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カレイドスコープ|キムせん事件

「この二次関数を平方完成してみよう。定義域は0から2だから、この時の最小値は・・・」


くる。春奈は身構えた。


一昨日は相川さん、昨日は安藤くん。出席番号1番、2番。今日は私が指される。あいかわ、あんどう、あおき・・・。「青木春奈」、私は出席番号3番だから。


数学の木村先生——通称「キムせん」——には、とある法則がある。そう。必ず出席番号順で指名をするのだ。「物事には必ず法則がある」が木村先生の口ぐせ。そのポリシーに則っているのだろう。


木村先生のこの「法則」は、私たち生徒にとってはメリットしかない。だって「指されそうな」タイミングがわかるんだから。10番、11番・・・と指されている日なら、30番の人は「今日は回ってこないな」と安心できる。それに、一回指されてしまえば、次の指名は「30回後」だ(このクラスは30人だから)。

この「法則」を利用して、私たちは身構えたり、あるいはサボったりできるというわけだ。「法則がわかれば『次』を予測できる」「『次』が予測できれば最適な行動が取れる」——木村先生は、ひょっとすると「法則を知る大事さ」を、身をもって教えてくれているのかもしれない。


「いつくだ?青木?」の声が聞こえてきそうだ。「4です」と答える準備も万端だ。青木、4。青木、4。


「——いくつだ?酒井?」
「はい」「ひっ」
・・・え?


思わず返事しちゃった。それに酒井さんの「ひっ」が重なる。
「酒井、どうだ?」
わ、わかりません・・・。不意打ちを食らった酒井さんは、あえなく撃沈。災難としか言いようがない。
「4だ、きちんと予習をしておくように」木村先生はことなげに授業を進める。


いや、いやいやいや。ちょっとまってよ!
「あの」木村先生が、ランダムに指名!?「物事には必ず法則がある」んじゃないの!?
慌てているのは私だけじゃない。指名された酒井さんはもちろん、他のみんなもざわついている。
次は自分が指されるかもしれない、という恐怖(?)もあるだろう。でもそれ以上に、「木村先生がランダムで指名した」という「事件」に動揺しているんだ、みんな。
「じゃあ、次の例題5を解いてみよう——」
木村先生、どうしちゃったの!?
 


 

「どうしちゃったんだよ、キムせん」
その日の帰り道は、木村先生の話で持ちきりだった。
「今日は『あ行』の人っしょ、『法則』からして」


その通りなのだ。今日指されるはずだったのは、――「あ」の青木春奈――私だ。なのに木村先生は、酒井さんを指した。
「法則なんて最初からなかったのかもしれない。あるいは、このランダムにも法則がある、とか」
冬野くんがポツリと言った。
今日は水曜日、部活なしデー。1週間に1回の「お楽しみ」の日だ。
私たち4人はみんな部活はバラバラだ。部活がある日も、終わる時間も違う。だから4人がみんな一緒に揃うのは珍しい。でも水曜日だけはみんなで一緒に帰れる。水曜日を私たちは——少なくとも私は——心まちにしているんだ。


いつもの帰り道。学校から駅まで20分くらい。海沿いのこの道が私は大好きだ。一人で帰るときは、たまに海辺に座って時間を潰すこともある。4人で帰るときは、一緒に海を眺めることもある。一人も4人も、どっちも好き。


「整理しよう。これまで、木村先生は必ず出席番号順で僕らを当ててきた。一昨日は1番の相川、昨日は2番の安藤。『法則』から考えて、今日は3番の春奈のはずだった。でもそうはならなかった。酒井、千葉、広瀬、近藤、それと水瀬が指された。それぞれ「さ」行、「た」行、「は」行、「か」行、「ま」行だ」


冬木くんは割と寡黙だけど、しゃべる時はとことんしゃべる。
「今日だけじゃまだ何とも言えない。明日からもきっと、キムせんはランダムで当てるだろう。それをチェックしていけば何かわかるかもしれない」
それに、彼が言いかけたとき、ざざ、と波が砕けた。
「とにかく、キムせんどうしちゃったんだよ~!」
「帰ったら続きを考えてみる。また明日」
「私も!バイバイ春奈」
「うん。バイバイ」
 

