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マネジメントに必要なのは、矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ

※本記事は、2018年3月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは!ランサーズの曽根(@hsonetty)です。今週は「経営・組織」編の第4回になります。いよいよ、最終回まで残すところあと2回というところです。

今回のテーマは、「マネジメント」。ど真ん中、王道、ストレートで古典的なテーマになります。経験が浅いながらも、「マネジメント」の定義から、メンバーマネジメント、チームのつくり方、そしてマネジメントに求められる資質まで。特にここ1-2年の間の自らの直近の体験を反芻しながら書かせていただきました。

あらためて我ながら手広く書いたな、、、とは思いますが、マネジメントに少しでもかかわっている方や、特にこれから本格的にマネジメントに向き合う方にとって、少しでも参考になれば。ぜひもどっぷりお付き合いください!


1. 得意に集中し、苦手は補完してもらう

マネジメントという古典的かつ広大なテーマを考えるうえで、毎度のことながら、その定義や考え方から始めたいと思います。

ぼく自身は、(広義の)マネジメントといったときに、以下のフレームワークで4つのマネジメントというのを考えています。

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これはリンク&モチベーションの方から教えていただいたフレームワークなのですが、組織というより経営全般に通じる普遍的なものだと思います。

面白いのが、それぞれの領域において、簡単な一つの質問をするだけで、そのマネジメントがうまくできているのかどうか、すぐわかってしまうこと。

▼ビジョンマネジメント:何のために仕事をしているのか?
▼戦略マネジメント:何が最も優先順位の高い取組みなのか?
▼業務マネジメント:今日中に誰が何をやりきったらOKなのか?
▼チームマネジメント:各チームメンバーは成長を実感できているか?

マネジメントに関わっている方は、それぞれの質問を自分に、もしくは配下のメンバーに問うてみるとよいかもしれません。

さらにもう一つ面白いのは、これらのマネジメントには順序があるということです。

経営の立場からいうと、ビジョンや目標があり(ビジョンマネジメント)、それを実現する戦略を立て(戦略マネジメント)、具体的な実行計画に落とし(業務マネジメント)、人材をアサインしストレッチさせていく(チームマネジメント)。

一方で、マネージャーの階段を上っていくうえでは、メンバーマネジメントから始まるケースがほとんどかと思います。ゆえに、狭義には、右下のメンバーマネジメントのことを指して「マネジメント」と呼んでいるケースが多いと思います。

4つもあるのか、、、と思う方もいらっしゃる方もいるかもしれません。

ぼく自身も、常日頃、この4つすべてを心がけてはいるものの、これらがすべてできていると思ったことはありません。

重要なのは、自分の得意なマネジメントにできるだけ集中し、苦手なところは補完するということ。

よくあるのは、組織よりのビジョン・チームマネジメント(目標を示して、メンバーに成長機会を与える)は得意なんだけど、事業よりの戦略・業務マネジメントが得意でないというケース。

こういうケースでのおススメは、自分が不得手な領域のマネジメントに強い右腕を見つけるあるいは育てて補完してもらうことです。

たとえばぼく個人でいうと、どちらかというと経営よりのビジョン・戦略マネジメントが得意領域なので、現場よりの業務・チームマネジメントの強い仲間にその領域を大きくゆだねることを心がけています。

ぜひみなさんも、この4つのマネジメントの中で自分の得意不得意を把握しながら、日々のマネジメントを工夫されるとよいかもしれません。


2. チームメンバーのモチベーションを高める

とはいえ、マネジメントの中でチームマネジメントはやはり基本になります。

各チームメンバーが成長実感を得られているか。マネジメントをするうえで、このチームマネジメントで悩み苦労したことがない人は一人もいない、といっても過言ではないのではないでしょうか。

ここでも、色々なコツはあると思いますが、個人的に最もベースの考え方においているのは、Will(やりたいこと)/Can(できること)/Must(やらなければならないこと)のフレームワークです。

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チームメンバーがモチベーション高く仕事をし、いかに早く成長できるか。

マネジメントとは「人の強みを引き出す」ことだともよくいわれますが、シンプルに言うと、このWill/Can/Mustの3つの輪の重なりをできるだけ大きくする、ということだと思います。

