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時々、疲れる読書がしたくなる話

 Reader's High


 高校から大学の頃、けっこうハマって読み漁っていたのは、通称 "W村上" と言われていた”村上春樹”さんと”村上龍”さんでした。
 春樹さんの方は、けっこう"note"して来たので、今回は、”村上龍”さんを取り上げようと思います。


*  *  *  *  *


 私は基本的に長編小説を好む傾向があって、これでもか、これでもかと頁をめくり読み上げていく過程に、アスリート的な達成感を感じる人間だったりするのですが、

 そんな私でも、読むとすごく疲れるタイプの作家さんがいて、その代表が "村上龍" さんなのです。


 昔の"村上龍" さんって、段落が途切れないまま数頁連続することが通常で、情報量が多いんですよね~

 だから、他の作家さんに比べると頁あたりの文字量が半端じゃない!

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詰まってると思いませんか?!


 こんなページが連続するので、読むのに時間がかかるし、けっこう疲れるんです。
 だから、 "村上龍" さんの小説は頭脳体力がないと読めないと思います。


 最近は、頭脳体力の衰えとともに、それほど頻繁に読むことはなくなってしまった"村上龍" さんの小説ですが、やっぱり時々読みたくなったりするのが不思議なのです。


 そんな私が何度も読みなおしているのが『コインロッカー・ベイビーズ』です。

 時々、読みたくなるんですよね____


1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。母親を探して九州の孤島から消えたハシを追い、東京へとやって来たキクは、鰐のガリバーと暮らすアネモネに出会う。キクは小笠原の深海に眠るダチュラの力で街を破壊し、絶対の解放を希求する。


 まあ、やっぱり読みにくいし、そのテーマも重く、読むとへとへとになったりするんです。

 でも、物語のエネルギーみたいなのを感じさせてくれて、体は疲れるけど、何か興奮させられるものがあるのも事実です。


"村上龍" さんの小説って、ランナーズハイに似た効果をもたらすんじゃないかと........本気でそう思っています。



 『愛と幻想のファシズム』や『半島を出よ』みたいに、世界のシステムに関して膨大な資料を基に描かれたやつも、同じくランナーズハイが味わえます。

激動する1990年、世界経済は恐慌へ突入。日本は未曽有の危機を迎えた。サバイバリスト鈴原冬二をカリスマとする政治結社「狩猟社」のもとには、日本を代表する学者、官僚、そしてテロリストが結集。人々は彼らをファシストと呼んだが…。

 "村上龍" さんの小説は強いナショナリズムを感じさせるものがありますが、この作品は、きっと、その頂点にあたるでしょうね。
 実は、主人公たちの構図は変わりません。


二〇一一年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに二時間後に、約五百名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。

 

 上記2作も情報量が多いので、かなり疲れます。

 ただ、読みにくいけど、面白いので、読書のランナーズハイを味わうのには適してると思いますので、ぜひ!


*  *  *  *  *


 海外の作品でも、"村上龍" さんの小説のようにランナーズハイを感じることのできるものがありますので、自分のお薦めを紹介します。


『百年の孤独』ガルシア=マルケス

 あえて、あらすじは載せませんが、これもパワーのある作品です。
 正直、読み始めてみると、「何じゃこら」って感じなのですが、読めば読むほど泥沼に引き込まれてしまう物語です。

 面白いのか面白くないかの判断は難しいのですが、とにかくエネルギーの放射具合がすごいのです。


『充たされざる者』カズオ イシグロ

世界的ピアニストのライダーは、あるヨーロッパの町に降り立った。「木曜の夕べ」という催しで演奏する予定のようだが、日程や演目さえ彼には定かでない。ただ、演奏会は町の「危機」を乗り越えるための最後の望みのようで、一部市民の期待は限りなく高い。ライダーはそれとなく詳細を探るが、奇妙な相談をもちかける市民たちが次々と邪魔に入り…。

 これもまた訳のわからない作品で、タイトル通り”充たされない”状況が延々と1000頁ほど続きます。
 読むと、段々、腹が立ってくるんですよね。

 とにかく、物語が激しく迷いこむ作品で、読者の立ち位置も不安定になる作品です。
 気を付けないと、ランナーズハイよりも、眩暈や吐き気を覚えるほどなんで、体力に自信がある方にお薦めです。



 期せずして、ノーベル文学賞作家さんの作品紹介になりましたが、疲れる読書って、ほんとに疲れるので、多用する場合は、間隔を空けながら行うようにしてください!