見出し画像

【デザートな恋には薔薇を添えて】

この色って何色かな?この質問をするのはこれで何回目だろう。この世に生を受けてから僕は、色という色が見えない。色弱なのか母に尋ねても教えてはくれない。生まれつきの物だと、いつしか諦める様になっていた。そんな幼少期、僕は、ある人と約束をした。君に、似合う薔薇を渡すと。約束くらい守らせて欲しかった。
 男【今からこの薔薇に色を付けよう。】少しずつ歩み寄る男の前には、拘束された男性がいた。震える身体を抑え、必死に抵抗する。
 男【これは、約束の為なんだ。ハハハ。】
男は、高笑いとともに拘束された男性を何度も刺した。ポタポタと血の雫が落ちる。男性の脈を確認した男は、ゆっくりと跪いて真っ白な薔薇を血だまりに置いた。
 男【違う。この色じゃない。今回も失敗か。俺には時間が無いのに…。】呟くと男はその場を静かに去っていった。静寂な夜は男性のうめき声と共に朝へと明けていった。
 平山‼ 怒鳴り声と同時に立ち上がったのは、
女子高生の平山 桃夏(ひらやま もか)隣のクラスまで響き渡る程の怒鳴り声に目を覚ます。
 桃夏【はい…。すみません。】普段居眠りをしない桃夏を教師も強くは怒れなかった。隣でクスクスと笑い声を立てる。
 桃夏【光樹!何で笑うの⁉】頬を膨らませて怒る姿は、まさに、痴話喧嘩だった。教師も見かねて授業を進める始末。隣の席にいる同級生の東海林 光樹(しょうじ みつき)に居眠りを茶化される。
 桃夏【いい加減にしてよ。昔のこと思い出しちゃっただけなのに…。】俯きながら言葉にする。
 光樹【昔のこと…?珍しいな。】頷く桃夏に話を詳しく聞いたいとお願いされ、桃夏は渋々承諾した。放課後に話をすると約束してしまった手前話さない訳には行かず、少し気まずさすら感じていた。桃夏だけでなく、光樹も同じ様に。光樹は何故か、胸が高鳴っていた。少し遅れてきた桃夏の顔は少し照れている様にも見えた。
 光樹【遅かったね…。】机に座って桃夏の心配をしていた。居眠りで怒られていたのは、クラスの全員が知っていた。
 桃夏【怒られたよ?物凄く。】今にも泣きそうな表情で光樹に訴えかける。光樹も少し茶化しすぎたと反省をしていた。一頻り、落ち着いた頃、桃夏が話を始めた。
 桃夏【小学校の時に、約束をしたの。光樹は知っている通り物理学 専攻を決めた理由でもあるんだけどね…。砂川 理(すなかわ さとる)って男の子の友達がいたんだけど。ずっと忘れていた気がして。】と居眠りの原因といきなり思い出した事を話桃夏は少し怖がっているようにも見える。
 光樹【トラウマとかじゃないよな?】過去の記憶とは時として、自ら暗示をかけてしまう。約束とは良くも悪くも人を変えてしまう。
何かのきっかけでその暗示が開放されると、人は罪深いものへ変化してしまう。人の心は繊細が故に染まりやすい。一番危険な爆弾である。

ここから先は

12,693字

¥ 1,300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?