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デザインの物語。なぜ透明なコントローラーを作ったのか。

みなさん、初めまして。かぬと申します。かぬコンがなぜ透明感のあるデザインになったのか、その物語について記事にしました。かぬコンも作り始めて7ヶ月近くが経ち、基板設計やソフトウェア開発なども、少しずつ慣れてきました。最近は、スマブラ用のレバーレスコントローラーやPhob、ProGCCなどカスタムコントローラーに取り組む人が増えてきたように思います。そこで、私がかぬコンを作るときに、なぜ透明なコントローラーを作ることになったのか、その時に意識したポイントについてご紹介しようと思います。この記事を書くことによって、コントローラーなどのプロダクトを使うときや、かぬコンを使ってくださっているかたがいつもと違った見方で楽しめるようになれば嬉しいです。マニアックな表現や専門的な用語がでてくるかもしれません。その際は、参考にあげた記事やわからない言葉を検索してください。まず、透明なコントローラーを作ろうと思っていたかというとそうではありません。

小さすぎる!?コントローラー

かぬコンは、2022年の秋頃から制作を始めました。最初の頃は、使いやすさを考えた上で、最も小さいコントローラーを目指して開発を進めていました。Nintendo Switchよりも少し小さいコントローラーを目指し、いくつかの試作を行いました。そこから、どういった経緯で透明なコントローラーを作ることになったのかについてお話しします。2023年の初めに、オフライン大会のウメブラに出場することにしました。かぬコンの操作にも慣れてきた時期なので、オフラインで実力を試したいと思い参加しました。オフラインの大会では、会場に並んだ長机の上に、それぞれの対戦で使うモニターが並んでいます。一つのモニターを2人でみながら対戦する形式が一般的です。自宅でプレイする時のように、机の上にコントローラーを置くためには、奥行きがほとんどないので、コントローラーは膝の上に置いてプレイする必要があります。そこで、小さいコントローラーを目指して作られたかぬコンは、膝の上に置いてプレイするには小さすぎました。

かぬコン ver.1.3 はじめてオフライン大会で使用したコントローラー。
かぬコン ver.1.3 Joyコンを外したSwitchとほぼ同じ大きさ。

オフラインで活躍するコントローラーを目指して

ウメブラに参加して気づいたことや考えたことをもとにして、オフラインでも自宅でも使いやすいコントローラーを目指すことにしました。膝の上で置いて快適にプレイができ、机の上に置いても邪魔にならないちょうど良い大きさを検討し始めました。すでに多くの方に利用されているSmashBoxやPunkWorkshopなど、様々なコントローラーの大きさを調べ、実際にその大きさを簡単な模型を作り使い心地を体験してみました。その結果生まれたのが、A4サイズのかぬコンver.1.4である。ケースはこれまで使用していた3Dプリントで出力するには、少し大きいので価格も高くなってしまいます。そこで、アクリルをレーザーカットしたケースにすることにしました。次に基板の大きさについて説明します。かぬコンver.1.4において、現在の形に至るために必要なアイデアが生まれました。これまでは、最小のコントローラーを目指していたため、ケースを小さくするために、キースイッチの配置やボタンの大きさなどを、使いやすさや強度を考慮した上で、最低限必要な寸法で作っていました。しかし、ケースがこれまでよりも大きくなり、配線や部品配置の自由度がとても高くなりました。そこで、部品の配置や配線に必要なスペースを除いて、余分なスペースを全てカットすることにしました。そうすることで、アクリルの透明感を活かした、背面まで透けたコントローラーが生まれました。

かぬコン ver.1.4 オフライン大会を意識して作った最初のコントローラー

嬉しい反響や友人の声

かぬコンver.1.4の完成した写真をSNSに投稿しました。それをみてくれた友人やSNS上で、透明で基板が見えていてカッコいいなどのコメントをいただくことが出来ました。こういった、客観的な意見や感想をいただき、それを製品にフィードバックできることが、個人で制作を行なっていることの最大のメリットだと感じました。大量に生産が必要なプロダクトや建築などは、製品を作った後に得られるフィードバックを、製品に反映することが難しいです。それは、価格の高い金型などを作る必要があったり、住宅などは完成した後で住むことになるので、フィードバックを得る頃には、プロジェクトが終了しています。個人での製作は、小ロットで生産ができ、バージョンごとに仕様を変更することが可能なので、必要なものや使い勝手を反映した製品にすることが可能です。

透明感を出すための工夫や思い

私のデザインをするときのコンセプトに、必要最小限の寸法で作るということがあります。そこで、基板は配線が最も多く通る部分の寸法を最小の幅に設定し、部品のフットプリントの大きさや、基板自体の強度を考慮し、できる限り小さい面積になるように形状を最適化しました。前回の記事で、ディテールを考える時に、兼ねるを意識していると書きました。基板を支持したり、配線やキースイッチを設置するために必要なスペース以外の、機能をもっていないスペースを最小限にしたいというコンセプトがあります。たとえば、基板の外径はボタンの形状に揃えて、丸にしました。これは、キースイッチを取り付けるソケットの大きさから円の外径を決めています。ボタンと同じ大きさにすることで、輪郭が揃いまとまった印象が生まれます。ボタンとボタンの間の基板は配線のために必要なスペースとなっております。その部分を直線でくっつけるのではなく、円弧で連続するようにしました。ここは直線で作るのが最も単純な方法で、必要最低限のスペースで配線を行う事が可能です。しかし、直線で作ると円と交差した部分に角が生まれます。この角は基板をカットするときに、レーザーやCNCの刃が入りにくく、仕上がりに影響が出ます。そこで、角を作らないようにするために、円弧と円弧がシームレスに連続するデザインにしました。これによって、視線が向きやすい角をなくし、シンプルな印象を生むことが出来ました。

かぬコンver.1.5 透明感あふれるコントローラー。

おわりに

デザインは、デザインを行う人によってさまざまな違いが生まれます。今回はその中の一つである、そのデザインに至る物語の話をしました。少しマニアックな内容となっていますが、日常にはさまざまな物語を持ったデザインがあふれています。良いデザインだと思ったものや手に取った時に、どいった物語で、それが作られたのか考えてみると面白いかもしれません。その物語を考えることで、より愛着をもってそのデザインに接することができるようになります。かぬコンを作る過程で、さまざまな方のご意見や感想をいただきました。その中で、どんなものが良いと思ってもらえるのか、どうすればよいのか考えながらデザインをブラッシュアップしました。そんな経験をした際は、情報を発信いただけると良いかもしれません。貴重なご意見や感想をいただいた方やデザインに関する情報を発信してくださっている方に少しでも還元できるように、本記事を書かせていただきました。この記事を書くことで、プロダクトのデザインをする方や使うときにその物語を考える方が増えてくれると嬉しいです。

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