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古本屋戦争


20××年に起こった古本屋戦争は多くの示唆を含んでいた。

一方のサイドは古本屋賛成派だ。
その多くはお金のない学生などによって構成されている。
「要らなくなった本を売り買いして何が悪いんだ!」

もう一方のサイドは一部の作家だ。
「古本が売り買いされても、私らにはちっとも印税が入ってこないじゃないか。私らは面白い本を君たちに提供した。君たちは対価として私らにお金を払うべきじゃないか?古本屋にではなくて。それが作者への敬意じゃないのか?」

古本屋賛成派はたじたじになってしまった。
作家たちに〈本はもう出版しないぞストライキ〉を起こされたら困る。

ここで、ある集団が古本屋賛成派に加わった。
「敬意って言うけどさ、資源の再利用をしないで、バシバシ古い本を燃やしてバシバシ新しい本刷って、それのどこに環境への敬意があるんだ?」

これによって、古本屋賛成派と古本屋反対派はそれぞれ、「多数の社会的弱者と極少数の枠組みを外そうとする者」と「少数の社会的強者」になった。

枠組みの中のヒエラルキー対立に、枠組みを壊そうとする者が加わった。

結果として、古本屋反対派が勝った。
古本屋は地上から絶滅した。
その主な理由は、「枠組みを外そうとする者たち」が急進派となって、道を誤ってしまったからだった。
そして、「枠組みを外そうとする者たち」は危険視されることになった。

ところで僕は思うんだけど、もうちょっと穏便に枠組みの形をちょこっと変えるってことはできなかったのだろうか。

社会的弱者の数よりも、社会的強者の数の方が少なくて、さらにその数よりも枠組みを外そうとする者の数の方が少なかった。

でも、心の枠組みに着目する者はもっともっと少なかった。

まあ、この古本屋戦争なんてのは僕の妄想の中で起こったことなんだけどね。

ちなみに古本屋戦争の次は電子書籍戦争が起こった。



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