 
次の日も、木村先生はランダムで指名し続けた。


「この問題は・・・どうだ?田中」
「じゃあ次は・・・橘に聞いてみよう」
「さすがだな!正解だ、加藤」


クラスメイトはこの「事件」をまだ消化できていない。だって、「なぜ」がわからないんだもん!
1番の次は2番、2番の次は3番。そうなったら、次は4番に決まってるじゃない!それこそ「数学的に」明らかだと思うんだけど。なのに木村先生は突然ランダムに指し始めた。13番の次が18番のこともあるし、かと思えば23番を指したりする。バラバラ、気まぐれとしか言いようがない。


「よし、練習問題2の答え合わせだ。解法を聞いてみよう。では——」
「あの」
千秋が木村先生をさえぎって手を挙げた。
「あの、どうして突然ランダムになったんですか?指名」
そうだそうだ、どうしてだよーと、みんなが同調する。
「物事には必ずあるんじゃないんですか?法則が」
千秋っぽいな。千秋は白黒つけたがる。指名されるのが番号順でもランダムでも、それ自体には興味はないだろう、きっと。でも、「どうして」ランダムになったのか、その理由がわからないのが気持ち悪いんだ。


その通りだ、と木村先生が答える。「物事には必ず法則がある。法則がわかれば『次』がわかる。『次』がわかれば最適な行動が取れる。これが私の持論だ。白井はランダムに指していると言ったが、さて、本当にランダムかな?」
言い終えたところで、狙ったようにチャイムが鳴った。キーンコーンカーンコーーーーン。
きりつ、れい、ありがとうございました。
 


 

その日の昼休みは、木村先生の話で持ちきりだった。
木村先生が「ランダム」になって2日目。水曜日に「事件」が起こったから、今日は木曜日。なんとなくだけど、次の週になったらこの「事件」は幕引きな気がする。だってもう「ランダム」に慣れちゃうし、来週にはきっと別の「事件」が——私たち高校生の日常には「事件」がいっぱいなんだから——起こって、そっちに関心が移っちゃうだろうから。


だから、木村先生の謎を解くなら、明日、金曜日がデッドラインだ——春奈はそう思っていた。
「やっぱり私モヤモヤする。どうしてキムせんはランダムに指し始めたの?絶対突き止めてみせるから」
「僕にも考えがある。もう少し整理しないとなんとも言えないけど」
「よし!じゃあ4人で解明しよう、キムせんの謎」
なんだか面白くなってきた!
「明日の数学は5時間目だ。・・・明日の昼休みまでに答えを見つけようぜ!」
 

 

 
「ここ2日間のキムせんが指名した人、出席番号をリストアップしてみた。こんな感じだ」
次の日の昼休み、お互いの「推理」を披露し合う時間がやってきた。
「リストを見て。面白いことがわかったんだ」
 
酒井:13
千葉:18
広瀬:23
近藤:12
水瀬:27
 
「はあ?さっぱりわかンねえよ」夏目くんはブイブイ言ってる。
正直私も全くわからない・・・


「確かに、これだけじゃ分からない。ヒントは五十音だ」
冬野くんがノートに五十音表を書いていく。あ、か、さ、た、な・・・。それに合わせて、何やら数字を書いている。


「見て。「あ行」を1、「い行」を2、「う行」を3・・・って、タテに1から5まで番号をふる。「あ」が1、「お」が5だ。次に、「あ」を1、「か」を2、「さ」を3・・・って、ヨコに1から10まで番号をふる。「あ」が1、「わ」が10だ」
座標みたい、と千秋がつぶやいた。


「そう。こうやって番号を振ると、「あ」は(1,1)、「か」は(2,1)・・・みたいに、五十音を座標で表せるんだ。キムせんが当てた人たちの頭文字を座標で表してみると・・・」
 
「さ」かい:(3,1)
「ち」ば:(4,2)
「ひ」ろせ:(6,2)
「こ」んどう:(2,5)
「み」なせ:(7,3)
 

