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愛のありか│ルーブル美術館展

Jul.2023

 今年の夏は、随分と酷暑だった。

 風は すこしずつ 秋めいているように思えるけれど、
 夏の終わりは、まだ見えない。


 四季のなかで、「終わる」と 表現される 季節は
  " 夏 " だけなのだと、誰かが 言っていた。

  もっとも 生命力に 溢れる季節で ありながら 、
  どこかに ずっと、死の影を 孕んでいる 。


忘れていたものを 思い出し… そしてまた、別れる季節。



祖母の一周忌を終えて、京都に立ち寄った。

思い返せば 京都は、一番 旅をしてきた場所なのかもしれない。日本舞踊をしていた祖母に連れられて、昔から何度もやってきた。

誰よりも 格好いい 祖母の隣で、普段は着ない… 青く
美しい着物を纏って歩くと、背筋が伸びる思いだった。


 はじめて 一人旅に やってきたのも  京都だった。

早朝の 喫茶店で モーニングをして、静かな 朝の神社を歩く。バーナード・リーチ と ルーシー・リーの器が、美しい しつらえのギャラリーに 飾られていた。


『瑠璃の浄土』を見たあとで、偶然  " 浄土 " の 名前をつけられた お寺に出会った。夏の終わりを告げる木漏れ日の落ちる、美しい寺院だった。


思えば この頃から、まるで 初めから そうだったかのような、" 美しい偶然 " に 導かれるように… 様々なものたちと、出会ってきたように思う。


『 瑠璃の浄土 』 ── 

 杉本博司による その展覧会は、生まれ変わった
 京セラ美術館の、こけら落としの 展覧会だった。

『瑠璃の浄土』 京セラ美術館


  浄土 。その 希求の念を  ── 
『 時間 』について、考える 展覧会だった。



 

 人間は、いつから  " 人間 " に なったのだろう 。
  浄土とは 、言うまでもなく「 死後の世界 」だ 。

  人間は それを  ──
  自らが、" いつか死ぬ "  ことを 知っていた。





  いつか 死ぬこと 。
  生命が 有限であり、愛する者との 別れが来ること。


 そうして「 時間の意識 」を 獲得したとき 、
 はじめて 人間は、" 人間 "  に なったのだ 。


  では  人間にとって、『 愛 』とは  何だろうか 。


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