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カリスマ達の80年代から絶望の10年代、そして希望へ

本稿は、佐々木敦『ニッポンの思想』の紹介解説です! 
本書に基づき、1980年代から2020年代に至る思想の奇跡を上手く抽出した投稿になりますので、良ければおつき合い下さい笑

なお私は1999年生まれですので、ここで紹介されている思想的風潮を実際に見てきたわけではありません!完全に本書に依拠しておりますので、事実と解離する点がございましたら、ご容赦願います💦

目次
・カリスマ達の時代
・三国志の登場
・最強降臨
・絶望の時代
・希望を持つ20年代へ

①カリスマ達の時代

全ての始まりは、1980年代🌳

浅田彰・中沢新一、更には、柄谷行人・蓮實重彦を中心とした「ニュー・アカデミズム」ブームです!

通称、「ニューアカ」と言われるこの社会現象とも呼ぶべき事態は、とある新聞社のミスによってもたらされました笑

何でも出版社の名前を、大手新聞社が誤表記しちゃったんですね〜😅
そして、お詫びに一記事書きますよと!

それで掲載されたのが、『構想と力』の著者、浅田彰だったというわけです👍
大手新聞社の記事に大きく掲載されたので一躍有名人となりましたが、はたしてそれだけで、社会現象にまで上り詰めたのか?

著者の佐々木は、一つ前の70年代がニューアカを準備していたのが相まって、ニューアカブーム生じたと説明しています!(後、浅田の好青年感溢れるヴィジュアル笑)

具体的には、①メディア文化の発展②知的なものの枯渇③フランス現代思想の翻訳が始まる、といった具合です!
(③はなぜフランス現代思想家というと、浅田の『構造と力』がフランス現代思想を扱った書籍だからです)

ちなみに以下で度々登場する「批評」という言葉ですが、批評・思想・哲学の違いは、曖昧と著者は言っており、とりあえず、「深くものごとを考えみること、問いを発して考えること、その原因を考えてみること」と言えます!

さて、色々書きたいことだらけなんですが、20年まで行かなきゃなんで、色々スキップして80年代の特色を言います笑

「戦後はじめて「思想」と「カッコよさ」が結びついたのが、この時代だったのです。」(101頁引用)

僕も、アニメ「PSYCHO-PASS」を見て、「かっこいい!真似しよ!」、となって、思想書を読み始めた口なので、この時代の人達の気持ちには、非常に共感できるものがあります笑

ちなみに、彼らの思想は「内容」がきっちり詰まってるので、そこで登場する思想は難解なものです!(仏現代思想ですから当然です笑)
ただ、その絶妙なムズさがいい味を出していたというわけですね〜笑

②三国志の登場


90年代は何があったか?昭和天皇がお亡くなりになった時代です

それに伴い、大自粛ムードがあったみたいです🤔
よって、天皇制に関する議論がちょくちょく出てくるようになるわけですが、チームニューアカは、そんな自粛ムードに懐疑的です笑
言うなれば、左派的な傾向が少なからずあるわけですね〜🤔

ここで出てくるのが、90年代のポスト・ニューアカである、福田和也・大塚英志・宮台真司の3人!

この3人は、各々が独自の形で、天皇制擁護を掲げます!
(単純な愛国主義者とは異なりますし、擁護の仕方も三者三様で興味深かったです)

80年代は、浅田などの逃走論を筆頭に「理念」を掲げる(それも一種のカッコ良さです)時代でしたが、90年代は、「現に天皇はいる/いた」んだし、「アホばかりいる現実だし」という、「現実」からの出発がひとつの特徴です!

「理念的」か「現実的」かが、80年代と90年代の違いにあると著者は指摘します👍🏻

更に、80年代はその「内容」のムズさ加減で人を魅了した時代だったのに対し、90年代は、週刊誌やテレビ、大量の執筆活動といった「演出」的な部分で人を魅了します!

この、「内容」と「演出」、超キーワードなので覚えといて下さい!

③最強降臨


2000年代に入り、あの浅田彰が「俺の『構造と力』が、これで過去のものになってしまった」と、言わしめる程凄い論文を書いた天才が現れます!