▼部門の都合で、どうしてもMustの仕事が多くなってしまっている。
▼現時点でのCanの仕事がメインだが、実際にはそこにもうWillはない。
▼そもそも、そのチームメンバーのWillが何なのかわからない、知らない。

こういうケースに直面したことがある方はかなりいるのではないでしょうか。

このWill/Can/Mustの重なりを大きくするために、一人ひとりとの対話を増やしてその特性を把握し、チームメンバー一人ひとりへの仕事のアサインを工夫する=機会をつくることはとても重要です。


このWill/Can/Mustはさらに面白くて、これ自体をチームマネジメントにいかす、とりわけメンバーのモチベーションを高めるためのもう一つ別のフレームワークがあります。

具体的には、以下のような形です。

▼Will=目標の魅力⇒ラダー効果(やりたい!):日々の業務に対して、Whyを繰り返し、目的や意義を抽象化していくことで業務の意味付けを高めていく(自分たちの仕事の意義を強く意識させる)
▼Can=実現可能性⇒マイルストーン効果(やれそう!):途中のマイルストーン(小目標)を設定することにより、大きな目標達成までのプロセスを明確にする(小さな目標の達成により成功体験を多く積ませる)
▼Must=危機感⇒コミットメント効果(やらなきゃ!):人から目標を与えられたのではなく、自分から目標を決める状況をつくり、これをまわりに宣言させる(自ら目標に強くコミットする場を強制的につくりだす)

メンバーとの1on1などをやる中で、一人ひとりの状態にあわせて、これらのどのアプローチがもっとも効果的にモチベーションをあげることができるのか、意識してみることをおススメします。


3. 「足し算」ではなく「掛け算」のチームをつくる


一方で、メンバー一人ひとりの個人としての能力を引き出すだけでは、チームのパフォーマンスを最大化することができない、というのも事実です。ここがチームマネジメントの本当に難しいところだと思います。

現代における組織の多くは複雑系です。市場の環境は急速に変化し、事業のモデルは進化を求められ、そして個人の価値観は多様化の一途をたどっている。それだけ、チームや組織のマネジメントは高度化してきているのだと思います。

ドラッカーが『マネジメント-基本と原則』の中で、マネージャーの役割の一つ目として「部分の和よりも大きな全体、投入した資源の総和よりも大きなものを生み出す生産体を創造すること」と言ってますが、要するに、「足し算」ではなく「掛け算」をどう生み出せるか。

掛け算ということは逆に、価値観ややり方が真逆だと、素晴らしい能力をもつメンバー一人がモチベーションをもって仕事にまい進しても、チームとしてのパフォーマンスの総和がマイナスになることもありうるということです。


では、どうすればよいのか。

ここについては、様々な考え方や理論があると思いますが、ぼくがチームマネジメントにおいて最近強く意識しているキーワードは、「関係性」です。

前々回のウェイ・カルチャーの回で「関係性の質」の重要性やカルチャーが果たすべき役割について書きました。今回強調したいポイントは、自己開示を行い、相互の違いを理解し、チームとして補完しあう、ということです。

チームの関係性をつくっていくうえで、最近ランサーズで導入したのは、ヒューマンロジック研究所の提唱するFFS(Five Factor Score)理論を応用した性格診断テストのようなものです。

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メンバーの特徴がスコア化され、その特徴にもとづいた効果的な接し方(例:ストレスを感じさせるコミュニケーションを避ける)がわかるというメリットはもちろんのこと、このFFS理論の面白いところは、このスコアをベースにしたフォーメーションにおけるメンバー同士の補完関係が科学的に図示されるということです。

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もちろんこれですべての組織のフォーメーションを決めることができるというわけではないですが、現代の組織は野球型(役割が完全に固定)よりはサッカー型(役割が状況によって流動)に近く、お互いがどう役割をカバーしあえるかを知ることは重要です。

この理論によると、短期的には同質的なメンバーが集まる形でもパフォーマンスは出せるけれど、長い目でみると異質なメンバーが補完しあう形の方がパフォーマンスを大きくのばすことができる。

