「人は群れをなして発狂するが、ゆっくり一人ずつしか正気を取り戻さない」 チャールズ・マッケイ

「常識とは、18歳までに身についた偏見の集合体である」 アルベルト・アインシュタイン

「あなたが私を軽蔑していることは知っています。言わせてください。それはあなたが私のことを理解していないからです」 エリザベス・ギャスケル

「自分が母親と不仲だったからって、全ての女にその怒りをぶつけないで！」 ドラマ『The Crown』

『The Crown』は、エリザベス２世を題材にした米英共作のドラマ。

その中で。“父の娘” として育ち、父にならうことで社会的に認められてきたサッチャーが、弱さをもつ女性を見下す人物として描かれている。

弱い女性は、彼女にとって、励ましたり支えたりする存在ではなく。諦めて切り捨てるもの（作中の１描写）。

感情はとても大切なものだが。大きなものに取り組む人が私情に支配されていては、全体を俯瞰したよいプランは、組めないのではないか。

我々の毎日は判断や選択の連続だ。
その判断や選択は “正しい” のか。

私たちは、生まれてから今までの経験を通じて、あるものは安全で・快適で・楽しく、またあるものは危険で・不快で・悲しいなどと、覚えていく。

自分の価値観や思想などは、長年の経験から得たものであるからと、強く信頼するようになる。

ピーター・ウェイソン氏は、「ヒトは論理的に推論する」というそれまでの説に、異論を唱えた。（1960年代）

ウェイソン氏の研究から、ヒトには以下の傾向があることがわかった。

・自分の考えに一致する情報を選択
・自分の考えと一致しない情報を拒絶

あらゆるバイアスの母、確証バイアスだ。

確証バイアスには、①意欲的なもの と ②非意欲的なものがあるという。

①維持したい価値観や信念。その欲求に突き動かされ、情報を偏った方法で扱う。
②特に利害関係や個人的関心のない情報でも、偏った方法で扱うことがある。

そして、私たちはいつも、そんな自分に無自覚なのだと。

「２ｰ４ｰ６課題」
２,４,６は何かしらの規則性に従っている。
被験者は３つ１セットの数を他に考える。
実験者にそれが２,４,６と同じ規則性に従っているかいないか質問する。
これを繰り返す。

上の説明が難しい人用
ミルクボーイさんのM１のネタ。
ほな〇〇やないかい・ほな〇〇とちがうか〜
ほな△△やないかい・ほな△△とちがうか〜
これを繰り返す。
お菓子がモナカなのか（246の規則性が何なのか）を探る。

考えた規則性への自信が最高潮に高まった時、答え＝２,４,６の規則性を教えてもらう。

ウェイソン氏が用意した規則性は、左の数より右の数が大きいというだけだった。だが、ほとんどの被験者は、２ずつ足された数が答えだと言った。

被験者たちは、一番最初に自分がアタリをつけたことばかりを試し続けたのだ。彼ら彼女らは、最後まで思いこみを捨てられなかった。

「４枚カード問題」
４枚のカードがある。
片面には数字、もう片面には赤色か茶色。

「カードの片面が偶数なら裏面が赤」これを証明するには、どの２枚をひっくり返すべきか？

多くの被験者が、偶数と赤だと回答。「カードの片面が偶数なら裏面は赤」これを証明する情報を集めようとしたのだ。

実際は、「カードの片面が偶数なら裏面は赤」の誤りを証明する、反証情報「カードの片面が偶数 かつ 裏面は茶（赤ではない）」がないかを確認せねばならない。ひっくり返さねばならないのは、偶数と茶だ。

このウェイソン選択課題（４枚カード問題）も、正答率は10％にも満たなかった。

バイアスを克服できる存在に成長する人は、ほとんどいないというのだろうかーー

【if】にあわせた
モーダスポネンス：肯定によって肯定する様式 
モーダストレンス： 否定によって肯定する様式
の２択ですら適切に選べていない。

人間の脳は、毎日、膨大な量の情報を処理している。

絶え間ないインプットを処理する方法の一つが、ヒューリスティック・アプローチである。（経験則とほぼ同意語）

意思決定において、論理で確認しながら判断するのではなく、直感から素早く判断すること。いわば、ショート・カットだ。

これは、生きるのにとても大切なことであるどころか、必要不可欠なことだ。

“test them all; hold on to what is good,”
（1 Thessalonians 5:21）
「それら全てをテストし、善いものを守りなさい」
（テサロニケ人への手紙 第一 5章21節）

聖書には、時代を超えて大切にされるべき基礎的な教えが、たくさん書かれている。

簡単にできることではない。

他の誰でもない自分自身の経験則、かけがえのない思い出とリンクする感情、やっとたどり着いたと思った “真実の” 〇〇、既知であるからショート・カットせよという脳の信号……

これらに抗うことは、誰にとっても、難しい。

それでも。諦めて努力をしなければ、10％をさらに下回ってしまうかもしれない。＝ がんばり続ければ、20％にできるかもしれない。

自分の感情をないがしろにしてもいけない。
喜怒哀楽に身を任せすぎてもいけない。

ノイジーなメディアなどが邪魔をしてくる。
かと言ってそれを断捨離しすぎるのも違う。

これら全てその逆でもいいのかもしれない。

自らに偏見があることを自覚するのは、はじまりにすぎない。誤りを特定し、必要な分だけ変更を加えられるようになるには、時間と努力が必要。能力や精神力を養うには、鍛錬が必要。