住民同士の意見交換を参観して感じたこと・学んだこと

先日、とある地区社協の会合に、市危機管理課の立場からオブザーバーとして参加しました。

この地区社協では、高齢者や障害者などの「気になる人」や、自治会長・民生委員児童委員・福祉委員といった役を持つ人などの情報を、シールや付箋を使って地図に落とし込んだ『つながりマップ』を作成し、定期的に見直しながら、地域の情報共有を図っています。

令和5年度は、これまでの取り組みに加えて、防災の観点からも地域の支え合いの仕組みづくりに取り組みたいとのことでした。


会合では、自治会単位で集まって、以下のようなことを中心に意見交換を行いました。

・日頃の地域の様子
・配慮が必要な人(高齢者、障害者、難病患者、乳幼児、妊産婦、外国人、など)
・平常時、災害時に必要な対応

意見交換は40分程度の短い時間でしたが、各グループを参観させてもらって、次の3つの気づきがありました。


①「明るいニュース」も共有する

議題として「配慮が必要な人」があるので、どのグループも始めは高齢者の一人暮らし世帯や介護施設に入所された方の情報共有が中心でした。

しかし、中には「あそこの家に息子夫婦が帰ってきた」「空き家になっていたところを改修して30代の方が住むらしい」など、地域にとって明るいニュースを共有しているグループもありました。

ある自治会では、自治会行事の際に、新たに自治会に加入した世帯の紹介をしていたりする例もあります。

引っ越してきた方は温かく受け入れてもらえると安心できると思うし、自治会側にとっても明るいニュースは元気づけられるものだと思います。

少子高齢化・過疎化により、地域が衰退していく面ばかり目についてしまいがちですが、中には明るいニュースもあるはずなので、積極的にみんなで共有できればよいのではないかと感じました。


②引き継ぎを工夫する

地域防災の永遠のテーマとして、「活動をどう積み上げるか」があります。

多くの地域では、自治会役員が1〜2年で交代してしまうので、役員交代とともに防災活動がリセットされてしまうケースも少なくありません。

今回のグループでの意見交換の中でも、「地域に自主防災組織があることすら知らなかった」「引き継ぎがなされず、防災の取り組みと言っても何をしたらいいか分からない」といった声もありました。

もちろん、役員が1〜2年で交代することで、自治会内の全員が自治会運営を経験できるメリットもあると思います。

ただ、引き継ぎの仕方も人によってバラバラで、なかなか活動が積み上がらないという課題も起きています。

そこで、提案として「防災専属の役員をつくる」という話をさせてもらいました。

例えば、防災専属の役員を3名程度配置し、定期的に交代する役員と専属の役員が一緒になって防災活動を考えている自治会もあります。

専属の役員がいることで活動は積み上がるし、定期的に交代する役員も一緒に防災活動を経験することで、広く自治会内の住民が地域防災に参画する機会が生まれると思います。

自治会の状況次第ですが、「防災専属の役員をつくる」ことで、引き継ぎもスムーズに行うことができるのではないかと思います。


③コミュニケーションのしくみをつくる

あるグループでは、災害に備えて日常からできることとして、「コミュニケーションを取ることをみんなで心掛ける」という意見が出ていました。

「犠牲者ゼロ」を目指すには、自分の身を自分で守る「自助」とともに、地域でお互いに助け合う「共助」の力が必要です。

そのうえで、災害時にお互いに助け合えるかどうかは、やはり日ごろのコミュニケーションをいかに大事にしているかが鍵となってきます。

なので、僕も「コミュニケーションを取ることをみんなで心掛ける」という意見には大賛成です。

ただ、「心掛ける」という個人の気持ち・意識に頼るのは、どうしても限界があるのではないかと思います。

そのため、「コミュニケーションを取る『仕組みづくり』もぜひ考えてほしい」という話をさせてもらいました。

今回のように、地区社協の会合で定期的に防災の話を続けるだけでも意義があると思うし、お祭りや清掃活動の際に少しだけ防災の要素を足してみるのもいいと思います。

また、ある自治会では、福祉委員や民生委員児童委員が防災活動の運営に関わってもらうことを検討しているそうで、配慮が必要な人の情報が共有しやすくなり、防災活動を深めることができると思います。

また今後は、地区社協の会長の他にも、地域の情報共有を大切にし、様々な取り組みを展開できる人材の発掘・育成も大きな課題です。

僕が働いている瀬戸内市は幸いなことに災害が少ないからこそ、なかなか防災意識を継続して高く持つことは難しいです。

コミュニケーションを「心掛ける」だけでなく、仕組みとしてコミュニケーションが生まれる機会や体制を作っていくことも今後の課題だと思います。



普段、防災出前講座として、こちらから住民の方に向けてお話することはたくさんありますが、今回のように住民同士の話し合いを参観させてもらうのもすごく学びがあるなと感じました。

そもそもの前提として、こうした地域の情報共有の場がしっかりと残っているということが「当たり前ではない」と思います。

別に新たに何か始めたり、立ち上げたりする必要はないと思うので、地区社協の会合や自治会行事、高齢者学級、子育てサロンなど、既にある繋がりのなかで防災について考える機会を持つと良いんだろうな感じました。


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