「書くことがない」から書かれたことば
「書くことがない」から始まる記事を見かけると、思わず手にとってしまう。
役に立つこと、伝えたい気持ちに溢れたものがたくさんあるなかで、特別なんでもないようなことや、ふだんは言わないようなことが、つらつらと書かれていると、なんだか、ほっとする。
「いつもみたいには張り詰めてません」って、正直さがにじんでたり。
短く切り上げるはずだったのが、思いもよらず湿っぽくなったりして。
とりとめもなく、緩んだひものように伸びてしまったりする。
(またいつか、きれいな水彩画を描いたり、やわらかいセーターを編むことに繋がっていくのだと思う。でも、それはそれとして。)
「書くことがない」けれど書かれたことばには、書いた人のそのままが、聞こえるような気がするのだ。
建物の裏口から外に出たときの。
エレベーターから降りて、誰もいない廊下を歩いているときの。
ため息や、深呼吸のように。