——あ!
「そう。『今』当たった人の座標を(m,n)とすると、『次』に当たる人の座標は、」と冬野くんはノートに座標を書く。「こう表せるんだ」

 
(|m+n|,|m-n|)

 
げぇ、と夏目くんが露骨に嫌そうな顔をした。「なんだっけ、この棒」
「絶対値。例えば、酒井の座標は(3,1)だ。だから『次』の人の座標は(3+1,3-1)、つまり(4,2)になる。この座標が当てはまるのは千葉だ。その『次』は(4+2,4-2)、つまり(6,2)。これはズバリ広瀬の座標だ」


「え?でもさ、それなら近藤がおかしくね?広瀬の『次』を考えると(6+2,6-2)=(8,4)じゃん」
・・・夏目くん、おしい!
「なっつー、おしい。(8,4)の座標は・・・ないの。「8」は「や」行。「や、ゆ、よ」しかない。「4」は「え」行だから、「や、ゆ、よ」に当てはまらない。五十音表に(8,4)の座標なんてない、ってわけ」
「そうだ。じゃあそういう時はどうするか・・・。おそらく、座標(m,n)の数字を掛け算した数字——「m×n」の出席番号の人に飛ぶんだ」


冬野くんのノートに、新たな「法則」が書き込まれる。
 

広瀬(6,2)→6×2=12番=近藤
 

確かに、これで広瀬くん→近藤さんの順番も説明できる。
「ただ、この『掛け算』の説は正しいか分からない。だって、まだ広瀬→近藤の1個しか例がないから。もしかしたら偶然かもしれないし、別の法則があるのかも」
冬野くん、すごいなあ。たった2日でこんな法則を見つけちゃうんだもん。数学好きって言ってたし、きっとパズル感覚で解いてたのかな。
 
 
 

 
 
「答えは——だ。よし、今日の授業の範囲は全部終わった」木村先生がコツン、とチョークを黒板に置く。授業が終わるまでまだ20分くらい残ってる。
「みんな、俺に聞きたいことがあるんじゃないか?」


クラスメイトを挑発するような目線。木村先生、なんだかいつもより楽しそうだ。
「先生」千秋が手を挙げる。「私たち、考えたんです。先生がなぜランダムに指すようになったのか。それに、そもそもランダムなのか」だから私たちの「推理」を聞いてください。おお!いいぞ千秋!やれやれ!とクラスメイトが囃し立てる。
「よし、わかった。ここからは特別授業だ」木村先生は教団から下り、教室の後ろ——背面黒板の前——に移動した。
「では『推理』を聞こうじゃないか」
 



「——というわけです。五十音表を座標で表して、『次』に当てる人を決めていた。一見ランダムに見えるけど、実は『法則』があったんです」
冬野くんが、黒板に例の「法則」を書いた。大丈夫、筋は通ってる。
「・・・面白い。でも、こういうケースの時はどうするんだ?」
木村先生がカツカツと背面黒板に座標を書いていく。
 

「(|m+n|,|m-n|)の座標がないときは、出席番号「m×n」番の人に飛ぶ、と言ったねな?じゃあ「m×n」番がない時はどうするんだ?」


しまった——冬野くんの顔が引きつった。
「このクラスの人数は30人、つまり、m×nの最大値は30だ。数学的に書くと、『1≦m×n≦30』になる。この時、m,nが取り得る値の組み合わせを考えてみよう。こんな感じで場合分けできる。
 
(1)n=1,2,3(「あ」段、「い」段、「う」段)の時
mは1~10全ての値(「あ」行~「わ」行)を取る
(mが1~10どの値でも、m×nは30を超えない)

(2)n=4(「え」段)の時
mは1~7の値(「あ」行~「ま」行)を取る
(mが8以上だと、4×8=32で、30を超えてしまう)

(3)n=5(「お」段)の時
mは1~6の値(「あ」行~「は」行)を取る
(mが7以上だと、5×7=35で、30を超えてしまう)
 

