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言い続けると、ブランドになる。

言い続けると、ブランドになる。
 
ウォークマンが誕生するずっと前、ソニーがまだ東京通信工業という社名だったとき、日本で最初のテープレコーダーが誕生した。発明品としては画期的で大きな話題を読んだが、重さはなんと35kg、痩せ型の成人女性の体重にもありそうな重さである。価格も16万円と当時の物価を考えるとかなりの高額であった。そのため、まったく売れなかった。
 
ソニーの創業者の一人、井深大は一つのことを言い続けた。
 
もっと小さくできないか?
 
この言葉に応えるようにテープレコーダーの研究は続けられ、とうとう1979年ウォークマンが世に登場する。手のひらサイズの再生専用ステレオカセットプレイヤーで、重量はわずか390g、価格は3万3,000円。ターゲットは音楽を一日中聴くのが好きな若者だ。

録音機能のないテープレコーダーなんて売れるわけがないと市場の反応は悪かった。それでも若者に影響力のある有名人に使ってもらったり、歩行者天国で視聴を繰り返したりすることで、若者デパートの象徴だった丸井が動いた。まだ誰もが否定的だったときに1万台を発注したのだ。それから驚くべきスピードで若者に広まった。生産が追いつかない状態が半年以上続いた。
 
その後、ウォークマンは海を越えて世界に広がって行く。
 
「もっと小さくできないか」
 
この言葉の先にウォークマンはあり、ソニーはいつしか「小型化」がコアコンピタンスだと言われるようになった。
 
コアコンピタンスとは、
 
「顧客に対して、他社には提供できないような利益もたらすことのできる、企業内部に秘められた独自のスキルや技術の集合体」
 
だと創案者のゲイリー・ハメルとC・K・プラハラードは定義している。
 
コアコンピタンスが強力であればあるほど、他社には真似のできない独自性があることになり、強いブランドになることができる。まさにソニーの小型化がそうであったように。
 
ソニーのコアコンピタンスは、コアコンピタンスになるものを産もうとして社内委員会などで実施されてできたものではない。
 
「もっと小さくできないか」
 
この言葉が生き続けてきたことによって生まれたものだ。井深がどのような戦略を持って、言い続けてきたかはわからないが、最初の失敗からあくなき開発努力を行うことで、言葉は現実のものとなり、大ヒットを生み出した。
 
言い続けると、ブランドになる。


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