【エッセイ】東京の水彩画
東京駅地下のカフェは都内の喧騒から隔絶されたようだった。
それは、特に大きな声で話すようなひとがいないというのもあったが、人々の動きがどこか緩慢としていてゆとりがあるように感じられた。
どこか長閑で穏やかな午后一時。ほの暗い店内にはBGMが流れている。ボサノバだ。16ビートを軽やかに刻むドラムにギター。聞きなれた旋律をなぞるハスキーな女性ボーカル。その合間に挟まるクラッシュシンバルは波打ち際のような水音を彷彿とさせる。
ボサノバはブラジルで生まれたポピュラー音楽だと聴いてい