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耳が2つある理由

今回は、耳はどうして2つあるのかという話。眼でもいいのだが。

耳はどうして2つある?バカバカしい問いだと思うだろうか。たしかに、そうかもしれない。知らなくても耳は2つあるのだし、知ったところで耳は3つになったりしない。

それでも気になった人は、続きをどうぞ。


生物のさまざまな特徴は、それぞれの進化の結果なのだが。大前提、進化とは何なのか。

遺伝子(物質ではない)
・生物の体の設計を決める
・そのための情報をもっている
・DNAでできている

核酸
・DNAやRNA
・ヌクレオチドが連結した化合物

DNA(物質)
・デオキシリボ核酸 (Deoxyribonucleic Acid) 
・アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)の4種類の塩基物質の連なり
・アミノ酸を合成してタンパク質として生物の体を作るもの

文字と言葉で言い表すなら、AとPとLとEが並んで、Appleという意味のあるものになるように。

余談
私の大好きな映画『Gattaca』(ガタカ) のタイトルは、GATCを並べたもの。遺伝子の壁を努力で越えていく青年の、限界突破ストーリーだ。

この作品は、ビジュアルもサウンドも、日本人の感性にとてもマッチするものがあると思う。


続き

①デオキシリボ核酸(DNA)という物質は、自分のコピーも作る。たくさん作ると、たまに、エラーを起こす。

②エラー=物質の違いは、情報の違い=違う情報をもつ遺伝子を作り出す。

③遺伝子は、生物の設計を決めるのだから、全く同じ存在ではないものが生まれていく。

変化を進化と呼んでいいのだ。


生物がコピーを作るためには(エラーがコピーではないものも作るが)、活動をする必要がある。

エネルギーを得たり、安全な場所を探したりする必要がある。

それらの活動をするのに、より効率のよい存在と、そうではない存在が出てくる。前述したように、みんなが同じ存在ではないから。

ある遺伝子をもつ個体は、よりうまく空を飛ぶことができ、生き残る。またある遺伝子をもつ個体は、よりうまく水の中を泳ぐことができ、生き残る。

池袋サンシャイン「いきふぉめ〜しょん」より引用

これは、「自然淘汰理論」=ダーウィンのグランド・セオリーの、遺伝子着目バージョンだ。


ここでやっと耳の話。

なぜ耳は2つあるのか。耳だけではない。眼も手足も2つだ。1つしかない鼻にも穴が2つある。

答えは、私たちの体が左右対称にできているから。

実は、左右対称は、とてつもなく長く流行っているトレンドのようなものなのである。

左右対称性の流行はいつからあるのか。

化石で確認できる最初の動物は、ペンディア紀(約6億2000万年前~5億5000万年前)の動物で、これがすでに左右対称のつくりをもっていた。

ありとあらゆる生物で、いつもコピーされ、まれに変化した「左右対称でないもの」は淘汰され、残り続けてきた特徴。左右対称は、生きるのに、大変よいものなのだろう。

左右相称動物

左右対称性は何に利用されるのか。

拍子抜けするほどシンプルだが、動物の動きに使うのだ。

エネルギーを得るために、食べる必要がある。

食べるためには、今いる位置から違う位置へ(いつかは絶対に)行く必要がある。

進む方向は、一方向にまとめた方が効率がよい。

進行方向がとなる。残った方向が後ろとなる。

口は、進行方向(前と呼ぶ)にあると良かろう。目や耳のような周囲の情報をとり入れる器官も、進行方向(前)にあると良かろう。

こうして体に前後が生まれた。

前後の体軸を中心に、左右も生まれた。

左右には対称の形がとられた。※筋肉の収縮などしやすい

全て、「動く」のに効率よくあるためである。

ちなみに。筋肉を収縮するために、センターに棒が要り、できたのが脊椎である。

脊椎動物は大人気の巨大なサークルだ。

2つあること(対であること)は、多くの生物にとって、とても大切なことなのである。

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参考文献 (Works Cited)
George Christopher Williams. “The Pony Fish's Glow: And Other Clues to Plan and Purpose in Nature.” 1997.
Simon Conway Morris. “The Cambrian "Explosion" of Metazoans.” 2003.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/58/3/58_KJ00001457888/_article/-char/ja/