その論文の名は後に『存在論的、郵便的』という本になり、これまたフランス現代思想であるデリダブームを巻き起こします⬆️

そう、東浩紀の登場です‼️
そんな東は、批評的なものが弱体化していっていることに危惧を抱きます…

その批評衰退の原因は、「内容」と「演出」の両極化による棲み分け現象だと東は見ます👀

どういうことか?
「内容」を代表するのは浅田を筆頭としたアカデミズムチーム、そして、「演出」を代表するのは福田を筆頭としたジャーナリズムチーム、これが極端化していってしまい、両者の棲み分けが批評衰退になっとるとのだと言いたいわけです…

内容が良くても演出が皆無だと、誰にも届かない可能性があります…
一方、演出だけだと人には届くかもですが中身は空っぽです…
(これー、我々よく知ってる現象ですよね?)

そして、両者は完全に切り離せるものでは無い、だからこそ、内容に重きをおく!しかし、演出的なものを無視はしない!
という方向性へ東は、舵をきり始めます‼️

この点をしっかり捉えていたからこそ、2000年代は東無双が成立したわけですね〜笑
(ちなみにこの時期、「あの」2人はフランスへ長期留学中です笑)

補足
これは、何も80年代が「内容」だけの時代で、90年代が「演出」だけの時代だったと言っているわけではありません。
80年代はその内容にメディアという演出が絡まってましたし、90年代も演出に偏りがあっただけであって、内容が完全に空っぽというわけではありません。あくまでも、2000年になるにつれて、これが両極化していったということです。

④絶望の時代


さて、東の1人勝ち現象を著者は、良くて悪いと評します笑

つまり、「東がいてくれて良かった!でも、東しかおらんのはヤバい!」こういうわけです笑

そして、その現状は2010年の中頃になっても変わりません…

著者はこの時代、内田樹や中島義道などの哲学者は居たと言うものも、ネットブログやエッセイなどで頭角を表したという意味で、「批評」的なものの次元とは異なる、それにプラスして、知名度も東には劣ると判断して東の一人勝ちと見ます👀(ここは論争ありそうですね)

東の奮闘虚しく、批評・思想・哲学は、地位を下げ続けます…(出版状況がいい例です)

この状況を「おたく/オタク」の例を通して、本書&東は説明しています!

80~90頃の「おたく」には、批評がありました!
例えるなら、岡田斗司夫のような感じのおたく、知性溢れる「おたく」です🤔
(岡田の名は私が例で出したオリジナルで、本書には一瞬だけ出てきます)

しかし、00年以降の「オタク」は、そんな「批評」なんてものは、むしろ邪魔なもので、-対象に対して金だけを投資する-単なる信仰に変わってしまった時代です…

批評が邪魔者扱いされ、狂信が蔓延るばかりの現代…
この指摘にどれだけのダメージを僕が負い、絶望したかは皆さんのご想像お任せします笑

⑤希望を持つ20年代へ


そんなこんなで2020年、主著は10年代に出されたものが多いですが、2000年代にフランスにいた、「あの」2人がついに現れます!

國分功一郎・千葉雅也!!!

彼らの人気っぷりは、いちいちここで書くまでもないでしょう笑

『暇と退屈の倫理学』『中動態の世界』『スピノザ-読む人の肖像』『目的への抵抗』
『勉強の哲学』『メイキングオブ勉強の哲学』『動きすぎてはいけない』『現代思想入門』

売れ行き良好、大賞受賞も数々‼️
それに、東浩紀だってまだ終わってません!

学術雑誌の『ゲンロン戦記』や、最新著作『訂正する力』など、書店で見かける本だらけです笑

まだあります!
80年代のところで紹介した柄谷行人は、バーグルエン哲学・文学賞という世界的な賞を2022年に獲得しましたし、更に最近、浅田彰の『構造と力』が文庫化するという好調っぷり!

これは私のオリジナルの指摘ですが、出版界隈だと「100分de名著」シリーズは、かなり期待できるとも思います!

さて、依然と「批評」の世界が危機的状況なのは、変わりはないと思います。

しかし、これらを見るに希望はまだある!まだ、批評や思想の世界は死んでは、いない!

この事実を胸に、私も引き続きInstagramで、彼らの著書を紹介したりと、批評の灯火を消さない努力をしようと思います‼️

自分のインスタのフォローワーさんには、こういったジャンルの本を主に取り扱ってくれている方が少なからずいます!
是非、一緒に頑張りましょう!

以上、佐々木敦『ニッポンの思想』でした!
興味関心ございましたら、読んでみて下さい笑

コテン@koten.book (古典的名著を面白く普及(@koten.book) • Instagram写真と動画

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