「つまり、だ。例えば横田——座標は(8,5)だな——から、「m×n」番の人に飛ぶ場合、「8×5=40」になってしまう。このクラスに「40番」の人なんていない。この場合どうするか、冬野の『推理』には抜けてる、というわけだ」


むむむ。テストだったら「部分点」がもらえるだろうか。でも、この「推理」においては「部分点」なんてない。合ってるか、間違ってるかだ。冬野くんはしゅんとしちゃった。でもこの3日間でここまで調べたんだから、やっぱりすごいと思う。


「冬野の『推理』はかなり良いセン行ってる。でもこれは正解じゃないな。・・・場合分けはモレがあっちゃいけない。ダブりがあってもダメだ。これは先週、二次関数の最大値、最初値の場合分けで話したことだ」


ちゃっかり数学の復習もさせられてる・・・くやしい。


「先生、次は私の『推理』を聞いてください」千秋が立ち上がった。


「私は玄とは別のアプローチを取りました。彼ほど論理的じゃないけど、ちゃんと説明するんで聞いてください。」カンカン、と黒板をチョークで叩く。
「実は『法則』なんかなくて、やっぱりランダムなんじゃない?って思うんです。木村先生が数学を担当している1年生のクラスは、うちともう2クラス。合わせて3クラスあります。この3日間で、クラスメイトと協力して他の2クラスにも状況を聞きました——木村先生、3クラス全てで「ランダム事件」を起こしてた。それも今週。何か意図があるとしか思えません。で、他の2クラスの人にも、誰がどんな順番で指されたか聞いたんです。他の2クラスでは、さっき玄が説明した『法則』は当てはまらなかった。また別の『法則』らしきものがあったんです。でも、そっちの『法則』も解明できなかった。どうしても『例外』が残ってしまうんです」


千秋はチョークを置き、木村先生を見つめる。「先生、実は『法則』なんかないんでしょ?」


ハッとした。そうだ。私は「この」クラスのことばかり考えていた。よく考えれば、木村先生は複数のクラスで数学を担当している。だから千秋みたいに、他のクラスの状況も踏まえて推理するべきだったんだ。


「——惜しい。でもマルじゃない」間違った回答を正すように、木村先生は話し始める。「まだ1年生のみんなには難しい話だけど、数学の大事な考え方を教えよう。『帰納法』だ。『ソクラテスは死んだ』『プラトンは死んだ』『アリストテレスは死んだ』・・・だから『人間はみんな死ぬ』ってやつだ。物事を1個1個調べて、そこから『法則』を導く考え方だ」カツカツカツ——”帰納法”の3文字が背面黒板に刻まれた。


「白井のアプローチは、この『帰納法』を使っている。『うちのクラスの指名には法則がない』『もう1つのクラスでも法則がない』『さらにもう1つのクラスでも法則がない』——『だから木村の指名には法則がない』という論理展開だ。帰納法のアプローチを使って考えられたのは素晴らしい。さすが白井だ」


でもな、と木村先生は挑発的な目で千秋を見る。「『ない』を証明するのは不可能に近い。例えば、白いカラスが『いる』って証明するのは簡単だ。一匹でもいいから白いカラスを見つければ良い。でも、白いカラスが『いない』と証明するには、地球上すべてのカラスの色を調べなきゃいけない。これは不可能だろう」


確かに・・・!
「冬野は法則が『ある』と証明しようとしていた。結果『正解』ではなかったが、正解に辿り着ける可能性はある。でも、白井は法則が『ない』と証明しようとしているから、冬野より「正解」に辿り着ける可能性はずっと低いんだ」
「悪魔の証明」ってやつだよね、これ。でも、この3日間で他クラスまで調査したなんて、さすが千秋だ。頭脳派の冬野くんに比べて、千秋はバランス型だ。頭も良いし、行動も起こせる。良いセンいったと思ったんだけどなあ。


