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身体的に効率的な走り方を考えてみる

はじめに

先日、気のおけない友人との飲み会の中で、近況報告としてフルマラソンを目指して走り込みをしているって話がありました。
で、運動を科学的にみるのが仕事である理学療法士として「身体的に効率的な走り方ってどんなんかしら…」って思いましたので、フルマラソンを走ったときの経験を踏まえて、平地走行に関して書いてみたいと思います。

長距離を疲れずに走るために…

まずはフルマラソンって42.195㎞を自分の脚で移動するって事です。単純に歩幅が1mだとして、42,195歩になります。正直メチャクチャ疲れますし、脚の筋肉がボロボロになります。歩いて40㎞移動するってだけでも脚の筋肉がボロボロになるのに、走るとなると1歩1歩の脚への衝撃がさらに大きくなるワケですから、筋肉の負担を最小限にしたいですよね。
じゃ、どうするのか?って事ですが、私が考えるに地面をあまり蹴らないで走るのが良いのではないかと考えます。
蹴らないで走るってどういう事?ってなるかもしれませんね。
蹴らないで走るってのは、前方に向かって足で身体を押し出すのではなく、前進する力は「地球の力」、重力を最大限利用しようって考え方です。
というのは、真っ直ぐに立った状態から前方へ倒れていく時に、ある角度を超えたらどちらかの足を1歩前に踏み出して倒れないようにするはずです。この人間本来の反応を利用して次々と足を前に踏み出していく、さらにココでリズムよく片足ずつ動かしちゃう反射があったりするので、うまくこれらをつないでいけば、無理に足で蹴りだして身体を前方に押し出していかなくても必要最小限の力で身体は前方に移動していくってカラクリです。どこで「地球の力」を使っているかというと、前に倒れていくところですよ。
ただし、前に倒れていくって事は、接地している側の足首を軸とした倒立振子モデル(振り子がひっくり返ったモノ)を仮定すると、前方への移動距離を増やすためには倒れる角度が大きくなり、同時に高さが低くなってしまいます。「エネルギー保存の法則」のところで勉強したアレです、運動エネルギー位置エネルギーの変換の奴ですね。ということは、前に進めば進むほど重心位置が低くなってしまうって事なので、高さをキープするために着地した足で重心を元の高さに戻すことが必要になります。これってより速く走るためには高さを維持する力が大きく必要になりますよって事になりますね。自分の脚力とスピードのバランスする前傾角度を体得することが必要になります。ちょっと前傾するだけで想像以上に前に進んでいくので、欲張らないのがコツかと思います。

さらに着地位置も重要

「地球の力」を利用して作った前進する力ですが、踏み出した足の着地位置によってはロスが生じてしまう事が考えられます。
どんな場合かというと、重心位置よりも前方に着地する場合です。
ココでまた倒立振子モデルの登場です。重心位置よりも前に足が着地するということは、体幹に対して着地している下肢は前方に振り出されている状態です、股関節が前に曲がっている状態と言えばよいでしょうか。ということは、振子は後ろに倒れているワケです。この状態から振子が前に移動していくとすると、1度垂直な状態(最も高い位置)を経過して前に倒れていくという事です。つまり、前方への運動エネルギーを、位置エネルギーに変換してしまう事になるワケです。その間走っている速度は低下します。そのまま何も考えないで前に倒れていけば大きなロスではないのですが、気持ち的には速度が落ちると戻したくなるものです。で、足で蹴る結果になる…。ヒトの気持ちは厄介ですな…。
位置エネルギーの問題よりももっと深刻なのは、重心位置よりも前方に着地した場合に、着地した下肢の前側の筋肉(大腿四頭筋、前脛骨筋)などが、反射的に筋収縮を起こして、身体の前方への動きを止めるように作用してしまう事です。接地点より重心位置が後ろにあるって事は、後ろに倒れちゃうって事なんで、身体は自動的に前側の筋肉を働かせてバランスを取ろうとしちゃうワケですな。わざわざブレーキをかけて、さらに筋疲労まで起っちゃうなんて無駄の極みです。
ということで、着地位置を身体重心の真下にできると効率的な走りになるんじゃないかと思います。
ちなみに着地位置の後方化が起こると、自然と踵での着地ではなく足底全面、もしくは前足部(母子球あたり)での着地になっていきます。
が、これがホントにきついです。最初はヒラメ筋が悲鳴をあげます。まぁ、慣れたら膝の故障が一切なくなります。

姿勢も大事

ここまでは、動的な部分の話しでしたが、効率的に身体を動かすには、その動きを支える姿勢がものすごく大事だという事を経験されている方々も多くいるのではないでしょうか。今回の身体を前に倒すことによる「地球の力」を利用した前進力獲得にあたっても、身体を前に倒していく際に体幹を真っ直ぐに保つ事が求められます。そうじゃないと「地球の力」が逃げていってしまいます。「作用反作用の法則」ってのがあったような気がしますが、何かに力を加えると同じ分だけ跳ね返ってくるっていうアレです。ということは、地面を押した力を身体を押し上げる力に変換する際にどこかの関節が動いてしまうと、力が逃げちゃうって事です。どうせなら無駄は起こって欲しくないですよね、なにしろ42㎞の移動って一般人にとったら限界に近い運動だと思いますから…。

おわりに

結構な分量で書いてきましたが、ココで書いたことってひと昔前の考え方かもしれません。なにしろ5年くらい前にベアフットランニングが流行ったとき以来、知識のブラッシュアップできてない感じですから…。
改めていろいろ読んでみようと思いました。
とはいえクリストファー・マクドゥーガルさんの『Born to Run 走るために生まれた』は一読することをお勧めします。

まとめ

先輩の言葉ですが、フルマラソン完走って、一生のうちにやっておきたいことの1つだよね。
ってこと。

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