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20231119「黒熊の嗅覚」

薄いものを重ね
熱を奪われないように
わたしの何かを守る
冷たい空気の中で
過ごす暮らしは
暖かさを必要としている
燃焼の薪を探して
今日も柴刈り
方々を探し
背負った重さを確かにして
何度もいただきに通って
幾つも割っては焚べる
爆ぜるから
含まれた何かが弾け
わたしの所にも
飛び火して
安物のダウンにも穴が空く
塞いだそれらも
どこからかへと放出されている

通わない血流を促し
せかせか動いていれば
回復しつつ燃焼を続ける
順序を付け年末までの予定と
明くる年の算段を当て
弓形のしなりを矯めて
動力を溜める
燭台に灯し
揺らめくそれらは
仄かにあなたを映すだろう
影からの
そして暗闇からの
燃えかすを集め
雪の地面にばら撒き
陰影の形象を垣間見る
白骨を埋め
捌かれたとして
土へと帰す
樅の木はその日を待っている

鈴の音を鳴らし
小枝が折れる音がする
囀るのはどの方向なのか
しんとしたのに
どこに居るかもわからないけれど
黒熊の嗅覚で
わたしは見つけられるかもしれない
松明を掲げ
中心から暗がりへと降りる
獰猛さの檻をすり抜け
恣の平らげる連鎖が
通常運行として
捻れながらも循環する
罠を素通りして
生き延びる空腹を以て
放浪するのは誰のことだろう
木の実を食んで苦味と甘味を嗅ぎ分ける
慣らされた観衆がそこここに見ていて
促す欠片を手に取ることだろう

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