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玉ねぎで号泣した男

先日、大学の春休みだったので実家に帰省した。
ある平日の夕方17時半くらいに父親からLINE。

「カレー作るからミンチ肉あるか確認して」

仕事から帰った後、カレーを作るという。久しぶりに父親が作るカレーを食べられるのか……。そう思い楽しみになった。ミンチ肉はなかったのでないことを伝えると買い物をしてから帰ると返事が返ってきた。

「米炊いとく!」

と最後にLINEを返信し、父親の帰りを待った。

19時から始まったのは父親と2人で行うカレー作り。まさか自分も手伝うことになるなんて思いもしなかったのに、手伝うように言われた以上、そして実家に帰省していて時間を持て余している以上、何かしらやらなければならない空気になった。

僕の担当は野菜を切って炒めること。父親特製のカレーなのでこだわりがある。玉ねぎはみじん切り、にんじんとじゃがいもは乱切り、そして炒めたミンチ肉を入れる。水とルウを入れる時もタイミングが重要だという。

そこで事件が起こった。僕は玉ねぎとのバトルで負けてしまったのだ。なんてついてない男なんだろう。玉ねぎをみじん切りしていると目に違和感を感じ始めた。そこから間もなくして、目が痛くなり、沁みてきて、涙が出てきた。そのまま大量の涙と痛みが襲った。

玉ねぎには硫化アリルという物質が含まれている。こいつが涙の正体だ。玉ねぎの細胞がみじん切りによって壊され、空気中に硫化アリルが分散して目や鼻に入り、涙や鼻水を出させる。

ところで、玉ねぎとのバトルに勝つ方法が世の中には存在する。冷蔵庫で冷やして保存する、水につけながら切る、電子レンジで加熱する、よく切れる包丁を使用する、換気扇の下で調理する、口を開いたままで切る、など様々だ。冷蔵庫から出したはずなのに、どうしたのだろう。やっぱり僕が単純に負けたのだろうか。でもまあ思い出になったし、久しぶりに号泣できて良かったと思うことにしよう。

最終的に母親も加わってカレー作りは順調に進んだ。完成後、炊きあがったご飯と合わせて、皿に盛りつけ、ダイニングテーブルへと運んだ。

味はやはり父親特製のカレー。流石の出来栄えだった。本当に叫ぶくらいおいしかった。僕自身も料理を手伝ったことでよりおいしく感じられたのかもしれない。

父親と料理をするのは久しぶりだったけれどとても楽しかった。また実家に帰省した時は一緒に作りたい。


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