「実のところ、『法則がない』のは正解なんだ。でも、白井の推理には『証拠』が足りない。『ない』と証明するためには、何か決定的な証拠が欲しいところだ」


あるぜ、証拠——と夏目くんが声を上げる。
「聞いたぜ、オレ。今日の昼休み、『実はただのランダムなんですよ』ってキムせんが職員室で話してたのをさ」
教室がざわつく。それマジ!?
「山田せんせーと話してたっしょ。『あれ本当に法則あるんですか?』って聞かれてさ、『ランダムなんですよ~』って」
夏目くんはポケットからスマホを取り出す。
「論より証拠。再生してみる?」
「——そうだな、ここまでされちゃあ言い逃れはできないな」木村先生は徐に教壇へ向かって歩き出した。「君たちの勝ちだ」
 

 
 「なっつー、よくナイスタイミングで盗み聞きできたな。職員室に張ってたの?」
その日の帰り道。いつもの防波堤で「事件解決」の答え合わせをやっていた。冬野くんは自分の「推理」があと一歩届かず——例外があったとはいえ、「法則らしきもの」を当てたのはすごいと思う——悔しそうだ。


「まあ、そうだな。キムせんが職員室にいそうな時に、それとなく職員室に張り込んでたんだ。ほら、オレってよく職員室で色んな先生とダベってるから、職員室行ってもあんまり怪しまれないっしょ?」
さすがは夏目くん。行動の鬼。


「でもさすがにスマホで録音はやりすぎ。バレたらスマホ没収だよ」
ごもっとも。千秋も自分の「推理」が「部分点」で——美味しいところを夏目くんに持って行かれて——心なしかスネてるみたい。


「や、あれはハッタリ。『法則がない』って聞いたのはホントだけど。カマかけたってワケ」
あっけらかんとした夏目くんの横顔を見て、「ぽいなあ」と思ってしまう。
「でもまあ『キムせん事件』も一件落着ってことで!カンパイしちゃいましょうぜ!」
プシュッと缶ジュースを開ける。春の陽気を含んだ海風が吹く。


「「「キムせん事件解決に、かんぱーい」」」
「かんぱい」


きっと10年後には——いや、1年後ですら——今回の事件は「事件」なんかじゃないって思うんだろう。取るに足らない、ただの日常だって。
でも少なくとも今この瞬間の私たちにとっては確かに「事件」で、かけがえのない「日常」なんだって、そう思う。


もうすぐ日が暮れる。波の音が大きく感じる。甘ったるいジュースが喉を通る。少し鬱陶しい。でも最高に気持ちいい。
ああ、こんな日常が、ずっと続けばいいのに。
 


◆◆◆


「結局どうなりました?『キムせん事件』」


放課後の職員室。残業(と言いつつ、生徒が帰ってからが「仕事のスタート」だ)で宿題採点を片付けつつ、山田さん生が話しかけてきた。
「あのクラスでは『正解』が出ましたよ。他の2クラスは『部分点』でした」


今回の「キムせん事件」の張本人で——木村先生——は、どこか嬉しそうに事の顛末を語る。


「冬野、白井、夏目の合わせ技でね。ズバリ『法則がない』ことを当てて見せたんです。いや、してやられましたよ」
でもね、と木村先生は続ける。


「本当は、『正解』が出るかどうかには最初から興味がなかったんです。今回の件——『キムせん事件』って呼ばれてますけど——で、私が見たかったのは、生徒たちの『問いに対する姿勢』です。今回の『謎』に対して、生徒たちのスタンスは大きく3パターンでした。謎を解こうとする者、謎を解く者を囃し立てる者、何もしない者です。いや、『興味を示す者、示さない者』の2パターンとも言えるかもしれない。何か分からないこと、理不尽なことに直面した時に、正面から向き合うのか、他者に主導権を委ねるのか、目を背けて逃げるのか。『問い』への姿勢は、そのまま人生への姿勢に繋がると思っています。社会に出たら、数学みたいに『正解』が決まっていることの方が少ない。いや、『正解』なんかないことだってある。そんな時に、その『問い』にどう向き合うか。どうやって自分なりの『正解』を見つけるか。私は数学を通して、そんなことを彼らに教えたいのかもしれません」


ひゅるる、と春風がカーテンを揺らす。春とは言っても、夕方にもなるとまだ寒いな。


「今回の特別授業はこれで以上です」





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