、実家の家族ライン(私含め五人)を退会することにした。父や母との関係は快方に向かってはいるものの、“家族”の押し付けが強いそれについに耐えられなくなったのだ。
  突発的な行動ではない。ずっと考えてきたことだ。“男と女のセット”でいる当たり前を賛美されること。“家族が大切で温かい”という価値観を押し付けてくること――どれも私らしくない。むかしもいまも、“家族”はつらい時間だった。父が怒鳴るのに怯えていて、いつも空気が張り詰めていて、ピエロのように“仲良し家族”を振る舞って。
 そういったことを元日の夜中からオット氏に涙ながらに訴えていたら、氏は愛着障害についての本を朝方まで読んでくれていたらしく、今は家族を憎む気持ちを持ったままでいていいと言ってくれた。私が家族という言葉や事象を嫌い、子供をほしくないと願うのは、“家族”に希望を抱けないからである。思えば、オット氏は私に「家族/夫婦になろう」と言ったことはない。
 夕方から富岡八幡宮に初詣に行き、今年は自分らしく生きられますようにと祈った。近くの出店で食べ歩きをして帰宅し食い倒れて眠った。なんだかすがすがしい。

今度一人暮らしするタイミングがあったら猫を飼いますね!!