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組織の縦割りの原因は文化のせい?人事制度のせい?

組織や企業が成長して大きくなった際に必ずと言っていいほど発生するのが縦割り/セクショナリズム/サイロ化です。組織の変革をする際に、課題としてよく取り上げられるのが、この「縦割り」の解消です。別々に動いているバラバラな組織を統合し、ひとつの組織 (One Organization) として動くようにすることです。縦割りが起こる原因についてはいくつかの要因が考えられますが、どのように解きほぐしていけばいいのでしょうか。私が過去、そして現在取り組んでいる改革の経験から感じていることをまとめてみました。

縦割りはなぜ生まれる?

人は3人集まれば派閥ができる

まず根底にあるのは、人には好き嫌いがあるということです。どんなに社会人としての常識を兼ね備えている人でも、どんなに人格者だと言われている人にも、得意な人と苦手な人とがいます。

自分の他に2人いると、必ず「より付き合いやすい人」「より付き合いにくい人」といった順位が付きます。これが「派閥」につながっていきます。つまり「人は3人集まれば派閥ができる」という習性が元々あります。

組織が大きくなっていくと、より付き合いやすい人同士で人が固まる傾向が出来上がり、派閥の間での交流が希薄になりがちです。

競争が縦割りを生む

大抵の組織や企業では、従業員の成果について成績をつけているでしょう。人間の心理としては評価で差が付く場合には、他人よりもよくありたいという心理が働きます。

私が見るところ、これは成果主義になっているかどうか、成績の結果が給料に反映されるかどうかに関わらず発生します。つまりは、完全な共産主義的な仕組みにでもなっていない限り、人と人の間には競争が発生し、その結果、自分が上にいって他人を排除しよう、他人には自分が持っている人、モノ、カネ、情報は分け与えないようにといった心理が働きます。

希薄な人材交流の影響

組織や部門間の異動が少なく同じ人が同じ業務を長期間実施している場合、業界標準の方法とは異なる方法で業務が属人化して新しい変化をしなくても現状維持で業務を行えるようになっていきます。そうすると組織の外側からは何がどうなっているのかがわかりにくくなります。

特に企業規模が大きい場合、ひとつの業務を複数の組織で細分化して行っている場合がありますが、それらの組織間での人材交流がない場合、お互いがやっている事に関心をもたなくなることで自分の守備範囲以外は他人任せとなり、本来連携が必要な場合でも見過ごされてしまう場合があります。

また、お互いの組織/部門では相手の考え方が理解できずに様々な妄想・摩擦を生むことになります。

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無意識の「サイロ化」

最後に、今までに出てきた要素の他に無意識に起こる情報共有のサイロ化があります。人は特に悪気がなくても普段から必要以上に広い範囲に意識的に情報共有をしようとはしない人が多いです。情報が入ったメール、関係者で設定される会議など、発信者が必要だと思う範囲の外側に本来それを必要としている人がいる場合も多く、情報共有の機会損失が起こります。

また、情報共有ツールの既定のアクセス権設定が狭く限定されている場合も、アクセス権が設定されていない人にはその情報が届く術がありません。

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カルチャー変革が先か、人事制度改革が先か?

さて、この縦割り/セクショナリズム/サイロ化を解消するには、既出の要素の原因を潰していくことが必要になります。ただし、手をつけるにも簡単なものから難しいものまで様々なレベルのものが存在します。

以下は、私自身が変革の推進を体験してみての、または変革される側を体験してみてのおすすめの順番について述べます。

まずはできるところから「火を付ける」

まず、比較的手がつけやすいことから手を付け始めるのが良いでしょう。トップダウンで「何が重要であるか」「どうして重要であるか」という価値観について一貫したコミュニケーションを行うことが必要です。そして変革が必要であることのWhyとWhatの質問に答えていきます。同時に、一方通行のコミュニケーションにとどまらず、メッセージを聞いた結果、従業員がどう思ったかを吸い上げるフィードバックの会を実行しましょう。

これにより、従業員の中で変革に賛同してくれるアーリーアダプターを見つけ、彼らの使命感に火をつけて草の根で広げていくことが可能になります。アーリーアダプターには常に変革を行うための情報を提供して積極的に動いてもらうことで、組織/部門の垣根を超えた横串の活動をバーチャルチーム (仮想組織) で組織していくと良いでしょう。

