見出し画像

「教えないスキル」とは?これからの時代に必要な力を伸ばす

サッカー日本代表の期待の若手、久保建英選手が移籍したことでも話題になった(またすぐ移籍してしまいましたが)スペインのサッカークラブ「ビジャレアル」。

この本は、そのクラブで幼少期〜高校生年代の若い選手たちの育成に関わり、現在はJリーグの常勤理事を務める佐伯夕利子さんが書かれたものです。この「ビジャレアル」の選手育成のための指導で大事にされていることが「教えないスキル」です。

「教えないスキル」とは、選手に「答え」を教えるのではなく「問い」を投げかけることで「考えるクセ」をつけてもらい、予測できない状況でも自分で判断できる選手に成長してもらうための指導方法です。

なぜ「教えないスキル」を大切にしているのか。本の中に、次のような言葉がありました。

「フットボールは、想定していた現象が起きる可能性が圧倒的に低いスポーツであり、教え込みの指導はまったく意味を持たなくなる」

この文章は、作者がなぜサッカーにおいてこの「教えないスキル」が大切だと話すのか、その目的をとてもよく表しています。

しかしよく考えると、これってサッカーだけの話ではないですよね。

新型コロナウイルスがここまで世界的な驚異になるなんて、1年前までは誰も思ってもいなかった。私たちが生きる世界もまさに、変化の激しい「想定していた現象が起きる可能性が圧倒的に低い」時代です。

だからこそ「教えないスキル」はサッカーだけでなく、これからの時代を生きる私たちにも必要なスキルである。そう強く思いました。

そこで今回は、本に書かれていた「教えないスキル」について、皆さんにも伝えたいと思います。

「答え」を教えるのではなく「問い」を投げる

スポーツの指導というと、コーチや監督が選手にスキルを教えこむというイメージを持つ方が多いと思います。

しかし「ビジャレアル」というクラブでは、「答え」を教えこむのではなく、「問い」を投げかけることを大切にしているのです。

「左に味方がいるからそっちにパスを出しなさい」
ではなく、

「今、どうして右にパスを出したのかな?」
と問いかける。

すると選手たちは自分なりの言葉で、考えを表現するようになります。

「問い」を投げることを繰り返すことで、選手たちに「考えるクセ」をつけてもらうことを最優先のゴールにしているのです。

教え込む指導で育った選手は、想定していないことが起こるとパニックになってしまいます。

しかし、サッカーでは想定外のことが頻繁に起こる。そのため、どんな想定外の状況でも自分で判断する力を育てることが必要なのです。

これはサッカーだけではなく、教育やビジネスの世界で人を育てる時にも大切にすべき考え方だと思います。

常に相手に「問い」を投げかけることを意識すれば、これからの予測困難な時代を生き抜く力を身につけてもらえるのではないでしょうか。

「問い」を投げる時の3つのポイント

皆さんにもぜひ「問い」を投げかけることを実践していただきたいので、3つの意識すべきポイントを紹介します。

①「オープンクエスチョン」を心がける

YESかNOで答える「クローズドクエスチョン」では、質問者側がすでに正解を持っており、主導権を握っている問いになってしまいます。なので「どうして?」「どのように?」といったYESやNOだけでは答えられない、回答者側に主導権がある問いをなげることが大切です。

②「何を言っても、何をやっても、受け入れてもらえる」安心安全な環境を作る

「どうして?」と聞かれる=怒られる、と相手が思ってしまう環境では、誰も本音を表現することはできません。相手の考えを本当に知りたいと思っていることを、普段のコミュニケーションから伝えていき、安心安全な環境を作ることが大切です。

③「問い」を使ったポジティブなフィードバック

「問い」に答えてくれたことに、「なるほど。そんな見方や方法は自分には思いつかなかったしできなかったな」といったフィードバックを行う。こういったやり取りを通して相手に「自分は認められている、意見を聞き入れてもらえている」と感じてもらうことで、答えた側のモチベーションが大きく高まります。

著者の佐伯さんも、指導方法を変え始めた最初のころは、選手たちも身構えて中々うまくいかなかったと話しています。しかし、「問い」を投げる大切さを意識し、根気をもって続けることで少しずつ選手たちにもポジティブ変化が見えはじめたそうです。

今では3歳児のクラスの練習でもこの「問い」をなげる指導法が浸透しているそうで、年代を問わず意義のあるスキルだということがわかります。

教育の変化でサッカー界も変わる

佐伯さんは本の中で、「アスリートが育つのは学校の教室から」だと考えていると言っています。教室で学ぶことが選手それぞれの人格の形成に大きな影響を与えると感じたからだそうです。

スペインの小学生たちは、それが「正解」かどうかに関わらず、必ず自分なりの意見をきちんと説明してくれるそうです。
これは、普段の学校教育でも自分の意見を表現する機会が多くあるということが影響しているのではないかと佐伯さんは言っています。

そう考えると、教育界の変化は間接的にサッカー界への貢献につながるのではないかと思い、サッカー好きな僕としてはとてもワクワクします。

実際この本に書かれていることは、子どもを主体にするこれからの教育の目指したい方向性と重なることばかりです。例えば、

「指導者は、選手の学びの機会を創出するファシリテーター(潤滑油)に過ぎない」
「何を言っても、何をやっても、受け入れてもらえる安心安全な環境でこそ、選手たちは成長できる」


などなど、教育の分野でも聴いたことあるぞ、という言葉がたくさんありました。うまく進んでいけば、きっとサッカー界にもどんどん良い変化が現れると私も信じています。

「教えないスキル」でポジティブな変化を

先ほど、教育が変わればサッカー界にも良い影響があるのではないかと話しました。

しかしこれは、決して教育とサッカー界だけの話ではないはずです。

この記事を読んでくださった皆さんが「問い」を投げかけることを意識し、皆さんが関わる方々に少しでも影響をひろげることで、
間接的に様々な分野にポジティブな変化を与えることになれば良いなと思っています。

この記事が参加している募集

読書感想文

最近の学び

読んでくださりありがとうございました😊 ほんの1ミリでも良いので、あなたの行動や考えに影響があれば嬉しいです。