なにもないということの圧倒 《夫婦世界一周紀 5日目》
急斜面をフウロとふたりで駆け上がる。
湿気のない乾いた空気。
刺すように強い太陽が体を照りつける。
足元には背丈30センチほどの草が生い茂っていて、ふわりと甘いハーブの香りが漂っていた。
丘の頂上にたどりつき、遠くを見渡した。
うす緑色の大草原が広がっていた。
木が一本も生えていない低地が見渡す限り広がっていた。
まるで絵の中に入り込んだようだ。
僕は確信した。
ここは僕たちの世界一周旅行にとって。
そして僕たちの人生にとって。
とても大切な場所だと。