ただし、縦割りの組織で過ごしてきた人にとっては、バーチャルチームという概念は受け入れるのに少々時間がかかる可能性があります。組織の上長による指示系統以外で複数の組織に共通する目的を達成できるようにするための目標設定と、高い使命感/モチベーションを持った人を配置することが必要となってきます。

また、これを行うには変革を行う組織のトップが変革の実行にコミットしていることが必要となります。逆にトップが変わらないという意思を持っている場合は変革が難しくなってしまいます。そのため、組織/企業として一番最初にやるべきことは、変革にコミットする組織長を配置することです。

人、モノ、カネ、情報の掌握は大事

合わせて、組織の中の人のモチベーションを動かす源泉である人、モノ、カネ、情報の動きを早めに掌握する必要があります。これらは既得権益の代表的なものであり、これらを持てるかどうかで組織内の分断/対立が起こるためです。

既存のルールを廃止して、組織内でこれらを再配分するための新しいルールを作ります。配分にあたっては、ボトムアップで決めていくというよりは、組織変革の優先度に従ってトップダウンで決めていくことで、組織間の分断/対立の力学を最小化します。

人事制度には手を入れながら走る

ここまではあえて人事制度には触れずに来ましたが、大抵は既出のことをうまく実施しても越えられない壁が現れます。最終的には組織/企業の優先度付けは人事制度の中に埋め込まれているためです。

たとえば、営業組織であればたくさん売上を上げれば評価が上がる、製品開発部門であれば、質の高い製品をスケジュール通りに出荷できれば評価が上がる、といった具合に人事制度は設計されています。

そして、異なる組織やロールでは異なる人事評価制度により異なる優先度が設定されていますが、一見両者に矛盾がなかったとしても、論理的に優先度を紐解いていくと優先度に違いが出る場合があります。

そうすると、「相手の組織はこちらの優先事項を実行してくれない」といったことが発生します。これを解消するには、人の評価のされ方を変更する必要があります。

従来のやり方である、直属の上司が部下を評価するだけの方法だと、部下は上司以外の人の言うことを聞かなくなります。部下が同僚やステークホルダーなどの関係者ともうまく協調できるようにするためには、部下が上司の他の関係者からも評価を受ける仕組みが必要です。同時に関係者に貢献することを評価したり表彰する仕組みも必要になってきます。

メインストリームの製品なので売上を重視するとか、新商品なので受注規模よりも受注数を重視するとか、特定の製品の成績を倍にするとか、人事制度をいじることで従業員の動き方を変えることも可能です。

また、仕事の属人化や責任範囲の不明確化による課題を克服するために、ジョブ型制度への転換による人材のプロ化/責任範囲の明確化が必要な場合もあります。

以下に、人事制度変革の代表的な取り組み例を挙げます。

● メンバーシップ型からジョブ型制度への転換によるプロ化/責任範囲の明確化
● 360度人事評価の導入、同僚や斜め上の上司、部下、顧客からの評価
● 短期目標だけに縛られない中長期目標の設定
● 組織全体の共通目標のカスケード
● 他人の役に立ったことを評価する制度、表彰制度 
● 特定商品への販売インセンティブの追加

ただし、自分の組織にとってどの改革が必要かどうかは最初からは分かりづらいものです。人事制度は従業員の入社から退職までの長期間のライフサイクルを支援する仕組みでもあるため、あまり気軽に変更できないのも事実であります。まずは人事制度を変えなくてもできる変革を実施して人事制度に関する課題をあぶり出し、走りながら人事制度にも手を付けていくといった順番が好ましいのではないかと思います。

人材流動性にも気をかける

最後に、組織変革を行い縦割り/セクショナリズム/サイロ化を打破するためには、組織/企業内外で様々な経験を持った人の知見が必要になります。そのため、関係他部門や社外から人を採用する、もしくは逆に人を送り出す、といったことを行い人材流動性を高めることで相互理解を促進することも重要です。人材流動性が高まりいろいろな経験を持った人々が集まることで、固定概念を打破することが可能になります。

最後までお読み頂きありがとうございました。
それではまた!

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