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読書感想『「子どもが主語」の学校へようこそ!』著:森万喜子


書誌情報

『「子どもが主語」の学校へようこそ!』
著者:森万喜子
出版社:教育開発研究所(2024年2月1日)

著者プロフィール

著者プロフィール
森万喜子(もり・まきこ)
1962年生まれ。北海道出身。北海道教育大学札幌校特別教科教員養成課程(美術)油彩画専攻卒業、兵庫教育大学大学院教育実践高度化専攻教育政策リーダーコース修了。千葉県千葉市、北海道小樽市の中学校で勤務。2016年~2023年、北海道小樽市立中学校長。
本質に根差したシンプルな学校経営を行う。2023年、「ForbesJAPAN」の「イノベーティブ・エデュケーション30一子どものウェルビーイングを実現する変革者たち」に選出される。
著書に『学校と社会をつなぐ!」(学事出版、2021年、共著)、「校長の挑戦」(教育開発研究所、2022年、共著)。

著書記載プロフィールより

その他に、青森県教育改革会議副議長、文科省CSマイスター(2024年〜)学校DX戦略アドバイザー(2023年〜)や講演、執筆活動もされています。

手に取ったきっかけ

著者の森万喜子先生は、私が住む札幌の隣、小樽市の公立中学校の校長先生でした。最初に森先生のお噂を聞いたのは私も参加している「エッセンシャル・マネジメント・スクール」という大人の学び場でのことだったと思います。その関連でZOOMで行われている勉強会でちらっとお話を伺ったことがありました。森先生の講演というわけではなかったので少しだけでしたが「身近にこんな素晴らしい先生がいらしたとは!」と驚いたことを覚えています。講演会などあったら行きたいと思っていましたがなかなか機会がなく、単著を出版されたとSNSで拝見し、購入してみました。


注:これは個人的な感想ですが、内容に触れている部分がありますので、先に内容を知りたくないという方は読まないでください。


感想

全体を通して、押しつけや上から感がない。そしてユーモアがある。だから心地よく読み進められる。
学校現場で長い間、時には苦い思いをしたり、悩みながら実践してきた方だからこその、具体的で臨場感あふれる内容と感じた。

私は小・中・高とも正直学校が苦手、好きではありませんでした。
いつもイライラするし居心地悪いし「私のいる場所ではない」と感じていた。

これは、そんな学校が苦手な人が書いた感想なことを先にお伝えしておきます。

自分を振り返っても「中学生」って、とても繊細で多感で生意気で純粋で頑固で投げやりでとんがって、そして怒りが渦巻いていたように思う。
とてつもないエネルギーが爆発して自分でもコントロール不能、周りの大人はみんな大嫌いだった(40年前の地方の中学生の触れ合う大人とは学校の先生と両親くらいなもんですが)

学校にはとりあえず行っていましたが、学校不適合者で私自身もとても苦しんでいたし、正直消えてしまいたいとよく思っていた。
自分自身に生きている価値はない、生きていても無駄となぜか深く思い込んでいました(思春期ね)。
生き延びた私エライ!と今更ながら自分を褒めたい。
そんな昔のことをいろいろ思い出させて、ちょっと苦しくなる程、中学校の様子が伝わってくる本でした。

学校に来たら自分らしさが損なわれる。自分がいることを喜んでくれる人がいない。つらいことが多い。そんな場所に毎日通うのは無理と、心と身体が悲鳴をあげる。


1章16Pより引用

前書きにもこのような文章があるのですがこれを読んだだけでなんだか涙が出そうになった。中学校に行かなくなった次女にとってもそうだったんだろうな。親としてはダメなのかもしれませんが、娘が学校に行きたくないと言い出した時、正直「わかる…」とすぐ共感してしまった。
そしてさっさと見切って違う場居場所を探し始めたのです。
見切りが早すぎるような気もしたのですが、特に公立学校に対してあまり期待していない自分自身のちょっと偏った価値観があったからだと思います。(良い学校もあるのも素晴らしい先生がいるのも知っています)

学校が苦手だったと書きましたが、未だに苦手です。子どもの頃の刷り込みって強烈です。
子どもたちの参観や懇談で学校に行くのも、いまだにちょっと憂鬱になる。けれどPTA役員もしたり、活動にも参加していますよ。
真摯に子どもたちにむきあい取り組まれている先生たちには本当に敬意と感謝です。

「学校」の役割ってなんだろう。
これもいろいろな考え方があるのでしょうが、私は、親でも家族でもない大人から大事に思われる、自分以外の人と直に触れ合い学び合う楽しさとか尊さを実感できる場所だと思います。

第1章24Pより引用

まさに、まさにそう思う「親でも家族でもない大人から大事に思われる」こういう体験って本当に大切。たったひとりそんな人がいてくれたら、人って強くなれる、生きて行こうと希望を持てるのだと思う。
私の場合、中学時代ふとしたことで知り合った大学生のお姉さん、お兄さんたちに憧れて、高校に行こう。大学にも行ってみたいと思ったのです。
学校以外の場所でも大人と触れ合う機会って大切だと思う。

著者が校長になってよく口に出していた言葉は「誰か困ってない?」だったそうです。良い言葉。カジュアルでフラットでSOSを出しやすい。
中学校の現場での事例や著者の子育てでの体験などもたくさん書かれています。
学校には行っていなかったけれど塾には行っていた息子さんが持った陰口に対する不安に対して

「そんなことを言うやつは誰だ!連れてこいや!塾の学費はこっちが払ってるんじゃ。ビタ一文払ってないやつにつべこべ言われたら許さないぜ」

第2章55P

と言った部分では思わず吹き出し、心から拍手でした。なんて心強い。こんなお母さん最高です。

著者の校長時代の取組も豊富に書かれています。コロナ禍の「アサリンフェス」(文化祭)の取組は読んでいるこちらも胸が熱くなる。
「放牧マネジメント」とユニークな名前をつけて、先生たちと学校をつくること、先生の育成などについても書かれています。
本当に先生の仕事って大変で重責。仕事を超えた仕事なんだよな。先生って。

学校を運営していくうえで、子どもとも、先生とも、保護者とも、とにかくやはり「対話」が大切なんだということがひしひしと伝わってきた。

学校は温かい場所であるべき。(190P)
学校はもっと温かくて、ゆるくて、いい。(192P)

おわりに より引用

公教育はローカルで、ドメスティックな場所だけど、大人たちの意識と行動を変えることで、子どもたちはチャンスをつかんで、広い世界に飛び出していける。タンポポの綿毛みたいに。

おわりに 192Pより引用

このあたりは、自分自身も受け入れてもらえたような気持になって、本当に胸が温かくなる。こんな校長先生がいる学校っていいよね。学校ってそういう場所であって欲しい。

森先生が校長時代に発行していた学校だよりが掲載されています。
その中でSTINGの名曲『FRAGILE』を引用したお話が書かれています。
個人的にその部分もとても好きでドーンと伝わってきて感動しました。
この曲も大好きだから尚更。まさに、まさに『FRAGILE』そしてVALUABLE。なんのことかは本を読んでみてください。

同じ北海道在住ですので、講演会などの機会があったらぜひ伺いたいと思っています。

StingのFragileはこちらから。繊細で美しい曲です。

https://youtu.be/lB6a-iD6ZOY?si=v7xiYADGbnEg9iay


インフォーメーション


↓こちらに森万喜子先生のインタビューが掲載されていました。



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