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「食の風景・秋刀魚定食」


 今晩は。日一日と暮れが早まり、近所の金木犀は直満開に。夕焼け染まる空へ見惚れる頃には、早涼しい風と松虫の合唱が聞こえて来ます。

 そんな一日のおわり、今夜の献立は「秋刀魚、栗ご飯、味噌汁、法蓮草のお浸し」と秋味を満喫する料理が並ぶことになりました。表紙の秋刀魚、北海道産です。ここ数年は値が上がりましたが、それでも食べたい季節の味です。良い物が入荷したらしく、売り場でも張り切った宣伝が貼られていました。確かに奇麗な瞳をしていました。思わず立ち止まって、食べたいな、そう思いました。

「今日は君に決めたっ」

 魚用の、表面に凸のあるグリル鍋でずらりと並べて焼きます。上からアルミホイルをふわり被せて、油の跳ねを最小限に抑えると共に、身をふっくら仕上げます。次第にぱちぱちと秋刀魚の脂が弾けだします。或いは庭へ出て、七輪でも置いて炭火で焼けば、秋の乙な夕餉となりそうですが、台所で、コンロの上で、ぱちぱちと焼きます。

 この、音が好きです。お肉やハンバーグですと、ジュージュー肉汁溢れる音がしますが、魚ですと、弾ける様にパチッと幾つも重なって聞こえて来ます。煮物ならば、ぐつぐつ、ことこと、でしょうか。自分は料理中、この音と、匂いとで、調理をします。火の入り具合や、調味料の加減をするのにも、五感が頼りです。包丁を扱う時、フライパンを振る時、台所で絶えない生活の音。ステンレスのボウルへ泡立て器の当たる音なんかは、家族の誰かがホットケーキを作る画を思い浮かべます。

 さあ、そろそろ秋刀魚を返してみる頃合いです。うん、いい焼き色が付いています。引っ繰り返したら、焼き色付けるだけで早めに火を止めます。不図後ろ振り向いたら、天井付近に煙がもくもく充満していました。暫く換気扇を回し続けておくことにします。


 栗は、既に売り場に生栗の姿見えず、チルドパックの栗に頼る事にしました。時には手を抜いて、簡単に作ればいいですね。それに手むきと書いてありましたし、つまり誰かが剥いてくれたんですね。助かりますね。ありがたく使わせて頂きましょう!!

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 黒豆茶を愉しんだ後の黒豆と共に、調味料を入れて炊き込みました。画面越しですとままごとみたいな色合いですね。本物ですよ。今回も美味しく出来上がりました。

 後は根元までしっかり洗った法蓮草を湯がいて、切って、鰹節。それにわかめと麩の味噌汁で、完成です。

 どう配置するのがしっくり来るか、一寸ごそごそやってみたんですが、中々しっくり来ませんでした。それでは大根おろしが秋刀魚を侵食する前に頂きます。

あ。

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箸置きは、秋の紅葉シリーズになっていますが、箸に御注目下さい。

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 先日仲間入りしたウォルナット君です。深い茶色が渋く、彼の魅力です。ですがわたくし、やらかしました。栗ご飯食べる時は栗の木の箸で食べようと思っていたのに、うっかりウォルナット君の方で食べてしまいました。

 どうでもいいですね。今記事を書いていてはっとしたものですから、遂打ち明けてしまいました。然しながらこれで栗の箸だけに負担を掛ける心配はありません。かわりばんこに使う事ができますからね。

 話を食卓に戻しまして、大根おろし。

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 あんまり奇麗な白色だったので写真まで撮ってみましたが、生活感溢れる台所の背景が気になりますね。其処は目を瞑って頂いて、大根おろしにはぽん酢と七味を掛けて頂きました。

 秋刀魚、旨味たっぷりの締まった身、皮もこんがり美味しく焼けました。カボスやなんかをきゅっと絞るのも良いですね。

 今晩も秋を堪能しました。ごちそうさまでした。     いち

お読み頂きありがとうございます。「あなたに届け物語」お楽しみ頂けたなら幸いにございます。