ランサーズにおいてもこうした理論を活用して、どういうマネジメントチームのフォーメーションが良いのか、試行錯誤したりもしました。(興味がある方は、下記の記事にかなり詳細が書かれているので、ぜひご覧ください)


この理論と少し通じるところのあるちょっと面白い例として、『成功者の告白』で紹介されている、桃太郎のメンバー構成にみるマネジメントチームの水平補完関係(と一方で緊張関係)はとても示唆的です。

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マネジメントチームをつくっていくうえで、起業家(桃太郎)、実務家(犬)、管理者(猿)、まとめ役(雉)の4人の役割が、お互いに緊張関係を保ちながら補完する形は、ぼく個人の実体験からしても、めちゃくちゃ腹落ちする関係性のパターンです。

関係性の考え方は一つではないですが、チームマネジメントに関わる方であればぜひ、自己開示、相互理解、水平補完のプロセスでチームの関係性を深く濃くするためのアクションをされていくとよいのではないでしょうか。


4. 矛盾に向き合い、乗り越えるための真摯さ


あらためて、そんな複雑化・高度化する組織や事業をマネジメントする立場に求められる役割や資質とは何なのか。

▼経営と現場、自部門と他部門の「結節点」になれるか。
▼自分の部門ではなく、組織全体のために「ひと肌脱げる」か。
▼80/20の「判断」ではなく、51/49の難しい「決断」ができるか。

いろいろな要素があるとは思います。

ドラッカーによれば、マネージャーに求められる資質とは、弱みではなく強みに目を向け、誰が正しいかではなく何が正しいかに関心をもち、自らの仕事に高い基準を設定する「真摯さ(Integrity)」であるとのことですが、この「真摯さ」とは一体何なのか。


これを考えるうえで、ぼくがいつも大事にしている考え方は、「矛盾にどう向き合うか。そしてそれをどう乗り越えるか」ということです。

田坂広志さんの『なぜ、マネジメントが壁に突き当たるのか―成長するマネージャーの12の心得』という著作が個人的に好きなのですが、その中で書かれている「マネジメントの本質とは矛盾との対峙であり、矛盾とは生きたシステムである」「マネジメントにおいては割り切り=魂の弱さではなく、腹決め=器の大きさが重要である」というのは、まさにその通りだと思っています。

中長期と短期、経営と現場、事業と組織、自部門と他部門、収益性と成長性、などなど。

こうした矛盾や対立(どちらかを取るとどちらかがおろそかになる可能性が高い状況)と向き合う中で、どうしたらよいのか判断に迷うことが、次から次へと出てきます。

『ビジョナリー・カンパニー2』でも言及されている「ORの抑圧ではなく、ANDの才能を大事にする」の思想ではないですが、そういう状況においてこそ、真摯に矛盾や対立に向き合い、強い信念をもって腹決めしたことに対して、結果責任をとることが求められます。

最近、ランサーズでも「Lancers Management Way」というのを最近設定しました。「経営の自分ごと化」「結果責任をとる」「今のリソースでなんとかする」という3つの要素からなっていますが、特にこの「経営の自分ごと化」において重要なのが、この真摯さだな、とあらためて思っています。

このあたりはとっても深い内容なので、次回最終回の「意思決定」の回でさらにくわしく書いていきたいと思います!


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

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曲がりなりにも経営者の端くれとして、背伸びしながら、マネジメントに直面するようになった2016年以降のこと。特にメンバーマネジメントやチームマネジメントについては失敗が多く、自分の得意や苦手を知ると同時に、多くの人に迷惑をかけました。

2017年にマネジメント研修を受ける機会があったのですが、そのときのぼく個人の課題は、感情に向き合うことと、他責感を脱する=逃げないことでした。「最後の一人になる覚悟」をもつ経営者になるというミッションを立て、数か月にわたりPDCAを回す中で学んだことが、今回のこのブログの内容のコアになっています。

まだまだ経験値が足りず、100%自分のものになっていない教えや学びばかり。マネジメントについて立派そうに語れるような段階でもないと思います。ただ、もしこれからまさにマネジメントにチャレンジする、という方がいれば、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

さて、本ブログ連載も次回でラスト。最終回のテーマは、「意思決定」です。ぜひ最後までお付き合いください!

また、ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


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